残虐の策略 魔王倒されるー1ー
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サイガとマキナ、シリアはエリスの連絡を受けて、バイト先の店を閉店して、集まって会議を行う事になった。その中には大人バージョンのアイシャの姿もあった。
それは死霊の影をサイガとアイシャが感じただけでなく、エリスの前に現れたからであった。
「アイシャがこの場に来るという事は……死霊というのは歴史上に出てくる死霊本人なのですか?」
マキナもアイシャが来た事で危険な状況になっているのだと分かった。そうでなければ、アイシャが動かない事はマキナも知っていた。
「今起きている事を考えるとそうなる。ある事を口にしたのをエリスが聞いたようだからな」
「はいはい……聞きましたよ。アンタが参加するからって、報酬額は減らさないでよね」
ある事とは死霊がサイガの名前を口にした事だ。言葉を濁したのはサイガが魔王と知られないようにするためであり、エリスもそれに関して何も言わなかった。
その代わり、サイガをジッと見つめていた。本当に魔王ではないかと疑っているのかもしれない。だが、魔王であるのなら死霊が敵対する理由が見つからず、実力も伴っていない。普通に日常生活に溶け込んでいる事で判断出来ないのだ。
「分かっている。問題は魔方陣を完成を阻止し、死霊を倒さなければならない事だ。奴が姿を現すのは滅多にない。確実に勝てると踏んだ時だけだ。エリスが会ったのも体の一部を埋め込まれた死体だろうな。おい!お茶じゃなく、トマトジュースだろ」
店長が気を使って、全員にお茶を入れたのだが、アイシャは店長にお茶を突き返した。
「せっかくの好意だろ。店を閉めてまで場所を提供してくれたんだ。そんな態度はおかしいだろ。初対面の相手がトマトジュースが好きだなんて分かるわけないだろうし」
しかし、機人である店長の表情は変わる事がないが、喜んでいるように感じた。
「いや……わざとやっている。私の機人のパートナーはアンド=ロイド、こいつだからな」
「はぁ?お前のパートナーは……店長だっていうのか!」
「そうだな。ワーエンドは私のパートナーで間違いない」
店長もアイシャのパートナーである事を認めた。つまり、アイシャと店長は同等の力を持つ事になる。こんな小さな店を経営しているだけなのだから、金の力では無理だからだ。
「サイガ!自分の師匠であり、学園の教師に向かってお前というのは駄目です。それにアイシャのパートナーが誰なのかは今の問題とは関係がないでしょ」
「す、すまん。あまりにも驚きが強くてな。それよりもマキナ達は死霊の事を知っているのか」
死霊を戦う事になるのであれば、情報が必要となる。
「ええ。史実通りであれば多少の知識はあります」
「私はアニメ通りであれば分かるわね」
「私もエリス様と一緒です。けど、魔方陣の事とかはやりませんでしたよ」
マキナは伝記に残された史実からであり、エリスとシリアはアニメから。アイシャが協力しているのだから、アニメの死霊の力はそのまま描かれているのだろう。
死霊ジャギの力は魔王の中では一番低い。だが、死体を操る能力で圧倒的な手勢を持つ事で魔王までになった。そして、残虐のガイエルと並んで、悪と呼ぶに相応しい存在。
アニメでは死霊の魔方陣を作り出そうとしていた事は描かれていない。発動前にエルナが倒した事で、どのような物なのか分からず仕舞いだったのだ。
「死霊が発動させようとしている魔方陣には、まず四ヶ所に生け贄が必要となる。それも三つは事を終えられているな」
アイシャはレジ台に地図を広げ、三人が殺された場所を印した。研究施設と廃工場は北から南へと真っ直ぐであり、学園を含めると円を描く事が出来る。その広範囲の円内部が発動域となる。
「残るはこの場所付近だな。それが失敗すれば多くの死体が蘇り、街全体が危機に陥るぞ。今は整備された街だが、昔の戦いによって多くの死体が埋まっているからな」
それはサイガも知っていた。エルナと残虐のガイエルが戦った場所であり、多くの魔物や魔獣の死体があってもおかしくない。それはエルナ達が倒したのもあるが、ガイエルが部下を縦横無尽に魔法を放ったのも原因だった。




