波乱の生徒会選挙 銀髪眼鏡VS魔王 ー11ー
「マキナの事じゃから予想出来た事なのに……先に会長に立候補すると思ったのが間違いじゃった。お前の迅速な行動のおかげでな」
「言いがかりだ!お前がエリスを生徒会に入れろとか言ったからだろ。そのせいでエリスに怒られるわ、シリアにファンクラブのリーダーにされるわ、キースって奴に目をつけられるわで散々なんだぞ。それに、何で俺を副会長に推薦したんだよ。キースと競わせたいのか?」
「お前がマキナと生徒会で親密になるためには、キースの存在は邪魔じゃからな。しかし……マキナを会長にしなければ……会計だと……一度選挙をぶち壊すのもありか……その後にやり直したいをして……マキナを会長に推薦すれば……」
アイシャは物騒な事をブツブツと呟きながらも考え込んでいる。しかも、アイシャなら言葉だけではなく、行動に移しそうだ。だが、何とかその考えを踏みとどまったのか、それとも妙案が思い浮かんだのか、アイシャはサイガに笑顔を向けた。
「とりあえず、お前がキースに勝とうが負けようがどっちでもよくなった。今のところは自由に動いてもよいぞ。チャイムも鳴ったようだし、今日のゼミは終了じゃ。さっさと出ていけ」
「何だよ……勝手に副会長に推薦しておいて、負けても構わないだと……本当にいいんだな!俺は何もしないぞ」
サイガはドアを強く閉めながらも、内心ではビクビクしていた。何か裏があるのは『今のところは』という言葉から予想出来、アイシャが策略を張り巡らす準備をしようとしているのだろう。
「落ち着け……アイシャは俺がキースに負けるの前提に動く気がする。それを覆してやろうじゃないか」
サイガ自身、副会長になるつもりはなかったが、推薦した本人が負けてもいいと言うのは癪に障り、意地でもキースに勝ちたいという気持ちになってしまった。それこそがアイシャの狙いという可能性がある事に、サイガは気付いていない。
「あれ?サイガさんじゃないですか。もしかしなくても手伝ってくれるんですよね」
ゼミ室から出ると、廊下ではシリアが大量の紙束を持ち、歩いている生徒に紙を配っており、サイガを見つけると、その半分を渡してきた。その紙には『会計にはエリス様に一票を』と書かれている。エリスファンクラブは演説だけでなく、このような紙も配るという活動をしているみたいだ。
「これはちょっと……エリスにどんな目にあわされるか……それよりも、エリスの応援ばかりでいいのか?書記に立候補したんだろ」
書記に立候補する生徒は増えていた。それなのに会長候補以外は誰も演説などしていないのだ。
「会長候補みたいな演説とかの事を言ってます?私達は演説する内容はないから、普段の行動を見てもらうしかないんです。それに……私にはファンクラブという後ろ楯があるから、他の候補者達よりも有利だと思いますよ。勿論、リーダーであるサイガさんもファンクラブは応援しますからね」
その言葉にサイガはシリアに紙束を返す事も、破り捨てる事も出来ず、シリアはサイガをその場に残して、違う場所に配りに行ってしまった。
「この紙束をどうすれば……捨てるわけにもいかないし」
キースに勝つと決めた以上は、ファンクラブの力は必須だとサイガは考え、恥ずかしながらも紙を配っていき、そうしながらも今後についても考えた。ファンクラブが協力してくれるとはいえど、キースには遠く及ばない事はサイガも承知している。キースにどう打ち勝てばいいのか。
「この紙は……貴方はやはり良いパートナーなようですね」
サイガは考えながら紙を配っていた事で、誰に渡したのかきちんと顔を見ていなかった。だが、聞き覚えのある声で、誰に渡したのかサイガも分かってしまった。




