魔王は専用武器を、勇者は商品の作成に勤しむ ー6ー
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ゼータ学園留学一日目
「あの人って本当に勇者なのですか? 見本となる存在があの体たらく。評判はがた落ちです。貴方は真面目なようで、逆なのではと疑われるぐらいなんですよ」
放課後。メジーナはサイガの武器開発に携わるべく一緒に行動する事になったのだが、第一声がエリスへの不満だった。エリス様とは呼ばず、すでにあの人扱い。ラキアス学園のように、ゼータ学園でも偽勇者と思われているのかもしれない。
エリスの行動はメジーナの常識を外れており、サイガやアズも迷惑を被ってきた。
朝一。エリスは女ながらも男子寮に乗り込み、アズとサイガの部屋を探しだし、無理矢理起こされたのだ。それは商品を作るために、アズを連れて行くため。サイガには関係なく、ゆっくり眠れると思っていたはずが、寮の食事が口に合わず、料理を作らせるために起こされた。
次に学園での出来事。朝礼で勇者の紹介が行われる事になっていたのが、エリスは登場しなかったのだ。さらに授業もサボりはしなかったものの、話を聞かずに熟睡。休憩時間も学生との付き合いが面倒臭い事から、捕まらないように逃げ出す始末。ラキアス学園のために偵察、掌握するための情報を手にいれようとする素振りもなし。商品開発にのみ全力を出すつもりなのだ。それも窓から少し盗み見をサイガはしてみたのだが、手を動かしているのはアズだけで、エリスは口を出してるだけ。店長の姿はなかった。店長ならエリスの側にいるのを優先すると思ったが、カテジナと会ってからなのか、いつもと違っている。
「こっちの学園でもあんな感じだから。勇者だって事は間違いないんだけどな……って、何で物騒な物を俺に向けるんだ?」
メジーナはエリスの世話役であり、生徒会長でもある事から、学園長や学生に小言を言われたのだろう。その怒りをエリスにぶつけるわけにもいかず、サイガにぶつけるつもりで大きな針を持ったのではないかと思ってしまう。
「問題ありません。それでは服を脱いでくれますか? これは必要事項です。先に言っておきますが、下は必要ありませんから」
サイガが上半身よりも先に下半身に手をかけた事で、メジーナは注意した。サイガにしては場を和ますつもりが、冷たい視線を向けられた。
「……冗談です。それにしてもゼータ学園は生徒会だけじゃなく、制服が至急されてるんだな」
ラキアス学園は服装は自由で、唯一生徒会に制服が支給されていた。それがゼータ学園での服装は共通している。
「制服はそうですが、この白衣は違います。上位の成績を持つ者だけが持つ事が出来るので」
メジーナは緑色の学生服の上に白衣を着ていた。メジーナだけでなく、エリスの商品開発をしているアズも白衣を着ていた。上位の成績だからこそ、自分の研究だけでなく、他の協力する余裕があるのだろう。




