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本編-0051 狂樹の置き土産

次はファンガル種だ。

【胞化】が済んで導入自体は終わっていたものの、活用の機会が無かったため、未紹介だったものも含めて確認しておこう。


<ファンガル種>


挿絵(By みてみん)


【陽魔変換花】 ◆因子:葉緑 ◆進化元:魔素結晶花

【陽命変換花】 ◆因子:葉緑 ◆進化元:命素結晶花

因子【葉緑】によって、その特性が変化した【結晶花】。

見た目は、そうだな、でっかい肉でできたレーズンパンというところだ。

ただし、レーズンの代わりに、細かなつぶつぶの結晶体がたくさんついており、それらが日差しに反応してキラキラと輝いている感じだ。


んで、だ。

聞いて驚け、こいつらの特性はなんと「太陽光発電」よろしく、【魔界】の黒き太陽の日差しに反応して、それぞれ「魔素」と「命素」を生み出すことなのである。


――これが、俺の迷宮にとってどういう意味を持つかというと。

現在の俺の迷宮経済は、最果て島の地上部と地下部をほぼ全て【領域定義】した現状、

・魔素生産6,200/1日

・命素生産7,000/1日

であった。

これが【結晶畑】を維持するための基本的なリソースになるわけだが(結晶花自身は魔素・命素によってでしか維持できない)、そこに、言わば追加の生産施設を建てることができるようになったのだ。


つまり、


<領域収入>

・魔素生産6,200/1日

・命素生産7,000/1日


に加えて、


<陽光変換>

・魔素生産◯◯◯◯/1日

・命素生産◯◯◯◯/1日


という、追加のリソース生産ラインを仕立てることができるわけである。

系統技能による強化も存在しているが、大体、【変換花】1輪あたり魔素・命素を約20ほど生産することが可能となっている。微妙にしょっぱいが――これは【変換花】自身の維持命素(魔素)を差っ引いた数値だ。こいつもまた、魔石と命石によっては維持できないんだよね。

まぁ、自分で自分の維持リソースを補える(正確には2種類セットで補い合わせないといけないが)ため、実質的に維持コストがゼロになっているというところもお得である。


で、こいつらを例えば300輪体制とかにした場合、それだけで1日の魔素・命素生産が約6,000も向上することになる。

そしてそれがそのまま、俺の【結晶畑】を拡張する原資にも充てられるのである……まぁ、試してみたところ【領域】内でしか「陽光変換」はできなかったわけだが、それでも十分すぎるほど強力な効果である。


――魔石・命石経済が一時的にでも破壊された時の勢力再建が、かなりしやすくなるからな。

元々『融合型』の迷宮領主(ダンジョンマスター)たるこの俺だ。いざという時にこの拠点を放棄したとしても、落ち延びた先で【変換花】をまず生み出せば、その分立ち上がりがブーストできるというわけである。

いや、もっと言えば"拠点換え"自体のハードルが一挙にゼロに近くなる、と言っても過言ではない。迷宮領主(ダンジョンマスター)の"弱点"の一つを、ほぼ解消できると言えば、そのヤバさがわかるだろうか?


まぁ、この案を実行する上で一つ気になるとすれば、迷宮領主(ダンジョンマスター)でありながら、その本分であるはずの「異界の裂け目」からの侵入者の防衛を放棄するとかいうことが、許されるのかどうかだが。


ただ、そこの問題さえクリアできるならば。


一つ、いろいろな問題を全部解消してしまえる腹案があるんだよねぇ。

リッケルの「流刑船」から着想したアイディアがあったんだが、それの実現可能性を、大いに大いに高めてくれるんだよ、この【変換花】という存在は。

くっくっく……。


『きゅ……夜や曇りの時はどうするきゅぴ?』


おう。

それが注意点の一つではあるな。

試してみたところ、魔界の黒い太陽以外の光源からには一切反応せず。

そんなところまで『太陽光発電』の弱点を真似なくても良いんだが――ともかく、晴れた日や昼間に生産した魔石・命石でもって、夜や曇りの間の維持魔素・命素を持たせることを考えると、日々のリソース管理はこれまで以上に慎重にしなければならない。

使役できるエイリアン軍団の規模は一気に増やせるが、その分気象に影響される不安定性も増すことになるからなぁ。


あと、このレーズンパ……変換花、"装備"としては少し微妙だ。

サイズといい、形状といい、エイリアン達の邪魔にしかならないのである。まぁ城壁獣クラスになれば装備できるんだが、連中の維持命素や維持魔素を補うには到底足りず、といったところだ。


【擬装花】 ◆因子:擬装 ◆進化元:肉塊花

リッケルからの戦利品その2である【因子:擬装】により、肉塊花から胞化した新たなファンガルである。

うむ……肉塊花、障壁としてたくさん作ることになるのだろうが、結構「胞化」先が多いんだよな。その新たな一つとして誕生したのが【擬装花】である。名前が因子のまんまだな、珍しい。

特性は、リッケルの【偽獣】をコピーしたようなものだ。

……つまり、触手やら肉と脂によって、少なくともぱっと見の外形としては、俺の知るエイリアンや動物達を「模倣」させることができるのである。まぁ、あくまで「俺」が知っている動物か何かでないといけないわけだが。

ちなみに、何にも「擬装」していない元の姿は、イソギンチャクみたいな触手が無数に収納された寸胴な肉のドラム缶といった見た目である。


そうだな。

「罠」と組み合わせた運用が良いかもしれないな。あくまでファンガル種ではあるため、その場からすぐには移動できないのがネックである。ただ、侵入者に対して遠目から何が居るのかを誤認させることができるのは有効だし、注意を引くこともできる、と。

応用次第ではかなり使えそうな気はする。


巣窟(そうくつ)花】 ◆因子:寄生 ◆進化元:肉塊花

肉塊花からの胞化シリーズの一つであり――こいつこそが、【宿木トレント】から解析した因子【寄生】によって誕生した存在である。

見た目は触手根の生えた(これはファンガル種の共通だしなぁ)溶けかけた穴開きチーズというところだろうか。

それだけなら、何に使うかよく分からない眷属だったろうが……一定間隔で、穴開きの部分から、非常に小さな羽の無いハチみたいな「エイリアン」を生み出すのだ、こいつは。


で、この小さな羽虫だが、【情報閲覧】によれば【寄生】能力を有している。


まぁ、心が踊ったね。

【人界】への探索計画と、【魔界】での――とある拠点改造計画を同時に進めている中で、俺の強みである「誰も見たこと無い」エイリアンという初見殺し性を最大に活かすためには、可能な限りエイリアン達は見られない方が良い。

だが、俺自身が成り上がる、あるいは目の前の脅威を廃して生き延びていくためには、どこかのタイミングで偵察や情報収集も必要なわけで、まさかそれを「エイリアン」にやらせるわけにもいかなかったのだ。


そこに来て「寄生」能力持ちというわけだ。

早速『性能評価室』でゴブリンや、最果て島の様々な動植物を使って実験したところ、以下のことが分かった。系統技能で強化される部分もあるようだから、基本値ということで。


寄生小虫(パラサイト)は巣窟花1輪あたり10匹が最大維持数

・パラサイトには維持コストがほとんど無く、数日でも単独潜行可能

・「寄生」した動物から多少の養分を吸い取ることで、さらに長期の潜行が可能

・「寄生」した動物がある程度小さい場合、行動をいくらか制御可能

・死んだ場合、巣窟花から数時間で新しいパラサイトが放出される


視界や聴覚を共有したりはできないが……俺の眷属達には副脳蟲(ブレイン)達の「エイリアンネットワーク」がある。

「寄生」したことによって目立たなくなり、遠くまで行ったパラサイトからウーヌス達が情報を吸い上げることで、かなり効率よく比較的低リスクで「偵察」をできるようになるのである。

まぁ……難点として、パラサイトは小さいため脳も小さいだろうために、ウーヌス達の情報収集能力を以ってしても、得られる情報の選別に時間がかかるわけだが。

また、あらかじめどういう情報を「重視」しておくか指示を出しておく必要があるが、パラサイト自身が寄生主の視神経や周囲の音などを「記憶」することも可能である。ただまぁ、これも巣窟花に戻ってからでないと指示を変更できないんだがな。


こいつだ。

こいつを使う以外無いだろうよ。


そうだな……まずは死んでも良い適当なゴブリンを放って、【人界】側の"裂け目"の周辺状況を確認して、最低限の安全を確認する。

人里から離れているなどの条件をクリアしたならば、本格的にパラサイト達を放って、適当な小動物に「寄生」させて、少しずつ探索範囲を増やして周辺の地理を確認して――情報を集めてから、出方を考えるべきだろうな。

ただ、【因子】については優先はするべきではある、な。


ふふふ。

今は亡きリッケル子爵サマサマだな。

痒い所に手が届くような因子がいろいろ手に入ったわけだが――【葉緑】の件といい、他の迷宮の眷属は【因子】を絞りやすいのかもしれない。


【鶴翼花】 ◆因子:飛翔 ◆進化元:肉塊花

多岐多様な胞化先がある【肉塊花】だが……因子【飛翔】にも反応した。

その結果として生まれたのは、植物を「芽」のまま巨大化でもさせたかのような、肉でできた巨大な"双葉"である。茎や根に対して「葉」に当たる二枚の薄べったく伸びた"肉"が、収縮と蠕動を繰り返している。


……つーか、でっかいなぁ。

『性能評価室』へ運び込まれた【鶴翼花】を眺めつつ、俺は"肉の羽"をびちびちと叩いてみる。タタミ一枚分はありそうなでかい肉の葉が二枚……べろんだらんと広がってびくびく蠢いている。

触感は微妙につるつるしていて、戦闘系のエイリアン達の皮膚と感触が非常に近く、その意味ではあまりファンガル種ぽくない。


こいつの使い方は、まぁわかりやすいな。

運んできたスレイブとは別に、呼び寄せた巡回ランナーを一体、側まで行かせる。そして【鶴翼花】を背負わせてみると――OK、やっぱりこいつも「装備」品として使えるな。


おめでとう!

らんなー は にくのつばさ を そうびした!


こいつは【触肢花】や【属性花】らとは少し違う。

というのも、まるで「装備」するために産まれてきたかのような、ちょっとした特性があったのだ。

なんと、ランナーの「体格に合わせて」肉の葉……いや、肉の"羽"が、収縮してちょうど良い大きさに変化したのだ。

まぁ、接合部が「肉の根」で絡みつかれているというグロさを気にしなければ、まさにランナーに翼が生えたと言っても過言ではない見た目になった。


んで、試しに壁を登らせて滑空させてみると――うん、パラシュートみたいな感じで落下の衝撃を自分でコントロールしやすくなっているな。

が、さすがに、本職の空飛ぶ生き物みたいな自由自在な「羽ばたき」はできないようだ。純粋な飛行能力という意味では【誘拐小鳥(エンジョイバード)】や【風斬りツバメ(エッジスワロー)】らには遥かに及ばないだろうが――戦闘時の選択肢が増えるというのは、悪いことではない。

例えば空挺部隊みたいな感じでランナー達を運用するのはどうだ? それに、ランナーだけでなく他のエイリアンや、場合によってはル・ベリに「装備」させるという手もあるのだ。


『すっごーい! あれほしい~! 創造主様、僕にもあれつけてつけてきゅぴ!』


「なら先に体力つけないとな。お前らがあれを装着したら、あっという間に干からびちまうぞ?」


元々、ファンガル種達は周囲から魔素・命素を吸うために肉の根を伸ばしているわけだが、それを「他の生物」から吸わせるということもできる。

そうした生態を利用して、複数体のスレイブやランナー、急ぐ場合は戦線獣(ブレイブビースト)らに「植え替え」させるわけだが、少しの時間ならいざ知らず、長時間の「装備」として考えた場合はさすがにウーヌス達では不安である。

「植え替え」にせよ「装備」にせよ、そのファンガル種が本来必要な魔素・命素を肩代わりさせているわけだから、追加の魔石・命石を与えて維持させねばならず、魔石や命石の吸収速度が遅いブレイン達では万が一があり得る。


……ふむ。

拷問か、罠としてアリかも?


ところで、「装備品」として奴隷蟲(スレイブ)を一体消費することのコスパについては、慎重に考えなければならないだろう。スレイブが過労状態なのは解消されていないし――これからもっと、ファンガル種が入り用になるんだからなぁ。


ぶっちゃけ、同じ「一体」ならそいつで上位のエイリアンを作った方が、単純な戦力強化という意味ではすぐにできる。まぁ、上位個体ほど進化に時間がかかるから、すぐに戦場に投入できるかどうかという要素も考えると、痛し痒しではあるんだが。


『きゅぴ。でもあの【鶴翼花】さんは、回収すれば他のエイリアンさんにもつけかえられるよ?』


『そりゃそうなんだがな。数を揃えるって使い方をするべきかどうかは、ちょいと微妙だ。宿主ごとやられたら、ファンガル種達は自力じゃ逃げられないだろ?』


『ねーねー、アルファさんにつけてみようよ! どんな"羽"になるか、見てみたい!』


『あー、それいいね! やっぱり"筋肉な羽"になっちゃうのかなぁ~』


『迷うよね! 速さも大事だけど、空を飛べる筋肉だなんて、かっこ良すぎ?』


――ふうむ、今回の新エイリアン紹介はこんなところか。

嗚呼、ウーヌス達ブレイン種を"進化"させるような因子は、まだ手に入らないかなぁ。早いところ精神年齢を成長させたいんだがなぁ。


……どれ、気分を変えよう。

次はル・ベリの様子を見に行くか。

そろそろ(・・・・)のはずだからな。


   ***


「よいしょ、よいしょ!」


『あ、あ、あ、あ……』


『赤ちゃんかわいいいいいいいきゅぴいいいいいいい!』×6


「ええい、まとわりつくな! 脳みそどももうろちょろしているんじゃない! おのれ貴様ら! ……こら、サボるなゴブリンども! ええい、脳みそども! 【触手】を勝手に動かしてるんじゃない! うぐああぁぁああッ!」


うむ。

荒れてるな。


再建しつつある『実験農場』でゴブリンや奴隷蟲(スレイブ)を始めとしたエイリアン達がせっせと重労働をしており、それにル・ベリが「10本鞭」を絶え間なく叩きつけて"痛み"を制御し、しっかり監督している……んだが、そんな、本来であればピリピリした雰囲気である農務卿たるル・ベリの「職場」は、ちょっとしたカオスな状況と化していた。


まず、下半身と両腕が"根"と"枝"で形成された、緑色の肌と緑色の髪を持つ幼児がル・ベリの頭の上に「よいしょ、よいしょ」と必死に這い上がろうとしている。

それをル・ベリが触手の一つで引きずり降ろそうとし、しかし緑幼児が両腕と下半身の枝や根をぱきぱきと伸ばして抵抗し、あしらいつつ掻い潜り、相変わらず「よいしょ、よいしょ!」と登っている。


んで、観察していて気づいたんだが、ル・ベリはどう扱ったら良いか分からない感じで、見たこともないぐらい慎重な触手使いで幼児をなんとか降ろそうとしているのだが――なるほど、ウーヌスがル・ベリの「8本触手」のうち、"装備"している【触肢花】達の支配権を奪おうとル・ベリと精神世界的なせめぎ合いをしていて、幼児の「木登り」を援護しているのである。


ル・ベリ自身の触手を時折りウーヌス達に支配権を奪われた【触肢花】が邪魔しており、幼児がついにル・ベリの頭の上まで登頂成功する。


「おにーたま!」


『赤ちゃん頑張ったきゅぴ! みんなの勝利だよ! わーい、わーい、わーい!』


「きええええええええい!」


植物幼児も、ウーヌス達も見るからに脆いからなぁ。

まさか怒りを直接ぶつけるわけにもいかず、ル・ベリも大した自制力だな、なんか雄叫び上げてゴブリン達を叩きまくって――。

おいこら、また固有技能【殺戮衝動:ゴブリン】が上昇してるじゃねぇか! 俺の考えるビルドのための点が減ってしまう!


「なんだなんだ、何があったこの騒ぎは……」


「! 御方様!」


俺に気づき、即座に全ての触手を降ろしつつ、膝を屈して礼の体勢を取る。


「……で、そいつは"弟"か? それとも"妹"か?」


きゃいきゃいとル・ベリの頭の上で、根っこと枝をル・ベリの顔とか耳とかに絡みつかせて簡単には剥がせないように無駄に踏ん張る緑の植物幼児。

触手へ対抗するために枝と根をバラけさせていた両腕は、登るのに成功した満足からか、「人間の手」みたいな形になっている。ちょうど枝と根をギリギリと束ねて絞って無理矢理人間の手の形にしているような――どう見てもリッケルの【偽獣】じゃねぇか。

だが、面白いな。

両腕と下半身を除いた胴体と頭部は、普通の魔人族の幼児なのである。


「は? は……それが、本人曰く『どちらでもない』と」


「へぇ、どういうことだ?」


ル・ベリ曰く、最果て島の鳥獣を手なづけてきた経験から、動物のオスとメスを見分ける眼力もそれなりにあるのだが――うん。

無理だわな。

下半身が完全に生い茂る大樹の枝葉みたいな状態になっているわけで。

わからんわこりゃ。


「やぁ、緑色のボク。君の名前は、なんだい?」


『ぎゅびぃぃいい!? 創造主様が……優しい声を!? 創造主様、変なガスでも吸ったきゅぴ!?』


『黙れ、海水浴させるぞ』


緑幼児は少し人見知りな様子を見せ、ル・ベリの後頭部に身体を隠してしまう。

俺はル・ベリの微妙そうな表情を気にせず、緑幼児に向かって手のひらを伸ばして、ゆっくり語りかけた――ふむ、この手の"やり取り"は、懐かしいものだな。


距離感を図りながら、俺は努めて柔和な表情と雰囲気を伝えるように心がけ、いきなり近づいて怯えさせるとかいう下手は打たないようにする。


「あるじたま?」


「おう、俺のことは好きに呼べ。で、君はまだ名前が――そうか、無いのか」


【情報閲覧】っと。


【基本情報】

名称:未設定

種族:魔人樹

職業:未設定

位階:1(技能点:残り5点)

HP:35/35

MP:40/40


やっぱりな。

生まれたてじゃ……未設定なのも仕方あるまい、か。


だが『魔人樹』ねぇ。

……最後が「人」じゃなくて「樹」で終わってるってことは、こいつはどちらかというと植物成分が強いんだろうか? あれ、植物に"性別"ってあったんだっけか――つまり、そういうことかいな。

言うなれば「無性」か「両性具有」か。

【情報閲覧】でそこまで分からないのが地味に不便だな、こうなると。


まぁいいや。

それにしても、リッケルの野郎、最後にとんでもない置き土産を置いていってくれたもんだな。

どうしようかな、この緑幼児。

ル・ベリに教育させるかな、なんか「兄弟」らしいし。

……異母兄弟? それとも異父兄弟?


「よし、ル・ベリ。名付けろ」


「な……お、御方様……私は」


こういう困り方をするル・ベリは珍しいな。


「命令だ。いい名をつけてやれよ? んで、立派に導いてやることだな」


そう言うと、ル・ベリがぐぬぬぬとか呻きだしてしまった。

っとと。


「おーよしよし、良い子だねー。俺は君の『おにーたま』の主で、オーマという名前だぞ~?」


おっかなびっくり、ル・ベリの後頭部から顔を半分出しながら、俺の伸ばした手に緑幼児も指――枝を伸ばしてくる。

ほーら、E・◯ごっこだよ~。


「あるじたま……おーまたま!」


うむ、うむ。

何時の世も子供というのは、可愛いものだな。ただし副脳蟲(ぷるきゅぴ)どもは除く。


「――グウィース。御方様、このガキ……子供の名は、グウィースとしましょう」


「由来は?」


「我が母の故郷の名、だそうです」


「なるほどね……やぁ、今日から君は"グウィース"だからね~、ほら、言ってみてごらん? グウィース」


「ぐうぃーす? ぐうぃーす、ぐうぃーす? ……ぐうぃーす!」


ふむ。

もっかい【情報閲覧】をかけると、しっかりと名称に反映されていた。


あ、そうだ。

ついつい純真無垢なる幼児と触れ合って癒やされてしまっていたが、本題はこれじゃなかったわ。


ル・ベリ君。

二回目の改造の準備はいいかね?

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