残虐の策略 魔王倒されるー6ー
「マキナ様……何をとは……侵入した賊を始末しただけです。近付けば、汚い血で汚れてしまいますよ」
マキナの声に反応して、キースは横顔が向けた。それは無表情であり、人を殺しても何とも思っていない。殺した相手を踏みつけにしている。
「始末……殺す事はなかったはずです。彼らは否定していましたが、貴方の家族を殺したのですか?」
身内が殺されたのであれば、怒りに身を任してしまったかもしれない。だが、キースはそこには何も触れていない。だが、そうでなければ、誰が屋敷内の人達を殺したかになる。
しかし、キースから意外な言葉が発せられた。
「家族……ああ……殺したのは私自身。あちらが私を殺そうとした。正当防衛ですよ……ハハハハハハ!」
キースは気が狂ったように笑いだし、死体に対してさらに魔法を放ち、粉々にしていく。それはあまりにも狂気に満ちていた。
「家族まで殺したというのですか……貴方は一体誰です?キースがそんな事をするわけがありません」
「何を言うかと思えば……貴女の知っているキースですよ。いや……貴女が偽者なんだ。偽者でなければ、サイガと共に行動するわけがない。偽者はこの手で殺さなければ」
キースがサイガを目にした事で、異変が起こった。キースの発する言葉が二重になっている。一つはキースの声なのだが、もう一つは別の誰か。
それは死霊の声ではない。だが、サイガには聞き覚えのある声だった。
「殺す事で力を増していく。そうなれば勇者を倒して、マキナ様に認めてもらう事が出来る」
キースはマキナと認識せず、別の誰かと判断し、攻撃体勢に入るためにはサイガとマキナの方へ体を向けた。
見えなかった片側の顔はキースの顔でなくなっていた。それは呪いで腐ったわけでも、骨だけになっていたわけでもない。本当に別の誰かの顔に変化していたのだ。
「その顔は……残虐の魔王……ガイエル」
サイガの言葉に、ガイエルの顔となった部分だけが笑みを浮かべた。




