店長は過去を語る ー12ー
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「何で俺だけ置いていかれないと駄目なんだ。今からでも追いかけるべきか。メジーナの家の場所も知ってるわけだし」
サイガはエリスと交信した後、研究施設から脱け出し、学園からも離れた。オメガの監視をするにしても研究施設では監視カメラが設置されるとして、逆の立場になってしまう。それにサイガを捕まえようとする可能性もあった。上に学園があるからか、その行動に移れなかったのか。
「移動手段はあるのか? 自分の足で行ったところで調べ終わってるぞ」
「だが、カテジナの過去を知るためらしい。エリスが教えてくれるわけ……っと、戻ってきたのか」
アイシャがラキアス学園の授業を終え、サイガの元に戻ってきた。街灯に座り、輸血パックをすすりながら、満足そうな顔をしている。仕事終わりのご褒美といったところだろう。
「蝙蝠で大体の状況は把握しておる。メジーナの件もな。過去が関係するのもアンドから聞いておる。お前は車を運転出来まい。移動魔法も使えない。私が使うつもりもないが」
アイシャと店長はパートナー関係。遠くからでも交信も可能。店長はアイシャの力が必要になると予想したのだろう。
「じゃが、過去は少し話してやろう。アンドからも許しを得たからな。知ってるところだけじゃが」
カテジナが元人間であり、アズ達のような関係が昔にあった事。オメガであり、カテジナを改造した一人だった事など。
「元人間か……カテジナはそれを知って、どう思ってるんだろうな。オメガが手を加えたのなら、メジーナもその可能性があるわけか。カテジナとは違う実験だとしたら……完全じゃなかったら……助けろって事だろ」
「どうじゃろうな? カテジナは自分の仲間が増えると喜ぶかもしれん。それとも自分のような存在を増やさないためにも殺すかもしれん。メジーナ本人は……どう考えるか」
アイシャは街灯から飛び降り、サイガの横に立った。サイガに近付いてくる誰かが見えた。
「それともう一人……アズがどう思うかじゃな」
アズはメジーナを捜すため街中を自分の足で走っていたのだ。メジーナ自身だけの問題ではなく、心配する誰かの事も考えなければならない。
「さ、サイガさん……メジーナを捜してくれてるんですか? けど、兵士達が多くいるのは」
「追った警備員達が殺されていたらしい。カテジナを狙ったというのもある。メジーナを捕まえるため……殺すのも厭わないかもしれない」
サイガは会議で話した内容をアズに伝えた。
「オメガはメジーナを庇わなかった……カテジナを選んだ。メジーナが作った武器を回収したのも殺すため……だったら」
アズは背中に袋を担いでおり、サイガに渡した。その中身はメジーナが作った杖、大剣だった。オメガがサイガに渡さなかった事に違和感を持ち、盗み出したのだ。
「メジーナが作った武器か」
「これを扱えるのはサイガさんだけですよね。メジーナも使いこなせなかったみたいですし。けど、オメガが持つのは危険だと思ったし、監視カメラも操作したんでバレてないはずです」
サイガは武器を持ち、魔力を流しても違和感がまるでなく、高まるのを感じ取れる。だが、ずっと持ち歩くのはサイガが盗んだ犯人だと思われる。




