表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたを忘れる方法を、私は知らない  作者: 長岡更紗
光の剣と神の盾〜ストレイア王国軍編〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/391

116.あなたたちだからこそ、ここまで

 今からする話は、もう十年も前の話になるわ。早いわねぇ、月日が過ぎるのは。


 トラヴァスは当時十二歳かしら? グレイは十歳の頃ね。

 二人とも、その頃王家になにがあったか知っている?


 そう、第一王女ラファエラ様の病死と、その翌年のマーディア様の心身虚弱による病死よ。

 当時の(・・・)公式発表はそうなっているわ。


 ええ、これは真実ではないの。

 ラファエラ様は……ご公務の帰りに襲撃に遭ったのよ。

 マーディア王妃と、当時王子だったシウリス様も一緒に現場にいたわ。ラファエラ様は、シウリス様を庇って亡くなられたの。

 情報を手に入れたジャンが向かって襲撃者を追い払ってくれたんだけど、残念ながらラファエラ様は間に合わずに殺されてしまった後だった。

 ええ、ラファエラ様は病死ではないのよ。これが真実なの。


 ジャンはマーディア様とシウリス様を保護した後、すぐに現場に戻ってくれたわ。けど倒したはずの襲撃者の遺体は、すでに消えていた。証拠を隠滅されたのね。

 襲撃者の出立ちは、ストレイアともフィデルともつかぬ服装だったようよ。

 だから主犯がどこの誰かは、結局はわからなかった。


 私は……そうね。断定はできないし、筆頭大将という立場の私が明言するわけにいかないけど。

 これは独り言として聞いてちょうだい。


 ラウ派のルトガー王子かフリッツ王子を王に据えたい者が、ストレイアから戦争を仕掛けさせたいフィデル国の過激派と手を組んで起こした襲撃だった……


 とも考えられたわね。真実は定かではないわ。あくまで私の考えよ。


 ええ、グレイ、その通りよ。

 ラファエラ様は、ルトガー様が毒を使った殺人であったと、(のち)に報じられている。その罪でルトガー様はシウリス様に処刑されたと。

 私がさっき言った、ラファエラ様が襲撃で命を落としているのと矛盾するわよね。

 困ったわ、これも機密なのよ。

 トラヴァスはその場にいたからわかっているけれど。

 グレイも真実は語らない方が身のためよ。わかるわね?


 ……グレイ。

 ヒルデ様の死は、ルナリア様殺害関与による処刑、報道の通りよ。

 変更したのは、ルトガー様の処刑に関してのみ。いいわね?


 まだ疑うの?

 …………わかったわ。

 あなたがどうしてこの件に関して必死になるのかはわからないけれど、そこまで言うならなにか理由があるんでしょう。

 けれどヒルデ様のことに関しては、後でトラヴァスに聞きなさい。許可するわ。

 ただし、最重要機密であることを忘れないでちょうだい。


 話が進まないから、十年前のラファエラ様が襲撃にあった事件に戻すわよ。

 この時、護衛の騎士と御者も襲撃にあって殺されているわ。

 亡くなった護衛騎士の家族には、極秘任務による名誉ある死だと告げ、十分な特別弔慰金を渡している。

 ええ、まぁ言ってしまえば、余計な詮索をさせないための口止め料のようなものよね。

 当然、こういうこともするわよ。言ったでしょう、この仕事は清廉潔白ではいられないって。


 確かに詮索はされなかったわ。

 けれど、護衛騎士が亡くなる理由なんて、大体決まっているのよね。

 そう、魔物にやられるか、敵兵にやられるか、謀反を起こした自国民にやられるか。

 他にもあるけど、大きくはこの三つよ。

 そしてある護衛騎士の家族は、フィデル国の兵に殺されたと思い込んでしまっていたの。

 エスタル侯爵家の長男、カリム様よ。

 実際、相手はフィデル国の兵だったかもしれないわ。もちろん、ラウ派の者だった可能性もあるけれど、私たちでもわからないものが一般人にわかるわけないもの。


 カリム様は、護衛騎士をしていた弟の死をフィデル国のせいにしてしまった。弔慰金と、元々持っていた資金を使って、非合法な集団へ依頼したのよ。フィデル国に復讐をしてくれってね……。

 それが六年前の話。ラファエラ様襲撃事件から、四年が経っているわね。じっくり計画を練っていたんでしょう。


 依頼された組織は、一番支配しやすい、過疎化していたグリレル村を狙ったの。組織はカリム様からもらったお金だけでは満足せず、さらに大金を手に入れようと、女をサエスエル国へ奴隷として売るつもりだった。

 だけど結局、組織がそれ以上のお金を手に入れることはなかったわ。村の男たちが殺されて絶望した女たちは、屈辱しかない未来を生きるより自決することにしたのね。……とても、つらい決断だったと思うわ。

 この情報? もちろんジャンが持ち帰ってきたのよ。私たちは村を襲った組織を調べ、一網打尽にした。

 もちろん、無法者を処罰したことをフィデル国側に伝えているわ。

 伝えた方法なんて簡単よ。小競り合いで捕らえていたフィデル国の捕虜を使っただけ。

 彼らを数十名解放することで、こちらも誠意を見せた形ね。だから戦争にならずに済んでいるわ。個人的な恨みは消えないでしょうけれどね。

 カリム様のなされたことは、不問となっているわ。エスタル侯爵家が力を持っていたこともあるし……護衛騎士を亡くした他の家族の賛同を得られていたこともあった。処分を下せば、他の家族が黙ってはいないでしょう。

 だから厳重注意だけで、実質はお咎はなしの状態で終わっているわ。


 グリレル村の襲撃の裏には、こういう事情があったのよ。

 だからあの襲撃がストレイア王国の野党の仕業であるかと問われれば、残念ながらイエスとしか言いようがないわ。

 もちろん、ストレイア王国内では詳しい話を報じてはいない。

 記事になったのは、騎士たちが犯罪組織を潰したという英雄譚だけよ。


 ショックを受けちゃったかしら?

 ……そう、さすがね。

 あなたたちもこれから色々経験していくわ。意に染まぬこともしなければならないでしょう。

 清廉潔白とは程遠いわ。時には己の正義を曲げなければならないことも出てくる。

 それでも、国のために、民のために最善を尽くすのが騎士よ。

 そしてそれは……国王陛下も同じなの。もちろん、私たちと国王という立場では役目が違うから、対立することもあるけれどね。


 あなたたちだからこそ、ここまで話したのよ。

 その意味を、よーっく考えてちょうだい。

 わかったかしら?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。

サビーナ

▼ 代表作 ▼


異世界恋愛 日間3位作品


若破棄
イラスト/志茂塚 ゆりさん

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
この国の王が結婚した、その時には……
侯爵令嬢のユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
政略ではあったが、二人はお互いを愛しみあって成長する。
しかし、ユリアーナの父親が謎の死を遂げ、横領の罪を着せられてしまった。
犯罪者の娘にされたユリアーナ。
王族に犯罪者の身内を迎え入れるわけにはいかず、ディートフリートは婚約破棄せねばならなくなったのだった。

王都を追放されたユリアーナは、『待っていてほしい』というディートフリートの言葉を胸に、国境沿いで働き続けるのだった。

キーワード: 身分差 婚約破棄 ラブラブ 全方位ハッピーエンド 純愛 一途 切ない 王子 長岡4月放出検索タグ ワケアリ不惑女の新恋 長岡更紗おすすめ作品


日間総合短編1位作品
▼ざまぁされた王子は反省します!▼

ポンコツ王子
イラスト/遥彼方さん
ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
真実の愛だなんて、よく軽々しく言えたもんだ
エレシアに「真実の愛を見つけた」と、婚約破棄を言い渡した第一王子のクラッティ。
しかし父王の怒りを買ったクラッティは、紛争の前線へと平騎士として送り出され、愛したはずの女性にも逃げられてしまう。
戦場で元婚約者のエレシアに似た女性と知り合い、今までの自分の行いを後悔していくクラッティだが……
果たして彼は、本当の真実の愛を見つけることができるのか。
キーワード: R15 王子 聖女 騎士 ざまぁ/ざまあ 愛/友情/成長 婚約破棄 男主人公 真実の愛 ざまぁされた側 シリアス/反省 笑いあり涙あり ポンコツ王子 長岡お気に入り作品
この作品を読む


▼運命に抗え!▼

巻き戻り聖女
イラスト/堺むてっぽうさん
ロゴ/貴様 二太郎さん
巻き戻り聖女 〜命を削るタイムリープは誰がため〜
私だけ生き残っても、あなたたちがいないのならば……!
聖女ルナリーが結界を張る旅から戻ると、王都は魔女の瘴気が蔓延していた。

国を魔女から取り戻そうと奮闘するも、その途中で護衛騎士の二人が死んでしまう。
ルナリーは聖女の力を使って命を削り、時間を巻き戻すのだ。
二人の護衛騎士の命を助けるために、何度も、何度も。

「もう、時間を巻き戻さないでください」
「俺たちが死ぬたび、ルナリーの寿命が減っちまう……!」

気持ちを言葉をありがたく思いつつも、ルナリーは大切な二人のために時間を巻き戻し続け、どんどん命は削られていく。
その中でルナリーは、一人の騎士への恋心に気がついて──

最後に訪れるのは最高の幸せか、それとも……?!
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
この作品を読む


▼行方知れずになりたい王子との、イチャラブ物語!▼

行方知れず王子
イラスト/雨音AKIRAさん
行方知れずを望んだ王子とその結末
なぜキスをするのですか!
双子が不吉だと言われる国で、王家に双子が生まれた。 兄であるイライジャは〝光の子〟として不自由なく暮らし、弟であるジョージは〝闇の子〟として荒地で暮らしていた。
弟をどうにか助けたいと思ったイライジャ。

「俺は行方不明になろうと思う!」
「イライジャ様ッ?!!」

側仕えのクラリスを巻き込んで、王都から姿を消してしまったのだった!
キーワード: R15 身分差 双子 吉凶 因習 王子 駆け落ち(偽装) ハッピーエンド 両片思い じれじれ いちゃいちゃ ラブラブ いちゃらぶ
この作品を読む


異世界恋愛 日間4位作品
▼頑張る人にはご褒美があるものです▼

第五王子
イラスト/こたかんさん
婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。
うちは貧乏領地ですが、本気ですか?
私の婚約者で第五王子のブライアン様が、別の女と子どもをなしていたですって?
そんな方はこちらから願い下げです!
でも、やっぱり幼い頃からずっと結婚すると思っていた人に裏切られたのは、ショックだわ……。
急いで帰ろうとしていたら、馬車が壊れて踏んだり蹴ったり。
そんなとき、通りがかった騎士様が優しく助けてくださったの。なのに私ったらろくにお礼も言えず、お名前も聞けなかった。いつかお会いできればいいのだけれど。

婚約を破棄した私には、誰からも縁談が来なくなってしまったけれど、それも仕方ないわね。
それなのに、副騎士団長であるベネディクトさんからの縁談が舞い込んできたの。
王命でいやいやお見合いされているのかと思っていたら、ベネディクトさんたっての願いだったって、それ本当ですか?
どうして私のところに? うちは驚くほどの貧乏領地ですよ!

これは、そんな私がベネディクトさんに溺愛されて、幸せになるまでのお話。
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
この作品を読む


▼決して貴方を見捨てない!! ▼

たとえ
イラスト/遥彼方さん
たとえ貴方が地に落ちようと
大事な人との、約束だから……!
貴族の屋敷で働くサビーナは、兄の無茶振りによって人生が変わっていく。
当主の息子セヴェリは、誰にでも分け隔てなく優しいサビーナの主人であると同時に、どこか屈折した闇を抱えている男だった。
そんなセヴェリを放っておけないサビーナは、誠心誠意、彼に尽くす事を誓う。

志を同じくする者との、甘く切ない恋心を抱えて。

そしてサビーナは、全てを切り捨ててセヴェリを救うのだ。
己の使命のために。
あの人との約束を違えぬために。

「たとえ貴方が地に落ちようと、私は決して貴方を見捨てたりはいたしません!!」

誰より孤独で悲しい男を。
誰より自由で、幸せにするために。

サビーナは、自己犠牲愛を……彼に捧げる。
キーワード: R15 身分差 NTR要素あり 微エロ表現あり 貴族 騎士 切ない 甘酸っぱい 逃避行 すれ違い 長岡お気に入り作品
この作品を読む


▼恋する気持ちは、戦時中であろうとも▼

失い嫌われ
バナー/秋の桜子さん




新着順 人気小説

おすすめ お気に入り 



また来てね
サビーナセヴェリ
↑二人をタッチすると?!↑
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ