魔王は専用武器を、勇者は商品の作成に勤しむ ー12ー
「ああ~……アズもそう言ってるんだし、手伝うつもりがなかったら、部屋から出ていってくれない。護衛は延期になったんでしょ。今日からお願いしますなんて、都合が良すぎ。私が断る事ぐらい、店長も分かってるわよね。カテジナと会ってから、いつもと違う」
エリスは店長に疑いの視線を向ける事はせず、サインの種類を増やしていく。
「ハッハッハッ! 私はいつもと同じではないか。カテジナに一目惚れしたからじゃないぞ。本当はエリスに夢中……っと、オメガも話を終えたらしい。私とオメガはカテジナの捜索を優先させてもらう」
店長とオメガは犯人よりも、カテジナ捜索を優先させた。未だ目星
がついてない犯人よりも、カテジナはゼフォード国全体に知られている。手がかりは掴みやすい。オメガからの連絡があったのか、店長は部屋から出ていった。
「店長は出ていったわね。私はどうでもいいんだけど、カテジナはどこにいるわけ?」
「何を……ぼ、僕は知らないと言いましたよね」
エリスは店長の姿が見えなくなると、アズにカテジナの居場所を尋ねた。店長がカテジナに一目惚れ、カテジナも店長を気にした様子があった。人と機人の恋愛よりも、機人同士の恋愛の方がいい。アズも一瞬ではあるが体が震えたのだ。二人の関係を気にした。
「オメガの方が知ってるとは言ったけど、アンタは知らないと否定してない。それに問題なのはカテジナが行方不明になったのにも関わらず、捜しに行かない事。サイガとの戦闘で心配になって会いに行ったのに、今回は慌てる様子もないし」
「あっ……それはオメガの事を」
「信用してるわけない。カテジナが籠の中の鳥って愚痴ったんなら、逆でしょ。一緒にいる方が危険と思うでしょ。サイガと戦わせたし、戦闘に利用しようと考えててもおかしくないわよね」
エリスは勉強しないだけで、頭が悪いわけではない。色んな情報を組み合わせれば、アズの態度の違和感があるのが分かる。
「……凄いですね。エリスさんを見直しました。金の亡者とばかり。カテジナは無事です。安全な場所、メジーナの部屋にいます」
「何気に酷い事言うわね。アズが居場所を知っているのなら問題なしって……私の部屋にいるわけ! まぁ、いいわ。私が知った事で隠さなくて良くなったんだから、商品開発に集中してよね」
「……理由は聞かないんですか?」
「今じゃなくてもいいじゃないの。こっちの方が時間が限られてるんだし」
エリスはアズがカテジナを匿っているのを見抜きながら、その理由を聞かなかった。アズ、カテジナ、メジーナの三角関係。アズとカテジナの関係をよく思っていないはずのメジーナが、カテジナを匿っている。エリスはそこも気になるところなのだが、金儲けの方が重要なのだ。




