魔王は専用武器を、勇者は商品の作成に勤しむ ー14ー
「記念写真ですね。それならメジーナも一緒にどうですか?」
「あっ! え、えっと……」
カテジナの返答に、エリスは言葉を詰まらせた。記念写真なのにサイガやアズの名前が含まれていないからではない。思い出という失言によって、商品ではなく記念写真だけで終わってしまうからだ。
「ふふっ……メジーナは男子だけでなく、女子にも人気がありますから、学園内でも売れると思いますよ。アズと何かを作って、商売する事は聞いてましたから。睡眠学習のように、私が眠っていたとしても、会話は記録されますし」
カテジナは冗談とばかりにクスリと笑いながら、エリスに説明した。しかも、メジーナを加える事によって商品レベルを上げる提案もしてきた。つまり、カテジナは一緒に写真撮影はOKした事になる。
「カテジナ……分かってるじゃない。石頭の王女様とはえらい違いね。最初会った時はいけ好かない奴だと思ったけど、気が合いそうな気がしてきたわ」
エリスはカテジナに向けて右手を挙げると、察したかのようにカテジナはハイタッチをした。エリスが感じたお堅い印象はなくなり、普通の人間と変わりがない。店長よりも人間らしく感じさせる。
「問題なのはメジーナが許可してくれるかよね。お堅いイメージだから。私が商品を売ろうとしてるのは知ってるわけだし」
今朝の行動でもエリスが金儲けに執着しているのはメジーナも分かったはず。付属品と考えるかもしれない。隠し撮りしてもメジーナ一人では意味がない。離れても同じ。エリス、カテジナ、メジーナが同じ位置にいるのが好ましい。
「それではメジーナが眠った時にでも。三人で写るだけでなく、メジーナの寝顔はレアだと思いますよ」
「神……アンタは商売の神よ。同じ部屋だから可能な事だわ。不法侵入じゃないし」
内容は店長でも考えそうな事だが、カテジナが話すと見方が変わってくる。ポイントとなるのはエリス、カテジナ本人は寝顔を見せない事。自分達の被害を最小限に抑えているのだ。盗撮になるかは別問題だとして。
「きゃあああ……変質者……機人の変質者が」
エリスとカテジナが商売の悪巧みを話し合いを続けていると、寮内から叫び声が響いてきた。その声にエリスは反応し、部屋の外に出た。助ける事が目的というよりも、機人の変質者といえば店長だとエリスは思ってしまったからだ。




