店長は過去を語る ー1ー
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「良い勝負だったわ。これからも精進する事ね」
「あ、ありがとうございます。勇者様だとは知らず、隠密行動の邪魔をしたのに……そんな言葉を頂けるとは。それにしても流石というべきでしょうか」
「お互いに讃えるのはいいが、これから重要な話があるんだからな。いつの間にか抜け出そうと考えてるだろ」
サイガ達は学園に戻り、地下にある研究所にいた。そこはサイガとカテジナが戦闘した場所であり、今は店長の体を修理するためにこの場所を選んだ。そして、会議室にサイガとエリスはオメガと店長が来るのを待たされていた。その部屋前を守っていたのが先程の警備員だったのだが、エリスは健闘を讃え合うふりをして逃げ出そうとしていたのだ。
「だって、これこそ時間の無駄だし、堅苦しい話は苦手なのよ。カテジナやアズを抜きにするなら、私も別にいいじゃない。アンタが話を聞いてくれたらいいわけだし。それにアイツが本当の事を言うか分からないでしょ。それなら、写真を現像して売りに行くほうがいいわ」
カテジナは念のためにメンテナンスをする事になった。これは会議に参加させないためというのもあるのだろう。アズはあの時はカテジナの心配をし、メジーナを追いかける事はしなかったが、学園に戻ると捜しに街に戻ったのだ。
「嘘を見抜くためにも、店長と一緒にいて欲しいんだよ。アイシャもこの場にいないんだからな。メジーナの事も心配じゃないのか?」
「痛いところをつくわね。メジーナの事を心配しないほど非情じゃないわよ。話を聞けばいいんでしょ。聞けば」
エリスは会議室のドア前にいたのを、逃げ出さずに席に座った。それと同じタイミングにオメガと修理を終えた店長が会議室に入ってきた。修理というよりも、新しいパーツを着けたのだろう。若干だが背が高くなっている。
「逃げ出すと思っていたが……そこまで薄情でもないようだな」
オメガはエリスの心を読んだかのように、馬鹿にしたような言葉を発しながら席に座った。
会議室は教室のような席順で、オメガが教壇の場所にいる形になる。サイガとエリスは離れた場所に座り、店長はエリスの隣に座ろうとするが蹴り飛ばされ、一番前の席に座った。
「まずは先程入った情報を話そう。メジーナの追跡に失敗。警備隊は死体で発見されたそうだ。それにより、ゼフォード城から兵士を投入する案が出ている。カテジナの脅威となる者を排除するためだろうな」
オメガはメジーナに危険が迫るはずなのに、淡々と説明する。
「ちょっと待て。カテジナはメジーナが少し変だって言ってたぞ。誰かに操られてるのかもしれない。機人殺しの犯人じゃない事は、店長の説明でも分かったはずだ。それに狙われた事もあるんだ。それをちゃんと伝えたいのかよ」
「メジーナは関係者だとも言ったのだろ。逃げたのにも理由があるからだ。まだ話は続いている。質問は最後まで話を聞いてからにしろ」
現場にいた店長が何も言わない事で、サイガも口を挟むのを止めた。




