表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/29

番外 ブリジットとディミトリ

 卒業したので、皆さんの結婚を待ってから、式をあげさせられることになった私と殿下ですが、ものすごい試練が式で待っているのです。

 まあ、ドレスだの進行だのは大丈夫なのですが、問題は、そう、勘付いていらっしゃる方は勘付いているでしょうが、そう!誓いのキスです!

 真正のヘタレたる殿下は、キスの一つで顔を真っ赤にさせ脂汗を掻き、ぶっ倒れるお方。確実に誓いのキスでぶっ倒れてしまうことはわかりきっている事実。殿下もそれを懸念して「婚前にキスをする気はないが、民衆の前でぶっ倒れるのは嫌だからフリだけでも練習しよう!!!」と頑張っておられるのですが、この通り、フリだけでも頭に血が上り、クラクラッとされるのです。

 今も練習するぞ!と意気込んで、結局、ソファーに横になっていらっしゃいます。大丈夫なのでしょうか、この人は……。なんだか心配です。

 ううむ……、ここは一つ、誓いのキスをやめるというのも手ですね。

 ここはクロードに相談してみましょう。

 生徒会室付きの執事であったクロードを引き抜いて、初めての相談がこれ。少し情けないです。

 ソファーで横になっている殿下に「クロードのところに相談に行ってきますね」と耳打ちすると、殿下は「うぐぅ、情けない……。俺も行きたいが、立つと、鼻血が……。己の軟弱さが恨めしい!」と唸りました。

 かわいそうに、やはりヘタレは治らないものなのでしょうか……。

 私は殿下にそっとタオルを渡し、クロードの部屋に行きました。

 クロードは陛下からの信頼も厚く。子供もいない、家族もいないということで城で生活をしてもらっているのです。時折やってくる執事たちの指導や相談もしているそうです。

 コンコン、とノックをすれば、優しい声で「どうぞ」と返ってきました。


「おや、ブリジット殿、どうされましたかな?」

「クロード、相談があるのです」

「おやおや、大方察しは付きますが。誓いのキスについてですか?」

「そうなのです。殿下のあのヘタレっぷりでは、多分、無理です。顔を近づけるだけでも倒れるのに、公衆の面前でできるわけがありません。殿下も言わないだけで、正直、代わりになる案がないかとおもってらっしゃるのです。なにかいい案はありませんか?」

「ふうむ、そうですなあ……。やはり民からすれば、誓いのキスは最大の見せ場……、もとい見たい場面でしょうからなあ。代案とは中々難しい。ううん、ここは陛下と女王陛下にも相談された方がよろしいでしょうな」

「やはり、そうですか。殿下のヘタレ具合は、嫌という程、陛下も女王陛下もわかってらっしゃいますが、相談するのは、少し、勇気が……」

「ほほほ、ならば一緒に行きましょうか」

「まあ、本当!では一緒に!」


 私とクロードは、サクサク陛下達のいらっしゃる部屋へと行くことにしました。やはりこういうことは、一番上に聞き、相談してみるのが一番ですよね!ええ!

 若干緊張しながらも、陛下達の待っておられる部屋に通された私とクロードは、誓いのキスの代案相談をし始めました。

 私はコンコンと殿下のヘタレ具合と倒れる確率を説き、時折、情けない!と嘆く女王陛下に、ああだこうだと殿下を擁護しつつも、なにか案はないかと聞きました。

 うーんと静かに考えていた陛下が、あ!思いついたぞ!と声をあげました。


「私たちの代はとても華やかにしたのだが、今回は厳格な雰囲気でいくのはどうだろうか?お互いに同じ杯に入った酒を酌み交わすというのは」

「なるほど、それならば中々に良いのではないのでしょうか。丁度、王家に代々伝わる杯があるのですし、それを使えばさらに……」

「あら、あの杯を?それはいい考えね。ただあるだけでどう使えばいいのかわからなかったけれど、そうやって使えるのだったらいいことだわ。置物にするよりいいでしょう」

「そうだな。それではそうしたらどうだろうか?後ろに聖歌隊を置いて、荘厳な音楽の中、厳かに式が行われる……。これは、王族としての威光を最大に示せるところではないだろうか?私たちがやった式もなんだかんだで簡略化はされているが、それに近い形で民衆の中でされているのだから差別化をするべきだしな」

「そうですな。最近の式の華やかさを見るとそう思います。今回、厳かにやってもいずれ同じような形の式になると思われますが、王家の杯というものがあり、一番豪華な教会でやるのですから確実に差別化できますね」

「それじゃあ、そういった方向でプランを変えましょう。ドレスも少し変えましょうか。今時のではなく、少し古典的な方に……。それでもいいかしら、ブリジットさん?」

「ええ、もちろんですわ。女王陛下の選ばれるドレスは、毎回、とても素敵ですもの!とても楽しみです」

「そう、よかった!それじゃあ、一緒に選びましょうね!」

「はい!」


 陛下と女王陛下、それからクロードのおかげで素晴らしい代案ができました。

 これで殿下が民衆の前でぶっ倒れずに済みます!ラッキー!

 私は、陛下達とクロードにお礼を言った後、すぐに殿下の元へ行きました。今だにソファーに倒れている殿下は「ブリジットよ……、俺は今、猛烈に自分の情けなさで泣きそうになっていたところなのだ……」と弱々しくぶちぶちとなにかを言っています。

 そんな殿下に近づいて「殿下、誓いのキスはなくなりました」というと、バッと飛び起きて「どういうことだ!?」とおっしゃいました。


「王家の杯に注がれたお酒を酌み交わすことになったのです」

「……そ、そうか、そうなのか。うむ、了解した。先に俺が飲んでからお前が飲むんだな?」

「ええ、そうですね」

「それは面白いな。いいだろう。それでは、キスというものは結婚後のめくるめくラブ……いや、とにかく、後に取っておこう。俺は少し疲れた、部屋で寝る。さらばだ、ブリジットよ!!できれば部屋は覗かずにそっとしておいて欲しい!!ではな!!!!」

「はい……」


 殿下、そんなに疲れたのですね、おかわいそうに……。

 私はこの後、ドレスになんだのと、いろいろあるのですが。まあ、いいでしょう。

 結婚式当日が楽しみです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ