魔王は専用武器を、勇者は商品の作成に勤しむ ー2ー
「世話なんて有難い迷惑。分刻みのスケジュールを見せられて、私の自由なんて全くないのよ。食事や入浴は認めるとしても、トイレの時間まではありえない。だから、逃げ出してきたの。宿泊する場所を替えるか、メジーナをどうにかするしかないわけよ。カテジナに相談するのも、警護も三日後からに延期するってアイシャから聞かされたし。アンタのせいで心に傷でもついたんじゃないの」
エリスはメジーナの行動に対して溜め息を吐いた。アイシャに相談するのは借りを作りたくないのだろう。下手すれば日給が消えかねない。それにしても、気になるのはカテジナの警護が三日後に延長した事。サイガの攻撃にダメージを受けた様子はなかった。スプラッシュも透明化を無効にするだけに終わった。そうでなければ機人は雨の中を行動出来ない事になるが、店長は雨の日でも傘なしで動いている。あるとすれば胸に当てた魔法。時間の経過によって効いたのか、もしくは本当に胸を揉んだためなのか。
「サイガさん、大丈夫ですか!」
「エリス様! やっぱりここにいたんですね。スケジュールの組み直しをしなければならなくなりました。カテジナ様の警護が延長されたのであれば」
アイシャにサイガの居場所を聞いたのか、アズだけでなくメジーナも保健室に駆けつけて来た。サイガがパートナーである事から心配するとメジーナは考えたのだろう。
「窓はサイガが弁償するから!」
エリスはメジーナの姿を見た瞬間、窓ガラスを破り、保健室から逃げ出した。一階だから良かったものの、何階だろうと同じ行動をしたはず。その弁償もサイガに託すのは流石である。
「そんな慌てて逃げなくても……少しは和らげるつもりでしたのに」
メジーナもスケジュールの厳しさに気付き、カテジナの警護も延期になった事から和らげるつもりが、エリスが逃げ続ける事で空いた時間を費やしていく。
「それと貴方にも用事があるんです。ワーエンド様から話は聞きました」
「カテジナと戦ったんですね。無事にいられたのが凄いですよ。流石、勇者様のパートナー」
アイシャはアズとメジーナにはカテジナとの戦闘を伝えたようだった。アズは怒りそうだと思ったが、サイガの心配をした。二人はカテジナの強さを知っているのだろう。
「胸に触ったのは……勝つためだと判断します。カテジナにダメージを与えたのは貴方が初めてでしたし。そのためにメンテナンスと、魔法の分析をするらしいです」
今までにカテジナは誰かと戦闘した事があり、無傷で終わらせた。それは光学迷彩だけでなく、電磁バリア。装甲の強さもある。それなのにサイガはダメージを与えた。闇魔法を使ったが、サイガの魔力の本質は無属性。それが起因している可能性もある。
「それで……アズは俺を心配したからで……メジーナが俺に何の用事があるんだ? 俺の体を調べさせてくれとかじゃ」
「その通りです」




