本編-0058 『母船』への試行錯誤①
一口に『空飛ぶエイリアン母船』を作るといっても、一筋縄のものではない。
前世の職業が技術者でもなく、まして乗り物やら技術の歴史に詳しかったというわけでもないこの俺が、一から空飛ぶ乗り物を作ろうというのである。冷静に考えれば、正気の沙汰ではないだろうな。
だが、【因子】を駆使することによって、比較的いろいろなことをエイリアン達を通して行えるようになった俺ならば、創意工夫次第でなんとかなるんじゃないか、と閃いた次第。
それじゃあ材料達を挙げながら、プロジェクトの基本構想……要は『母船』の設計について、パーツごとにコメントさせてもらおうかね。
◆船体部
⇒ 【肉塊花】+【触肢花】
『母船』を構成する最も基本的なパーツとして【肉塊花】を選んだ。
肉塊花は、奴隷蟲を【硬殻】因子で胞化させた硬くて弾力のある歪な謎肉――こいつの存在が『母船』構想のキッカケの一つと言っても過言ではない。
対リッケル戦では"根塊"の侵食による【領域戦】を食い止めて遅滞させる程度の頑丈さと、エイリアン的再生力を備えており、こいつをレゴだかレンガだかのように組み上げて『建造物』を作れるんじゃないか――という発想がまずあった。
……まぁ、それだけだったならば、他にいくらでも役割があって過労状態の奴隷蟲を1対1消費してまでのものかってところだが。
そこに、ヒュドラをスルーするために自身の樹木眷属達を『流刑船』に組み上げる、とかいうリッケルのアイディアを拝借すると――話が変わってくる。
この肉塊花、性能評価をすればするほど、その便利さが判明してくるんだよ。
まず、単純にサイズがでかい(4メートル弱)割に弾力性と頑丈さに優れる。
そしてサイズの割に、消費する魔素と命素のコスパに優れること。
……それから、他のエイリアンを内部に取り込んだ挙句、酸素や水分や――魔素・命素に至るまで"補給"する特性まで備えているのである。
ただの肉されど肉ではあるが、侮るなかれ、要するに此奴もエイリアンとして"生きている"。すなわち魔素・命素を体内に取り込むことができるわけで――見ての通りアメーバだか卵黄だかのような巨大な単細胞的肉塊であることから、取り込んだ魔素・命素が肉塊全体に浸透し循環する性質があり、それを内部に取り込んだ他のエイリアンにも供給するのである。
迷宮の修復がてら、本飛行船プロジェクトのために、『性能評価室』の隣に巨大な空洞をくり抜いた。
そこで、現在等間隔に並べてある十数の『肉塊花』達の一つに俺は歩み寄る。
こいつは【肉塊花】に【変換花】を植え付けることに成功したサンプルだ。
さらに隣には、【変換花】と【結晶花】を植えたサンプルがあり、それ以外にも【触肢花】なり【酩酊花】なり【観視花】なり、様々なファンガル種を植え込んだ肉塊花のサンプルが並べられている。
……まぁ、簡単に言えば現在、いろいろと試験+データ収集中なのである。
なんのためにって? そりゃ、より"最適"な効率で『母船』を建造するためだよ。
なぜそんなせせこましいことを、だって? はっは、馬鹿にできないぞ?
そうだな、例えば『母船』作るのに――どれだけの"数"の『建材』が必要になると思うだろうか?
ざっくり計算しよう。
肉塊花が1つあたり4メートル四方のブロックと考えよう。
仮に100メートル四方の『母船』(超高層ビル十数本分)を作ろうと思ったら――内部までみっちり詰めるわけでないのだから、60%程度は様々な用途のためにくり抜くと考えて、それでも、ざっと約6,000株は必要になる計算だ。
んで、肉塊花の維持コストが「魔素35、命素52」。
単純に、船体の基本建材が『肉塊花』だけだったとしても、1日あたり、
「魔素73,000、命素108,000」ほども必要。
……【眷属維持コスト削減】を適用して、この数字だ。
【変換花】を量産開始しており【改良型結晶畑】の拡張を進めているため、俺の迷宮経済自体も成長していってはいるんだが――それでもまだまだ贖いきれない。
現実には、50メートル四方とかもっと"コンパクト"なサイズから作り始めないといけないだろう。迷宮経済の拡大にも時間がかかるのである。
予算に糸目をつけずにジャブジャブ突っ込み、最高レベルの巨大ハコモノ……いや、巨大ナマモノを作るってわけにもいかない、というわけだ。
(まぁ、逆に言えば時間さえかければいずれは……ってわけだが)
繰り返すが、これは肉塊花だけをレンガのように積み上げただけで必要になるコストだ。現実にこれを『母船』と言えるようにするためには、特に【飛行】機能を始めとした様々な仕組みを導入しなければならない。
そういう"拡張性"を考えた時、肉塊花だけでは、基本の『建材』としてはやや不安があるのである。
端的に言えば――数十個単位で積み重ねるならまだしも、それが数百数千になってくると、重量オーバーになってしまい、裂けてしまうのである。生物が自重で潰れないようある一定の大きさまでは進化しないのと同じ原理だ。
これでは、さらに肉塊花を土台として、その上に例えば【結晶花】みたいな"追加機能"を埋め込むことだって難しくなってしまうだろう。
そこで――俺が現在、最も期待しているのが【触肢花】との"組み合わせ"である。
そちらのサンプルへと目を移し、活きの良さを確認する。
肉塊花1株と触肢花6本を組み合わせたファンガル塊だ。
まだ、肉塊花と触肢花の最適"比率"の調査中だが――名付けて【触肉ブロック】。
まるで、抉りたての巨人の心臓の如く、どくんどくんと鼓動しビタンビタンと触手を蠢かせながら、精気旺盛に魔素と命素を吸って吐いてしていた。
これが、肉塊花の『建材』としての耐久性を飛躍的に増す鍵である。
すなわち「鉄筋コンクリート」や「土中の木の根」や「ガラス窓の中の鉄線」と同種の『補強』効果を期待しているのである。【触肢花】は土木工事にも耐えうるほどの頑丈さと"踏ん張り"を誇っており、これを【肉塊花】に仕込むことで――【触肉ブロック】同士を接合した時に、肉塊の内部では触肢花同士も木の根のようにガッチリと絡み合うことで、押し潰す力だけでなく引き裂かれる力に対する耐性も飛躍的に高めることができる。
さらに、それだけでなく他のファンガル種を「装着」する際には、肉塊花を土台とするだけでなく、触肢花の触手部分を直接絡みつかせて"支え"とすることで、がっしりと繋ぎとめる役割をも果たすことができる、と。
これにより、何百何千と積み重ねていく過程で生まれる"重量"にすら、十二分に耐えることができるようになる。
そうして最適な"比率"が見つかったら――その次は「耐久性」との両立テストをする必要があるだろうな。"名付き"達を含めて、今の俺に可能なあらゆる攻撃手段に晒していくってわけだ。
ふふふ……楽しみだね。
『ウーヌス、嫌に静かだがちゃんと聞いていたか? 俺が【人界】へ行ってる間、この辺りの実験やデータ収集はお前達にやってもらわなければならないんだから、な?』
『きゅ……きゅ……頭がパンクするきゅぴぃ』
『あはは! ウーヌスったら知恵熱だしてら、全身真っ赤っ赤!』
『モノ、笑ってないで助けてあげなよう?』
――大丈夫そうだな。
6体の結束力は俺の想像以上であるか。
ふと思ったが、ウーヌスを中心とした"初期副脳蟲"6体と、彼らの後に生み出されたドゥオやトレースは……なんとなくだが、かなり明確に「違い」を感じるのだ。
6体が個性が強すぎるのに対して。
ウーヌスの補佐として生み出されたドゥオとトレースは、超素直というか、自己主張をほとんどしない。
個性が"弱い"というべきか――。
これは、おそらくだが、俺から直接知識を吸い取ったウーヌスと、そのウーヌスを補佐する形でほぼ同時期に生み出された6体が「基礎」となってエイリアンネットワークが形成された結果、こいつらだけ別格とも言えるほどに俺との繋がりが強く形成されたんだろう。そして、それが個性の強さ(良くも悪くも)になっているのかもしれない。
……だが、そうすると――本来の副脳蟲は、ひょっとしたらドゥオやトレースよりもさらに"無個性"なのかもしれないな。
ふうむ。
まぁ、これについてはウーヌス達自身の問題みたいなところはある。部分社会論に基づいて、ぷるきゅぴ6体に任せておく他は無いかな、俺は俺で「エイリアンネットワーク」さえきちんと運営してくれていれば文句は無いわけで。
話を戻せば、『母船』船体の基本建材は、以上の理由から【触肉ブロック】をベースにする方向で検討しているってわけだ。
◆動力炉
⇒ 【陽魔変換花】【陽命変換花】【魔素結晶花】【命素結晶花】
さて、次だ。
『母船』であるからには、ある程度俺の迷宮から独立し、自律して働く存在であることが必要である。
『母船』なんだから、当然"乗組員"となるエイリアン達も搭載するわけで――彼らに魔素と命素を補給する必要だってある。
そこで、『母船』の内部には最果て島の迷宮本体とは独立した、備え付けの【結晶畑】を構築して『動力炉』とするのが今の構想だ――【領域定義】は迷宮領主たる俺の意志によって"再定義"だって可能。そして、定義対象は何も地下の岩盤や地上の大地だけに限られない。
これは【触肉ブロック】を始めとした、ファンガル種だって"領域定義"可能だからこその荒業……まぁ、それができるだけの領域的な"余裕"も置いておかねば、大本の「最果て島」での領域が縮小して迷宮経済に悪影響が出てしまうがな。
だが、『母船』なのだ。ロマンと書いて『母船』と読むのだ。
「最果て島」から長期間離れて活動することも多くなる可能性を思えば、最初から【変換花】によって生み出される魔素と命素を頼った"独自経済"とするためには必要な調整である――んで、これだよ。これが、まさに重量問題とかにも繋がるんだよ。
さっきの例で行けば「命素7万、魔素10万」とかいう肉塊花だけでも必要なコストを賄おうと思ったら……【結晶花】が魔命合わせて約1,300輪、【変換花】も魔命合わせて約600~700輪は必要になってしまう。
しかもこれは【触肉ブロック】ではなくただの【肉塊花】だった場合の話である。
笑えるわ。
重量だけじゃない。それで、どれだけの容積が食われると思う?
仮に魔素・命素の生産が十分であっても、そういう問題もあるのである。
だから可能な限り『基本建材』の維持コストは、落としていく必要があるんだよ。
――まぁ、一応【触肉ブロック】自体の維持コストは、単純に「肉塊花分+触肢花×6本分」という単純な足し算にはなっていない。ファンガル種として互いの生理機能を"効率化"させている関係か、ブロック単位での維持コストはかなり抑えられてはいるんだがな。
あるいは……耐久度を犠牲にすれば、肉塊花をもっと薄く伸ばして必要なブロック数を抑えることも可能だが――その辺りの許容範囲を見極めるためにも「耐久テスト」が重要なのである。
『きゅ……良いこと思いついたよ! 硬ければ良いんだよねきゅぴ?』
『嫌な予感がするが、まぁ言ってみろ』
『きゅきゅ! ガンマさんの鎧を剥がして張り付けちゃえきゅぴ!』
『その手があったか!』
『あ……あれ? 創造主様が怒らないきゅぴ!? 大変だ、槍が空から振ってくるきゅぴぃぃい!』
せっかく良い"気付き"だというのに、また余計な一言を……こいつら。
ビキィと来たので絶叫マシーンの記憶を呼び出してウーヌス達に流しておく。
阿鼻叫喚のぷるきゅぴ大合唱が繰り広げられた気がするが(約1匹「あはは!」と笑っていたが)、ともあれ今のアイディアは実に良い。
……ガンマよ、なに、今のうちだけだ。いつかお前も更なる上位世代に進化したら"この役目"からは、お役御免になるだろう。そうでなくとも、ちゃんと剥ぎ取り採集用の城壁獣を増やしたらちゃんと迷宮防衛に戻すから――少しだけ、な?
『あ、ガンマさんが逃げた!』
『きゅぴー! 追え、デルタさん! 同じ鎌で召し捕ったよしみさんで捕まえてあげるんだよ!』
『チーフ、それを言うなら同じ釜……じゅるり』
収拾がつかなくなってきたが、一応ガンマという尊い犠牲のお陰で副脳蟲達が"実験"とデータ収集に前向きになったようでなにより、ということにしておこう……。
――まぁ、耐久性の問題を解決するだけでもどうにもならないんだがな。
【結晶花】と【変換花】自体が、かなりデリケートなファンガル種である。魔素・命素のバランスや重量・容積のバランスに加えて、他にも調整しなければならないことは山とあるんだが、なぁに、ブレイン達に丸投げしてしまえば良いさ。
ところで。
『油断するな』と俺の【狂科学者】的直感がさっきから囁いている。
リッケル子爵が思いついた程度の"アイディア"であることを、忘れてはならない。
――似たような発想の「迷宮」を持つ迷宮領主が存在しない、と考えてはいけないのだろうなぁ。
◆揚力発生機構&推力発生機構
⇒ 【鶴翼花】【風属性砲撃花】
ただの「船」を作りたいわけじゃあない。
ロマン的な意味で『飛空母船』を作りたい――ッ! というのも、まぁ、そうではあるのだが、ふと思ったんだよ。
別に、ヒュドラと正面から殺し合わなくても良いんじゃね? ってな。
……ヤツにまさかの飛行能力でも無い限りは、首をどれだけ伸ばし竜の息吹をどれだけ吐き出しても、届かない高度まで浮かせた『飛空母船』でスルーして【魔界】を探索できるならば、戦わずして勝つという最善となるのだから。
ということで、実験中である。
とりあえず活用するのが【鶴翼花】であり、こいつを【風属性砲撃花】に魔石を豪快に消費させて暴風を生み出させ、その風の力を"翼"で受け止め、ほとんど力技で飛ばすという寸法。
いやぁ、これは正直、重量バランスとの兼ね合いがかなり難しい。
計算上は【触肉ブロック】が数十個程度ならば同数かそれ以上の【鶴翼花】といくらかの【風属性砲撃花】でなんとか飛ばせるが――数千ともなってくると、しかも大量の"乗組員"を抱えることを想定すると、ほとんど無茶に近いわ、これ。
うううむ。
炎舞ホタルの「可燃性の酸と火の粉をばら撒いて小爆発を生み出しまくる」とかいう無茶苦茶な飛行法を参考にしようとも一瞬思ったが、エイリアン達が基本的には【火】に弱いことを考えれば――安易に【火】に頼った飛行法は、事故を起こした時のリスクが大きすぎる。
『母船』を構成することになるであろう、数百数千ものエイリアン達が空中で一瞬にして燃え屑になってしまうなど、悪い冗談でしかない。そんなことになったら俺は「ぬ」と「ね」の区別がつかない人間の仲間入りだな、あっははは。
……せめて、もっと他の魔法適応因子が欲しいところである。
これが「魔法無き前いた異世界」だったら、確実に頓挫していただろうよ。耐久性と巨大さを限界まで諦めるかしなければ、空を飛ぶなど夢のまた夢。
――だが、ここは魔法のある世界だ。例えばだが、基本属性には存在しない複合魔法の類であるが……『空間魔法』や『重力魔法』なんてのがあるみたいだぞ? 特に後者は、名前からしても一発解決に近いように思えるわけで。
まだ、諦めるには早い。
だから【人界】での探索を待ちつつ、飛行能力については一旦保留にして、耐久テストとか"経済性"に関する実験&データ収拾を優先させていくこととしよう。
◆防衛兵装
⇒ 【属性障壁花】【触肢花】【観視花】など
例えば【鳥使い】みたいな迷宮領主がいて、そいつと敵対する時に"空軍"と戦う可能性だってある。そうでなくとも、母船であり要塞である以上は侵入を受けることだってあるだろう。
そうした事例なんかに対処するため、通常の迷宮防衛と同じような機構は必要になるってわけだ。
だが、まぁ相対的な重要度はやはり落ちると言えば落ちるだろうかな? 乗組員がいることもそうだし、重量がやっぱり厳しくなりそうでなぁ――あぁ、重量のことを気にしなくても良くなる仕組みか【因子】が手に入ったなら、ガッチガチに大鑑巨砲的にあらゆる機能を注ぎ込めるのになぁ。
……いや、欲張るのはよそうか。
◆攻撃兵装
⇒ 鋭意検討中
戦闘エイリアン達の性能が高いため、要塞としての運用は正直"空母"的なものでも良いんじゃないかと思うところではある。
それでもあえてロマンを求めて搭載するとしたら――まぁ無難に【属性砲撃花】ではあるだろう。
ただ、さすがに俺の予定する『母船』のサイズを考えると、個々の砲撃花はいささか小さすぎる。"豆鉄砲"を数だけ揃えても何の役に立つやら。
……それに、だ。【風属性砲撃花】然り、砲撃花は砲撃花で"飛行手段"に使う可能性もあるわけで――攻撃兵装にも組み込んでしまうと、下手に干渉を起こしかねないというわけである。
うん、やっぱこれは保留でいいわ。
工夫はすべきだが――所詮は個々は独立した個体である魔物を組み合わせて、疑似的な「船」にする以上のものではないのだ。こんな方法で"戦艦"じみた攻撃力を求める方が間違っているわな。
繰り返すが攻撃力という意味では真にエイリアン達が十分な戦力なのである。
では――そもそも俺が何故『母船』を作ろうとするのか、その考えを示そう。
俺自身の【迷宮】を離れ、俺や配下、眷属達を長距離輸送し、補給拠点としても運用可能な『飛空母船』を作れること、それだけでも大快挙であることには絶対的に間違いないのである。
この小さな島の扶養限界を【魔界】側で突破するために、ヒュドラにもテルミト伯にも邪魔されずに動き回るための"拠点"と考えるならば、現時点では船自体の大層な攻撃力は必要がない。
このまま最果て島で【改良型結晶畑】を拡張し続けることも考えたが――どの道"面積"という制限が近い将来のしかかってくることが前提ならば、もう最初から『母船』計画と同時に進めた方が良いだろう。
――ヒュドラが近海を押さえつけてるのだ。
少なくとも「海」には出れないし……仮にヒュドラを狩り殺せたとして、俺を監視したくてたまらないであろうテルミト伯が、その役割を引き継ぐだけであろうよ。
ならば、「空」に活路を求めるしかあるまい?
これは、先の先への投資だ。
どうせテルミト伯とは「協定」があるし、いざとなったらヒュドラを盾にする。
軍事力の急拡大は我慢し、【改良型結晶畑】で少しずつ強化される迷宮経済も、大部分は『母船』プロジェクトに注ぎ込んで中長期的な"利"を得る方へ舵を切る。
どうせ【人界】で進めようと考えている仕込みも年単位で時間がかかるものだからな、この際、テルミト伯の度肝を抜いてやるつもりである。
――それと、試してみたいこともあるのだが、これは本格的に『母船』を浮かせることができるようになってからだなぁ。
ま、とりあえず、今の【因子】でできうる限り思いつくのは、こんなところだろうかね。
プロジェクトの更なる加速のため、更なる【因子】の入手が待たれるところである。それまでは粛々と耐久テスト&経済性の検証だな、頑張れウーヌス。
『きゅぴ! 計算ドリルってわけだね、任せて!』
おう。急に不安になってきたぞ。




