残虐の策略 魔王倒されるー7ー
「ガイエル……誰の事を言っている。俺はキースだ……何故、誰も認めてくれない」
キースは顔の左半分が変わっている事に気付いていない。だが、蛇の目、黒肌色、髭を生やすなど明らかに違っている。
「死霊がキースの体にガイエルの魂を憑依させたのか……あの魔法を使えたのも納得出来るが」
断頭台の刃はガイエルの得意とする闇魔法。キースの体にガイエルの魂が宿っているのなら納得出来る。だが、人間の体には変わらず、その反動を利用して、ガイエルはキースの体を乗っ取ろうとしているのだろう。
「残虐のガイエル……魔王の一人がキースの体を操っているのですか?それなら、キースの体から追い出せば」
マキナは今までの出来事はガイエルの仕業だと考えた。しかし、最初は干渉する力は少なく、キースの意思。体を変化させるまで侵食までに至れば、魔王であるガイエルの呪縛からは逃れられない。
「いや……遅すぎだ。体だけじゃなく、意識も変化している。マキナもキースじゃないと思ったんだろ。救いたいと思うなら、キースを殺すしか……ちっ!今の状態を利用してるのかよ」
キースは魔法の詠唱を始める。杖や魔導書を持たず、合体魔法の詠唱を短縮させた。それは、キースとガイエルの声が別々の魔法の詠唱をするからだった。
「マキナは守りと補助に徹してくれ。キースに攻撃なんて出来ないだろ」
サイガは詠唱妨害のため、キースに向かって走った。詠唱速度では負けるのであれば、肉弾戦で阻止するしかない。
「接近戦なら勝てるとでも思ったのか?それはお門違いだな。お前の狙いは分かっているぞ」
その声はガイエルであり、キースの声は詠唱を続けていた。二つの声を持っていた事で、妨害が出来たのは片方だけ。キースはサイガの両腕を掴み、至近距離から魔法を直撃させようとしているのだ。




