魔王と勇者は蚊帳の外 ー3ー
「なるほどな……その機人の死体……実験を見つければオメガを摘発出来る。メジーナやアズの行方も分かるかもしれないか。写真も売り切れたし、行くか」
昼休みも終わり、午後の授業が始まろうとしている。授業は選択式で、エリスやサイガが受けるのは決められている。それでも優先されるのはカテジナの護衛。サイガだけでも授業を受けるべきだが、少しでも人目を避けるのであれば、授業中を選ばなければならない。
研究施設の入口、エレベーターは二ヵ所。学園長室と誰専用にもなっていない研究室の一つ。選んだのは学園長室のエレベーター。研究施設に入るための扉の鍵が開けられているからだ。学園長もそのために席をはずしている。
「研究施設は機人主体で動いている。そのため、機人のみしか入れない区画があるらしい。調べるとすれば、その区画だ」
「いや……研究室の人間は協力してくれても、そこには行けないんじゃないのか?」
ミクス国でもそうだったように、研究施設には区画がある。共同、人間と魔族、機人の三つ区画に分かれ、共同以外は許可が必要になる。会議室やカテジナのメンテナンスしていた部屋も共同区画。
「安心しろ。人間の研究者達が機人達を引き付けてくれる。それに私のファンもいるみたいでな。ここに来たのは監視カメラで把握しているはずだ」
エルナに協力したのは機人のリーダーは店長であり、憧れている機人もいる。オメガではなく、店長に協力する機人がいてもおかしくはない。機人全てが人間や魔族と敵対したいとは思っていないはずなのだ。その証拠に警報は鳴らず、共同区画の部屋では様々な音が聞こえ、実験などをする事で足止めしている。
機人区画へ入るのも機人である店長にも権限があった。これはオメガと行動する時に得たものだ。それでも区画にある全ての部屋に入る事は出来ない。
「俺って必要か? ここに来るのも店長一人なら余裕だろ。区画に入る権限もあったんだから。実験とかも何も分からないし、どうやって部屋に入るつもりなんだ?」
共同区画や人間、魔族の区画の研究、実験室では専用カードが必要とされている。他者の訪問時は扉前に認識装置が設置され、登録されれば入る事が可能になる。しかし、機人専用区画ではカードはなく、認識装置のみ。その中でオメガの研究室の場所を知っても、入るためにはオメガ自身の許可が必要になる。




