魔王と勇者はデートを企画する ー11ー
「ちょっと待ってください。この独特な魔力は……サイガさんの魔力に似てます。ですか、本人はエリスと一緒に逃げてるわけですし」
カテジナはサイガとの戦闘経験があり、魔法を受けたおかげでサイガの魔力と判別出来た。カテジナにダメージを与えるのならば、他の機人を破壊するのは容易となる。
「機人殺し……お前を破壊する事が目的であるのなら、犯人は仲間内にいる可能性が高いぞ」
サイガの魔力は特殊であり、別の誰かが持てる物ではない。この国で知るとすれば、カテジナの戦闘を知っている者しかいない。
「お前を……お前を殺せば……私は救われる……殺せるんだ」
鬼気迫るように、黒マントはカテジナに向かってくる。店長の姿が見えてないかのように。それは詠唱もなしに剣の一振りが黒の風刃を呼び起こし、遠距離攻撃で倒せると判断されたのか。
「カテジナは念のために電磁バリアを張りながら、後方へ避けろ」
カテジナだけでなく、店長も電磁バリアを使用出来、前方へ展開した。それが出来れば攻防に分担するのが有利になるはずなのだが、カテジナに攻撃を指示せず、後方へ下がらせた。
「店長……よくも!」
黒の風刃は電磁バリアを切り裂いただけでなく、上半身をも分断させた。それでも風刃は消えずに、カテジナに襲い掛かる。威力が低下し、カテジナの電磁バリアで防げたとしても、黒マントの剣が続く。風刃であの威力であるのなら、剣ならそれ以上になる。それが分かりながらも、カテジナは突撃した。怒りもあるが、店長を素早く助けるためにはその方法しかない。だが、冷静さを欠き、エリスに武器を渡した事を忘れていたのだ。
黒の風刃はカテジナの電磁バリアと加速により消滅させたが、同時にバリアも打ち消した。体の一部を犠牲にするしか守る術はないが、黒マントはその隙を見逃すわけがない。
「お前達は機人を知らなすぎだ!」
だが、黒マントも油断していた。体を半分にした事で破壊したと思い、後ろから攻撃されるとは考えていなかった。それはカテジナもそうだ。機人でありながらも、店長が倒されたと勘違いしたのだ。
「下半身だけを動かしたの。ロボットとは違う……勉強不足だったわけね」
「ちょっと待ってください。何故貴女が」
店長は下半身だけを動かし、相手を蹴り飛ばすと黒マントが剥がれた。姿を現したのはメジーナ。サイガの魔力を宿した腕、剣もサイガ専用の武器。
「何故カテジナを狙う。お前は機人殺しの犯人ではないだろ」
店長はメジーナが機人殺しの犯人ではないと判断した。それは店長を上半身と下半身の二つに分断させた時点で攻撃を止めたからだ。人間ならそれで終わりだが、機人ではそうはいかない。何人も機人を殺したのであれば、その判断が出来るはずなのだ。




