魔王は専用武器を、勇者は商品の作成に勤しむ ー10ー
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「何してんのよ。情報は商売を制するの。客は何を一番必要としてるのか調べないと駄目なのに」
エリスはアズに用意されている研究室を拠点に作戦を練っていた。エリスがやっていたのは自分のサインをどんなのにするかを書くというどうでもいい事。様々なサインを描く事でコレクターは集めるかもと思ったからだった。
「そんな事言われても……学生は自分で作ろうと思いますし、エリスさんの評判が……学園内よりは止めたほうが」
アズは作成に集中させるのではなく、学生達に欲しい品の情報を収集させていたのだ。そこから手に入れたのはエリスの魔力、血、髪の毛にまで至る。中にはエリスの見た目はいいので、デート券というのもあった。エリス自身、金になるならそれらを渡す。デウスカイザーにも魔力を提供し、給料を得ているからだ。デート券でも値段によって、ついて行く。勿論全て奢りだろうが。アズはそれを了承するエリスの性格をまだ知らないからこそ、黙っている事にした。
「外を狙えばいいわけ? 本格的な物を私が作れるとは思われないだろうし、マニアック路線を行くべきかしら。性能が悪いほうが、愛嬌があるかも……それとも性能が良くて意外性を見せるのも」
作るのはエリスではなく、アズ。店長も加われば、性能が良い商品を作れるのは間違いない。性能が悪いのはエリスが作ればいい。
「マニアックな路線を選ぶのなら、エリスの駆動式フィギュアだな。精巧にするために私が調べても……ブバ!」
アイシャにでもエリスの居場所を聞いたのか、店長はアズの研究室にノックもせずに入ってきた。その声を聞いただけでエリスは店長と判断し、側にあった鉄板を投げつけた。案の定、店長の首は飛んで行く。
「一体どこにいたのよ! 泊まっている場所にもいないし、こっちは捜してたんだからね」
昨日、店長が宿泊した場所を訪ねてみるが不在だった。捜したとエリスは言ったが、待つ事もせず寮へと帰った。
「私を捜すとは……あっ……ありがとう、少年」
アズは飛んだ店長の頭を、離れた体に引っ付けた。機人の体の仕組みを知っているのだろう。
「フィギュアは無しとして、勇者関係なしとすれば、売れそうなのは犯罪スレスレの物になるかしら。覗きが出来る装置とかね。勿論それを遮断する装置も……例えばだから、アズも真に受けないでね」
エリスはそう言うが、アズはその言葉に若干引いてしまった。サイガの苦労にも納得したような顔を見せた。
「あの……エリスさんに何か用があるんですか? 商品開発の事をワーエンド様から聞いたとか」
「違うでしょ。この人はある意味病気で、私に会いに来ただけ」
エリスと店長にとっては日常茶飯。放っといても会いに来るから、エリスも捜すのを止めたのだ。
「その通り……だといつもなら言うのだが、今回は違うぞ。用事があるは確かだがな」
登場の言葉とは別で店長にふざけた様子もなく、真面目に返答した。




