店長は過去を語る ー15ー
「出てきたか。事故じゃなく、殺されたわけだな」
事故であれば悪霊まで至らない。結界もその場に縛るためであり、意識を保たせるため。放置すれば誰彼構わず襲い始める。
「おい、こいつがお前達の恨みを晴らしてくれる。人間の味方でなく、機人の味方でもない。なんせ、復活した魔王じゃからな。そのための情報が欲しい」
サイガが魔王だと教えたのは共感させるため。人間に倒されたのであれば、相手を恨むという事。人間でなくなった以上、悪霊となれば手を貸してくれる。憎しみに支配され、悪霊となった状態で疑うという知能は残っておらず、一つの事しか考えられないのだ。
「憎い……マミルトン家の仕業だ……機人が私達を殺した……」
父親の悪霊はマミルトン家の仕業だと、カテジナを目覚めさせた事で、犬猿の仲であったカイエン家の立場がマミルトン家より上になったのが理由になる。しかも、機人が犯人だとすれば、それはオメガになる。だからこそ、マミルトン家だとアズの両親は思ったはずだ。
「その機人はオメガなのか? 目的は何だった」
「そう……オメガ……奴がいた……憎い……一番憎いのは……殺された事じゃない」
その続きの言葉は遮られた。アイシャが解除したわけでなく、サイガも何もしていない。母親も悪霊になり、姿を現していたのだが、父親を霧散させ、黒の光になる。意識が無くなり、本当の悪霊となったわけではない。
「憎い……機人が憎い……私に夫を殺させた貴方が憎い……貴方は」
「ここいらが限界じゃな。憎しみを出現させ、悪霊とした事で浄化も可能。そのための結界でもある」
霧散した父親の黒の光は白へと変わり、母親も光を放ちながら、消滅していく。憎しみを消し去っていくはずなのだが、サイガ達を睨んだままなのが印象に残った。




