魔王と勇者はデートを企画する ー3ー
「カテジナもエリスの図々しさが移ってきてるよ。メジーナも一緒にならないのを祈るしかないな。それで……今回は何の用だ。お前だったら犯人とか見当がついてるんだろ? 」
エリス達が部屋から出ていった後、サイガは誰もいない場所に声をかけた。天井には蝙蝠が逆さまにぶら下がっており、その蝙蝠はアイシャのである事はすぐに分かった。
「そこまで万能じゃない。全てを監視する事は出来んからな。それと離れた場所じゃから、力も制限される。今は一匹が限界じゃな」
「離れた場所って……ゼフォード城かホテルにでもいるんだろ。 何か企んでるのか? 面倒が増えるからやめてくれよ」
サイガは部屋を出て、食堂に向かう。朝飯を食べるのではなく、調理場を借りるためであり、律儀にエリス達の弁当を作るためだ。蝙蝠もサイガの頭を噛み、一緒に移動する。寮生に蝙蝠の姿が見えても、目があった瞬間に記憶操作が行われ、見えない事になるのだ。
「何も企んでおらん。そんな事を考える暇がない。なんせ、今いるのはラキアス学園じゃからな」
アイシャはサイガを魔界から人間界に移動させた事もある。ゼフォード国からミクス国の移動も魔法で容易に出来る。そのために蝙蝠を一羽残しているというのもある。
「はっ? 何でラキアス学園にいるんだよ。こっちも色々あるのは知ってるだろ」
「一人二役してるからな。ミクス王はまだしも、マキナやシリアにバレるとエリスにも知られるかもしれんからな。授業をほったらかしにするわけにはいかんのじゃ」
アイシャは姉と妹という事でエリスを騙している。マキナもサイガ達と一緒に行ってるのが大人版アイシャだとは思っていないのだ。それにシリアはファンクラブである事から、敵視しているのは調査済み。ゼフォード国に行ってると勘づかれるわけにもいかないらしい。
「面倒な設定を作るからだろ。それで……ラキアス学園に行ってる事を知らせたかっただけなのか? 別行動が多いんだから、どうでもいいんだけど」
アイシャ自身、サイガの前に突然現れたりするが、サイガが会いたい時には姿を現さない事が多い。
「それも一つだったのは確かじゃ。それが出来たのもメジーナが襲われた事が関係する。オメガはメジーナのパートナーという関係から、マミルトン家に向かった。そこで一日費やす事があるらしい。わしも警戒せずに済むからな」
アイシャとオメガもメジーナが襲われた事を知っていた。オメガはメジーナというよりもマミルトン家のパートナー。メジーナを心配して向かうとは思えない。一日費やすもメジーナが怪我をした様子もなかった。
「メジーナも学園には行けんだろう。じゃが、カテジナはオメガがいないのであれば戻らずに済む。一日自由というわけじゃ。どこかに遊びに行くのもありだと思ってな。ダブルデートというのもありじゃろ」
ダブルデートとなると、メジーナが戻れないのであればアズとカテジナの一組。もう一組はサイガとエリスという事になる。
「アズとカテジナは分かるけど、何で俺とエリスが」
「何を言っておる? お前とエリス、アンドとカテジナの四人じゃろ」
アイシャは不思議な事を言った。カテジナの相手はアズではなく、店長と言うのだ。それは店長とカテジナ、二人の関係を知る場を作るためなのか。それともアズ、カテジナ、メジーナの三角関係に、店長を加えて四角関係にでもするつもりなのか。




