店長は過去を語る ー14ー
「相手が誰であろうと気に止めておけ。手を染めるのはお前になるわけだからな」
アイシャは全てを見透かしたような台詞を吐いた。残虐や死霊が相手なら問題ない。サイガが知り合った人物。メジーナでなければ、カテジナという事になってしまうのだが。
「はぁ……メジーナの本当はそのつもりだったのか。けど、機人殺しは全くの無関係じゃないんだろ」
カテジナを救うため、倒すためなら機人殺しはどうなるのか。カテジナを殺すために他の機人で戦闘を繰り返し、破壊した。そうなると犯人はアズやメジーナになる。問題は救うというのが、どう意味しているのか。カテジナは何か罪を犯さなければ、救うとは言えない。だが、カテジナが犯罪を実行したという話は一度も出ていない。カテジナが機人殺しの犯人でも辻褄が合わなくなる。
「それを調べるためにも、エリス達はマミルトン家に行っておるんじゃろ。それならば、わし達はカイエン家に行くぞ」
アイシャはメジーナを捜すのではなく、アズの実家であるカイエン家に行く事を決めた。蝙蝠を使えばメジーナの居場所を把握出来そうなのだが、それをするつもりはないのか、出来ないのか。
「カイエン家って……アズの実家か。だが、両親も亡くなっていて、家も燃えてなくなってるはずだ。調べようもないだろ。場所も分からないし、アズがいる時に言わなかった?」
「カイエン家が昔と変わらない場所にあるのであれば問題ない。アズの両親の死、家が燃えた原因も調べる。あの方法、魔族特有の方法なら出来るはずじゃろ。それにアズを連れて行くわけにもいくまい」
「あの方法か……アイシャも使えるんだったな。確かにアズを連れていくわけにはいかないか」
アイシャとサイガは影に飲み込まれた。それは移動魔法であり、カイエン家があった場所まで瞬時に移動した。そこはアズが言っていた通り、時が経過しているのに現状のまま、無惨な状態で保存されている。この場所にはアズの両親も眠っているのだろう。
「場所は間違ってなかったようじゃ。この惨状は期待出来そうじゃな」
「こっちとしては成功して欲しいとは思わないんだが」
アイシャは家の残骸に結界を張りながら、同時に別の魔法も完成させた。結界内ではいるはずのない人間。影が人間の形をして姿を現した。
「憎い……憎い……」
それはアズの両親。憎しみなどの負の感情が残されてる場合、悪霊として呼び出せる。死霊が得意としていた魔法の一つ。悪霊となった両親の姿をアズに見せるわけにはいかない。




