魔王と勇者は蚊帳の外 ー9ー
「やっぱり……それも私のせい……だったら」
メジーナの攻撃をアズは防御せず、まともに受けた。サイガの武器でもなく、アズ同様の鋼鉄の爪。だが、性能の差なのか破壊するまでには至らない。
「ごめん。今はまだ殺されるわけにはいかないんだ」
アズはメジーナに対して、機械的ではなく、自分の声で返した。だが、言動とか裏腹に攻撃を受けた直後、その腕を掴んで反撃しようとしていた。それをアズの意思で止めているようにも見える。
「……想定外だ。王を破壊するのはメジーナだと思ったが……カテジナではなく、アズを選んだという事か。二人を破壊されるわけにもいくまい」
オメガはアイシャ達よりも早く、アズとメジーナの側まで移動した。
「オメガ! 私よりも貴方の罪は重い」
メジーナはオメガに激高するが、アズに腕を抑えられて何も出来ない。片腕は動くはずが、震えるだけになっている。別の意思、カトレアが止めているのか。アズも攻撃を仕掛けない。
「罪だと……違うな。これは修復、粛清の一歩目だ。それは私が望んだわけでない。世界がそれを求めた。その歯車の一つになる事を光栄に思うべきだ」
オメガの言葉は首謀者は自分ではない事を言っているのか。二人は何も出来ないままにオメガに捕まえられ、影の中に沈んでいく。機人では使えないはずの魔法が使用された。アズやメジーナも詠唱していない。オメガが城に来た理由も、メジーナを逃がすための手段を用意していたから。少し違う形になっていたが、オメガの計画だったと思うべきなのだろう。
「カテジナ、お前もその一つだったが……目覚める事はなさそうだ。勇者、魔王諸共排除させてもらう」
オメガはその言葉を残し、アズとメジーナをつれて完全に姿を消した。その言葉にはエリスが勇者である事は当然ながら、サイガが魔王だと知っているような口振りだった。
「……何で魔王の事を知ってるのよ。アンタがオメガに告げ口したわけじゃないでしょうね」
三人はオメガの逃亡を防ぐ事が出来なかった。アイシャならば、それが出来たのをしなかっただけなのか。逃亡阻止よりも王の死体を調べていた。




