魔王は専用武器を、勇者は商品の作成に勤しむ ー5ー
「おい……一体どういうつもりだ。俺専用の武器を開発させようとするなんて。無の魔法は内緒にしておくんじゃなかったのか?」
アイシャは輸血パックがなかった事にガッカリし、蝙蝠からトマトジュースを受け取った。そして、ストローを突き刺し、サイガの言葉を無視して飲み始めた。
「ふぅ……トマトジュースでは物足りないのぅ。どこかで献血を求めないと駄目じゃな」
「話を」
サイガの血の気を下げるように、再び蝙蝠がサイガの頭を噛み、血を吸い上げていく。それはアイシャに送るためではなく、蝙蝠も不味いような顔を見せている。
「聞いておる。お前の武器も今後必要になると思ったんじゃ。機界と人間界の知識を使えば強力な物が出来るやもしれん。残虐や死霊も蘇った。他も例外ではあるまい。お前を恨んでるじゃろうしな」
「……残虐は倒しても、死霊は生きてるんだよな。あいつらだって……エリスと一緒にいる時点で駄目か。それだけじゃないよな。武器開発をして、もう一度カテジナと戦わせようとしてないか」
アズやメジーナに武器開発を協力させた事のは、カテジナの防御を突破させるためとも思える。カテジナを守るためにゼフォード国に来たのであり、倒すためではない。
「……気になってたんだ。カテジナは二人を知らない。お前と店長もカテジナを知らないって言ってたが、反応からして俺には逆な気がした。エルナの冒険を監修したのはお前だろ? 機界編は店長も手伝ってるはずだ。そのアニメの中にアズのご先祖がいる。アズがカテジナを目覚めさせた事にも関係があるはずだ」
「おぉ! いつになく頭が冴えてるのではないか」
アイシャはサイガの考えに拍手した。それは正解を意味しているのか。
「だが……カテジナの名は出ていなかったはずじゃぞ。それはどう答える?」
カテジナは機界編にはなかった。名前が知られてないのはマザーシステム。機界編のボスという可能性。敵になり得る存在。サイガの武器開発の理由の一つとも考えられる。
「本人は記憶が無くなっている。けど、人間界で眠っていたのにも関わらず、機界の知識に詳しい。エルナが倒したマザーシステムなのか?」
「ハズレじゃな。間違えた者には退場してもらう。答えは……わしが言える事ではないんでな。それと、カテジナともう一度戦わせるつもりは、わしにはないよ」
話は終わりだとばかりに、サイガの足元に影が広がる。移動魔法により、サイガを寮へと飛ばしたのだった。




