兵器対魔法 機械少女対魔王 ー10ー
(駄目だ。全く勝てる気がしません。ギブアップ……いや、時間が過ぎててもおかしくないはず)
サイガは時計を持っておらず、時間の経過が分からない。今の攻防で五分ぐらいは経過しているはず。サイガの魔力ではカテジナに傷一つ付ける事が出来ない。攻撃が通じないのであれば、一方的な展開になってしまう。アイシャの言う事を無視して無の魔法を使っても同じ。無の魔法も様々な用途はあるが、サイガが使えるのは魔力を吸収し、自分の力に変化。もしくは自分の魔力を他に放出。それが機人に有効かは分からないのだ。魔力と機人に流れる力、電力などは似た力であるが、機人が魔法を使えるとは授業では習わなかった。
(残り五分……というのは嘘で、後一分程じゃな。ギブアップせずとも勝つ方法は残っておる。一つはお前が鈍感じゃから気付かぬだけじゃ。それにあの時期、攻撃が通じなかった相手とは何度も戦い、勝ってきたではないのか?)
(あの時期……って、状況が全然違う。多勢に無勢だし、連携とか出来たから。今は俺一人だし)
サイガはアイシャの『あの時期』という言葉に反応してしまい、カテジナを倒す方法のヒントが先程までの戦闘にあった事を自体、頭の隅に置いてしまった。
「何やら、まだ余裕がありそうですね。威力だけが戦闘に影響するとは限らない……透明化を無効にしたように色々と考えてくれそうですね」
カテジナはサイガが苦痛に顔を歪めたり、攻撃が通じなかった事で慌てるなどするかと予想したが、アイシャとのやり取りのせいで余力があると思わせるような顔をサイガはしてしまったのだ。
「なっ……違うぞ! こっちは手も足も出ない。そんなに頭がいいわけじゃ」
カテジナは胸が見えた事が急に恥ずかしくなったのか、誰かを抱き締めるように両腕を絡ませた。それは攻撃手段であり、背中から無数の光が飛び散るのが見えたのだが、その後はサイガの目に映らなくなった。そして、四方八方からサイガに向けて鉄の弾が撒き散らしていく。発射台は光学迷彩が搭載されているが、鉄弾までには至っていない。だが、サイガには避ける手段を考える時間もなく、体全体に命中した。これがレーザー等であれば即死は免れなかっただろう。
サイガはその攻撃に意識を失った。だが、その直前にカテジナのある行動に違和感を覚えた。カテジナが放った鉄弾の全てがサイガに命中はしなかった。サイガが倒れた事で、いくつかは天井や壁に跳ね返ったりした。そんな中、カテジナは鉄弾を避けたのだ。一定距離があったのにも関わらず電磁バリアは発生せず、尚且つサイガの魔法も効かなかった体を持っているはずなのに。




