#021. ちからの種
さておねんねして起きて、種を植えてから二十四時間、経過しましたぞ。
もちろん十二時間前には一度様子見をしたし、さっきも様子見をしにログインした。
一度、害虫がついている表示になっていたので、イモムシを収穫した。
これペットの餌とかで使えるらしい。おほほ。
「ウタカ、タピオカさん、んじゃ力の種、というかもう『ちからの実』だね」
「うん」
「そうですね」
そこには青々と茂る薬草の隣に、パプリカみたいな真っ赤になった力の実がなっていた。
草の高さは四十センチくらいか。
その実の数、三つ。
「三つあるので、ひとり一つで」
「いいよ」
「うん」
ゲームのアイテム名は出るがどんな味かまでは書かれていない。
ドキドキしながら、その時を待つ。
「いただきます」
「……いただきます」
「いただきます~」
もぐもぐ。
一口かじって口に入れる。ん、思ったよりは美味い。
甘味があってほんのちょっと柑橘みたいな酸っぱさがある。
なんだろう、これはユズみたいな味だ。
「悪くはない」
最後まで食べきると、ピコンとメッセージが出た。
>ルルは「ちからの実」を食べ、攻撃力+1
「お、おおおお、表示出た。攻撃力+1だ」
「お兄ちゃん、私も」
「私もです、琉亜君」
三人でハイタッチを交わした。
まるでバスケットでスリーポイントシュートを決めたみたいに。
これはひょっとするとひょっとして、すごい発見かもしれない。
ただ、あれだけ苦労して戦ったウルフの集団戦で一個っきりなので、もしかしなくても入手難易度が高いのかもしれない。
あと+1がどれくらいなのかにもよる。
攻撃力が3000とかあって1だったらほんのちょっとだ。
そんなにレベルも高くないので、たぶんまだ相対的にはけっこうなアドバンテージな予感はする。
「へいへいへいー」
「お兄ちゃん、さすがです!」
「琉亜君やりましたね!」
「あはははは」
俺たちはよろこびまくったのであった。
さてそれからの快進撃も続く。
マイ島の固有モンスター、グリーンスライムLv10と戦闘した。
スライムの癖にLv10もあるので倒すのに苦労した。
ミルシーダ平原のフィールドボス周回もした。
Lv15ビッグスライム、ビッグボア。
Lv20ゴブリンキング、ラージシルバーウルフ。
こいつらを倒すのまでにはレベリングも必要で、かなり苦労した。
ドロップアイテムの魔石なども美味しかったものの、あまりいい思い出とはいいがたい。
ボス強いんだよね。基本的に。HPが多いので簡単に倒せない。
長時間戦闘はミスを誘発しやすくて、一瞬のミスが致命的だったりするのだ。
まあ、俺たちはそれほど弱くないというか安全マージンをとって戦ったから、大したことなかった。
エステート森林へ進路を進めた。
グリーンクローラー、ビッグスパイダー、ブラウンマンティス、それからポイズンスラッグなどが生息している。
虫系モンスターが多い。
森は草原ほど見通しがよくないので、気が付くと敵に囲まれていたりするから注意が必要だった。
それから樹上から襲ってきたり、と攻撃パターンも多彩だ。
まさに中級者向けという感じのフィールドだった。
それから各種オークが出てくるのだ。亜人型でメイジなどもいて、なかなか戦闘には手こずった。
それでもオークは経験値がいい敵なので、みんなで連戦したりした。
だいぶレベルも上がってお金でもできた。
そこで港町経由で船旅をした。行き先は自由都市島ラデスだ。
人口の過半数をラビットレイスが占め、他も獣人が多い。
観光するにはうってつけだった。
俺と妹の詠はもちろん、タピオカさんである蒔絵ちゃんとも仲良くなった。
な、なんと、リアルでデートまでしてしまったのだ。
俺冥利に尽きる。
そんなかんなで、俺たちの旅は続いていく……。
(了)




