表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/164

本編-0015 ビルド考察~半魔人

「情報閲覧:対象ル・ベリ」


【基本情報】

名称:ル・ベリ

種族:半ゴブリン/半魔人

職業:獣調教師(ビーストテイマー)

位階:17〈技能点:残り13点〉

HP:142/142

MP:116/116


"半魔人"であるせいか、身体能力では魔人には劣っているな。

可哀想に、これも劣等生物(ゴブリン)の汚らしい因子が入っているせいに違いない――次に俺が位階上昇したら【因子の希釈(ディルート・ジーン)】に振って、すぐに改造人間にしてやるからな? バッタとコウモリとサイボーグとどれが良いかね?


『如何ヨウにでも――我が身ハ、御方様の仰セのまマに捧げルのみ――ッ!』


おう。

突っ込んでくれないと調子が狂うな。

忠誠心が高すぎるのも善し悪しということか……イエスマンが固定化しないように教育はしておかなければ。


まぁ、気を取り直そう。

HPとMPについて、ちと気づいたことがある。

俺が【魔人族】であるとして、位階1ごとにHP10、MP15上昇しているから――ざっと計算するとル・ベリはそれがHP7、MP6といったところだ。

そんなところまで"半"魔人てわけね。

初期値は多分それぞれHP30、MP20で低い。

【因子の希釈】によるゴブリン因子の置き換えが可能だった場合、この辺りの変化も観察できるかどうか、興味深いところである。


次は技能だ。

種族技能から見ていこう。

スキルは詳細表示っと。


挿絵(By みてみん)


うむ、思った通りだ。

魔人族の種族技能と、多分おそらくゴブリン由来のものと思われる技能が交じり合ったスキルテーブルとなっている。これは多分、同じ"ハーフ"であっても「混じり具合」に個体差が出るのかもしれないな。


その点、ル・ベリはかなり運が良かったと言える。

【異形】【魔眼】【後援神】といった魔人族の種族技能の"美味しいトコロ"がキッチリ押さえられているからな。俺がル・ベリからゴブリン特有の汚らわしさをあまり感じなかったのは、これも背景の一つかもしれない。


……それにしても、取得済みの技能やそれらのランクを見るに、彼の人生における苦労と苦悩が偲ばれるなこりゃ。

この点だけは、ゴブリンのスキルテーブルから推察できる、連中の"生き汚さ"特化に助けられている――ル・ベリからすれば屈辱心頭なんだろうが、まぁ、耐えて忍んだ結果、俺という主に出会うに至ったのもまた運命の妙だろうよ。


あと発見した面白い現象としては、魔人族特有の【魔法適性】系列の各技能が、スキルテーブルに乗ってはいるものの"弱化"されていることかな。

【魔法強化:弱】ってなんやねん、強いのか弱いのかはっきりしろ……いや、意味はわかるけれどさ、言いたいこともわかるんだけれどさ、迷宮核さんや。

まぁ、"ハーフ"となる場合――というよりはなんらかの要因で因子なりが混じり合う場合、単に双方のスキルテーブルが混ざる以外にも、こういう形でのスキル変化も有り得るというわけか。実に興味深い。


それから、ル・ベリの自己申告通り【後援神】系統が伸びている。

かなり伸びている、いや、伸ばされているというべきか。


【嘲笑と調教の女王オフィリーゼ】ねえ。

ル・ベリは彼女の加護を鳥獣の手懐けに活用しており、それは職業の【獣調教師】ともよく噛み合ってはいる。


……だが、俺は迷宮核さんの知識から既に知っている。

(まった)き黒の神】の眷属神が一柱【嘲笑と調教の女王(オフィリーゼ)】の本質は、鳥や獣とお友達になれるだとか、そんなメルヘンで可愛らしい代物では断じてない。


まぁ、それについてはまたいずれ。

とりあえず次だ。

職業技能はどんなもんかな?

あぁ、あと一応『称号』が一個あるみたいだな……固有技能もついでに開くか。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


うわぁ……。

コメントしたいことがあるが、まぁ、とりあえずビルド考察しながらだな。


で、職業技能についてだが――【獣調教師(ビーストテイマー)】ねぇ。


スキルテーブルをざっと見回す限り、その特性は、使役する鳥や獣の強さに依存した職業であることが伺える。

だが、元の数字が低ければ何を掛けても低い数字にしかならないのが世の理。

弱い鳥獣を使役する限りでは本来の力を発揮できないだろうから、その意味では晩成型。そして鳥獣を飼うのにはコストがかかる割に、本人強化系の技能がほとんど無いのも痛い。


こりゃ、非戦闘員扱いされて馬鹿にされてきたのも止む無しだ。

ゴブリンどもが半知性種でしかない愚物であることの裏付けの一つではあるんだろうが……職業それ自体がダメなわけではないが、ル・ベリの人生においては、確実に一長一短を作ってきたに違いないもの、これ。


まぁ、幸い魔人族としての【異形】系統なんかも可能性としては保有しているため、身体能力に関しては大幅な強化可能性はある。

ビーストテイマーを伸ばしつつ、本人の弱点を目立たなくさせるビルドもやろうと思えばできようが――。


言っちゃなんだが【迷宮領主(ダンジョンマスター)】の俺からしたら、完全に劣化版の下位互換だわ、ビーストテイマーてヤツは。


比較対象が特異な存在なのはちと酷かもしれないが、ル・ベリに小鳥や小動物を操らせずとも、エイリアン達を駆使してもっといろいろなことができる(予定)からな、俺は。いわんや、他の眷属を操る迷宮領主達をや。


その意味では【獣調教師】の主力スキルであるはずの「鳥獣を使役する」系列のスキル自体は、ほとんど点振りされていないことはラッキーか。


技能点が、基本的にはその者の「努力」やら「願い」やら「偶然」やらの影響を受けて、何らかの拍子に振られていくルールだってことを考えれば、こんな技能点じゃあ、ル・ベリの実力は本来はボアファントなんぞを手懐けられるような水準には無かったはずだ。

だが、おそらくそれを可能にしたのが【嘲笑と調教の女王(オフィリーゼ)】の後援だろうな。わずか1点分の【鳥獣伝心】の効果でさえ、本来の何倍にも拡張されているんだろう。


ふむ……多分絶対にやらないが、それでも仮に、オフィリーゼの存在を前提にビーストテイマービルドでル・ベリを育成するとしたらどうだろうな?

まぁ――伸び代は悪くないとも言えるっちゃ言える。魔人族の身体技能によって、並のビーストテイマーよりは遥かに高い実力を備えることになるだろうが――ただ、問題として「調教(テイム)」できる生物が"鳥獣"に限られてるってのがなぁ、やはり引っかかるんだよなぁ。


一瞬、脳裏に、初日に見かけた巨大海獣ヒュドラの姿が浮かぶ。

たとえばル・ベリがあれを手懐けられるとしたら、どうするか?

多分ビーストテイマーのままでは無理だろうな。

ル・ベリから聞いたゴブリン氏族のゴブリン達の"職業"構成を聞く限り、上位職業的みたいなものはあるようだ――ん? "職業"を持つゴブリンは魔物ではなく亜人に属するんじゃないかって? ははっ、だから半知性種(・・・・)なんだよ。故に魔物それ自体よりも性質(たち)が悪い。


で、まぁ職業進化(クラスチェンジ)がもし可能だとすれば――例えば【幻獣調教師】みたいな職業が必要になるんじゃないだろうか? 本気でヒュドラみたいな存在をテイムしようと思ったなら。

……そしてそこに至るまでに、技能点をどれだけつぎ込み、あるいは残しておくことになってしまうんだという話だ。


それはそれで面白いとは思うんだけどさ。

先にも言ったように、俺のビルドと全く噛み合わないんだよね、これ。


【エイリアン使い】としての本質は、様々な生物を取り込み【因子】を得て「エイリアン」を多様に分岐強化させていくというものである。

だから、ヒュドラ(クラス)の生物を仮に捕獲できる機会があったとしても、ル・ベリに戦力として使役させるよりも、俺が【因子の生成】によって取り込んだ方が『迷宮としての戦力』は総合的に上になるはずなのである。


従って、ル・ベリの【獣調教師】としてのメインスキル群には「振らない」。

というか"転職"条件を満たしさえすれば、すぐにでもそうするつもりだ。

幸い、今既に少しだけ振られている獣調教師の技能には【オフィリーゼの歓心】によって十分に強化されてはいるのだし、スパイスとして運用する分には、もはやそれでお腹いっぱいである。


だから、そうね。

ル・ベリのビルドは、とりあえず本人強化の方向で点を振ろうと考えている。

誇り高さを押し殺し、「ゴブリン」として生きざるを得なかった心的外傷(トラウマ)を除去してやるには、【魔人族】としての種族技能をこそ強化してやることが肝要。

そして将来的には、【進化臓】でゴブリン因子を【因子の希釈】によって置き換えすることも含めれば、カウンセリングとしては十分だろうよ。


スキルテーブルの変化から、本人を直接強化するのに、より適した能力が得られるかもしれないしな。

だから、今ある技能点13点分については――ちょっと【異形】系統に突っ込んでみようと思う。


え? 【因子の希釈】で種族いじった後にするんじゃなかったのか、だって?

焦るな、誰が今やると言った。

こらそこ、ル・ベリ、残念そうな顔をするんじゃない。

考えてもみろ、今この瞬間【第一の異形】をランクMAXにして、ご立派な三本角(トライホーン)だとか目立つ異形なんか獲得してしまったらお前、どうするつもりだ。


「時来たレりというワケですナ! 憎きゴブリンどもヲ、今こそ我が手デ皆ごろ」


ストップ! スタァァァップ!

【殺戮衝動】に振られるからその想像は即座に中断放棄せよ! 繰り返す!


ごほん。

……だから、それだと今お前がせっかく準備している一大イベントが台無しになるじゃろうがよ。


無論、下手に技能点を残したままにしていると、【嘲笑と調教の女王(オフィリーゼ)】に勝手に【後援神】系列の技能上昇に使われるリスクはある。

他の技能ガン無視でこの系列が、なんと18点分も特化して振られているんだよ。ほぼ年に1点のペース――十中十つ、ル・ベリが毎年定期的に感じていた"技の冴え"の原因てこれなんじゃねぇの?


まぁ、逆に考えればそれでも1年1点のペースでしかないわけだが。

幸い振り残しは13点だから、相当オフィリーゼに気に入られているようではあるが、まぁ1点ぐらいなら許容範囲というところか。


だが、その後は――俺にも俺の都合があるからな。

【嘲笑と調教の女王】さんよ。こいつは既に俺の配下である以上は、あんたの"歓心"は、今は抑制させてもらわなきゃならない。


そして、勝手に振られる可能性のもう一つ。まさに今そのフラグ立ちかけていた、称号【ゴブリンを憎悪する者】による固有技能【殺戮衝動:ゴブリン】だ。

魔人は等しくゴブリンを嫌悪する本能を持ってはいるが、ル・ベリはその特殊な生い立ちもあってか、称号化するほどこじらせているご様子で。

彼の執念深そうな性格と――現在準備しているイベントを合わせて考えると、エキサイトしすぎて「自動振り」される危険性が高い。


まぁ……それでも「1点」ぐらいだったら、くれてやっても止む無しだろうなぁ。

本当にタイミングが悪いが、せっかく10点以上の振り残しがあるこの瞬間を逃すと、次に【異形】を一つ生やしてやれるのは、位階を4も上げた後のことになる。


効率中毒になっても仕方無し。

10点を一度に振れるようにするために、ここは3点は「自動振り」されてしまう前提でいた方が精神衛生上よろしいだろう。


で、話をル・ベリ自身の強化に戻せば、そうする方がオフィリーゼの「本性」との相性は良くなるはずなのだ。

その意味においても、実は【獣調教師】はベストな組み合わせではない。


そうだな。


嘲笑と調教の女王(オフィリーゼ)】の後援受けたるル・ベリには――【拷問士】なんかが相乗効果高かったりするんじゃないかな? そんな職業があるかどうかは知らんけど。


まぁ、まずは目の前の「イベント」に集中しようか。

予定では決行まで5~6日というところ。

ル・ベリがレレー氏族を焚きつけて、ムウド氏族との決戦へ持ち込む機に乗じる。

そして俺は、両氏族の争いに対して最高のタイミングで横合いから思いきり殴りつけてやるのだ。


生き残りは奴隷としてル・ベリに支配させ、縄張りは俺の勢力圏に組み入れる。


そして【進化臓】を揃え、俺が【因子の希釈】を取得できた後に、いよいよル・ベリからゴブリン成分を取り除く。

この時に、満を持して【異形】を与え、魔人としてのビルドをスタートさせる……とまぁ、こんな段取りになるだろうな。


スキルテーブルの変化を観察し、もしそこで、本人強化系の技能があれば、それらに振るのも良いだろう。ある程度のル・ベリ自身の強化が完了したら――より良い"職業"が見つかるまでは技能点を溜めておくかな。

オフィリーゼに自動振りされるリスクを取りつつだが、お茶を濁すために獣調教師の技能に振ってしまうよりはずっとマシだよ。


まぁ、これ以上は取らぬ狸の皮算用だな。

一旦考察を切り上げよう。


   ***


それから俺は、もう少しだけル・ベリと詳細を詰めてから、ランナー5体を伴って帰還することとした。


んで、そうだ。

結局、あんまりにも無言で期待のキラキラ眼差しを送られるもんだから、別れる直前に【第一の異形】に1点だけ振ってやっちまったんだよね。


まぁ、予想通り見た目の変化は無かったがな――あったら困るし、無いだろうと踏んでいたから、妥協して振ってやったわけだが。


しかしそれでも、本人の自己申告を信じるならば、何やら体の奥底で力が溢れるのを感じる……背中や腰のあたりがもぞもぞ疼くとかなんとか。

君、それはプラシーボ効果だぞ……とは内心思ったもんだが、まぁ士気高揚のため無粋な突っ込みはよしておいたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ