魔王は専用武器を、勇者は商品の作成に勤しむ ー15ー
「店長、 場所を考えないと」
店長とオメガはカテジナを探していた。エリスとアズの話を盗み聞き、もしくは情報が入ったのか、女子寮に来てもおかしくない。叫び声と女子が逃げてくる逆方向に行けば、その現場に辿り着ける。
「って……アンタ誰よ」
変質者は店長ではなく別人。エリスが会った機人は全て服を着ていたのだが、そこにいる機人は何も着ていない。人間や魔族と違って問題はないのだが、慣れてしまっているせいで女子は特に抵抗感があるのだろう。
「か、か、かて、じ、じ、じな、な」
それだけでなく呂律がちゃんと回っていない。体も統一性がなく、ファッションだとも思えない。エリスには機人なのかロボットなのかの違いも分からない。
「何……カテジナって言ってんの 本当に狙われてるわけ?」
言葉を続ければカテジナとなる。今までの機人殺しの犯人という可能性はある。だが、犯人の目星がまるでついていなかった。そんな相手が堂々と女子寮に入ってくるとも思えない。それだけでなく、変質者は周囲に危害を加えている。目立ち過ぎるのだ。
「かて、かて、じな、な」
変質者は誰がカテジナなのか判別がつかないのか、恐怖で倒れてしまった女子に襲い掛かろうとした。
「痛いわね!」
エリスは女子の盾となり、変質者の攻撃を腕で受け止めた後、頭を蹴り飛ばした。変質者の攻撃は普通の人間ならば骨は折れ、死んでいた可能性もある。
「勇者様……素敵」
庇った女子からそんな言葉が漏れると、周囲の女子達からも勇者コールが鳴り響く。
「体が固いし……上手くいかなかったわね。何かを武器がないと」
店長の頭を飛ばすように、変質者の頭を外すつもりで蹴ったのだが、離れる事はなかった。機人が気絶するのかも分かっておらず、止めるのは体の部分を切り離していくしかない。
「勇者様が武器を求めてるわ」
女子達はエリスの言葉に反応し、部屋の中に入ると様々な武器を持ってきた。ゼータ学園の学生だから武器を開発していてもおかしくない。それなら全員で変質者を叩きのめせばいいのだが、女子達は勇者の活躍を見たいのだ。だが、エリスはどの武器も手にしなかった。使い方が分からないのもあるが、銃の形などから見るからに威力が高そうであり、周囲にも危険が及ぶ可能性があるからだ。
「これを」
カテジナの声がエリスの耳に届くと、サイガとの戦闘時に使ったトンファーが手に持たされた。周囲は何もないところから武器を召喚したように見えただろう。
「アンタ……どこに」
エリスには先程のようにカテジナの姿が見えなかった。この場にいないという事。武器からも周囲を見るだけでなく、言葉を届ける事も出来るのだろう。
「あれは機人ではなく、ロボットです。部屋から武器だけを送りました。これなら周囲に被害なく、倒せるかと。私が行けば良かったのですが、これ以上騒動を大きくさせるわけにもいきませんから」




