店長は過去を語る ー11ー
「ここだけ改装しなかったみたいね。上とは大違い」
メイドも地下の存在を知らなかったのか、掃除はされずに埃まみれになっていた。隠された形であるが研究施設や牢獄のような場所ではなく、普通に部屋がある。機界中心の国ながらも年代物の木で造られた柱時計が置かれていたり、古い電話らしき物も置かれている。地下というよりも、年数が経った事で埋もれ、ここが本当の一階だったのだろう。玄関のような場所があり、古めいた調理場もある。
「これは……写真? 私とメジーナが二人で」
玄関付近にいくつかの写真立てが伏せられていた。その一つにカテジナとメジーナの二人が写っていたが、それはメジーナではなくカトレア。この写真を見ると本当にメジーナとカトレアは瓜二つ。二人は仲良く並んでいる。他の写真にアズィールの姿はない。家同士が犬猿の仲というのがあるからなのか。その中で一番驚くのはオメガではなく、店長とカテジナの二人の写真。カテジナは腕を組み、笑顔になっている。まるで恋人のよう。
「これって……二人は恋人同士だったんじゃないの? 店長もまんざらでもなさそうだし」
「違う。人間と機人が恋人になるわけがない」
店長はそれを否定した。パートナー関係が成立していない時代。敵対していたのもあり、二人の関係は認められなかったという事なのか。
「そう……少し思い出す事が出来ました。貴方が気にする事ではありません。この気持ちはあの頃のまま……亀裂が生まれた原因だとしても」
カトレアはアズィールとカテジナが結ばれても許していたかもしれない。それが店長の登場で一転したのだ。カテジナは店長を好きになってしまった。
「ストップ! それは昔の事でしょ。今は機人同士になってるんだから問題ないじゃない。アズィールとカトレアもいないわけだし。探索を続けるわよ。メジーナが変になったのも永遠の命関連だとしても、それに関する情報があると思うのよね。オメガだけの言葉で信じるわけないでしょ」
マミルトン家が守っていた物、メジーナに適合した物、その情報はこの家に隠されているはず。その二つのどちらかが永遠の命に関係する可能性は高い。オメガの言葉だけで騙されるわけがなく、実証があったはず。
「そういえば、カテジナはどこで目覚めたわけ? それと何でカテジナは機人化に成功したんだろ」
「どこ? アズィール家があった場所近くだったと思います。機人化が成功したのは……暖かい感じがあったからでしょうか」
「マザーシステムの破片が関係しているはずだ。機人を生み出すのはマザーシステムだからな。それを組み込むと予想したから阻止したが……暖かい感じが何か分からない。人間の感情が関係しているのか。それとも……旧マザーシステムが目覚める前兆か」




