兵器対魔法 機械少女対魔王 ー1ー
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「はぁ……何だよ。食堂にあるのは食材だけって。機械が自動で料理するんじゃなかったのかよ」
サイガはアズに飛空艇内の食堂に対しての愚痴をこぼしていた。今はゼフォード国に到着し、ゼータ学園に向かう車にエリス、アズ、運転手の四人で乗っている。カテジナとアイシャ、店長は王に挨拶するために城へ向かった。アイシャは大人版になるため、エリスと離れたほうが都合がいいのだ。それにサイガやエリスとは違い、宿泊するのは寮ではなく、別の場所が用意されている。それでも店長がアイシャについて行くとはサイガだけでなく、エリスも信じられなかった。アイシャに連れていかれたのではなく、率先したからだ。到着した飛行場に偉そうな機人が待っていたのだが、店長の事を名前で呼んでいたが関係しているのだろう。
「飯当番はアンタなんだから。アズを責めるのは間違いよ。それと勇者だからって、サイガのように普通に接してよね。こっちの方が気まずくなるから」
「す、すみません。ど、どうにか慣れていきますから。それと食堂に関しても。今回は機人のみの搭乗でしたので、食材はあっても調理の人を乗せてなかったんです」
アズはエリスと一緒に行動する事で再び緊張した状態に戻っていた。サイガの愚痴は食堂でエリスやアイシャの料理を作らされた事だ。二人の料理センスは壊滅的であり、サイガがするしかなかったのだ。
「いや……アズを責める気はなかったんだが……それにしても想像していたのと街のイメージが違うな。もっと高度な技術で発展された感じだと思ってたんだけど」
街を歩いているのは人間と機人。魔界の者達の姿は圧倒的に少ない。機人も店長のような人型が多いのだが換装する事で、人間でいう服を着替えるようにオシャレとして扱っているように見えてくる。さらに人間もそう。回復魔法も万能ではなく、この大陸では最先端まではいかない。再生出来ない体の一部を機械で補っている人間が多数存在している。それでも街並みはアニメで見た機界のような物ではなく、自然が残された状態で作られている感じがある。
「それは区間が分かれてますから。研究区や機人の居住区、学園の周囲は凄いですよ。ここはまだ人が住みやすいよう意識されてる場所ですから」
「そうなんだ……それにしても人よりも機人の方が凄いわね。人のように服を着るのはよく見るけど、魔獣でもないのに尻尾のような物をつけたり、胸のところに二つの扇風機のような羽根をつけたり。機人に男と女の性別があるのかしら。 店長を見た感じあると思うんだけど、体を付け替えれるなら、男女が選ぶ事が出来ていいかもしれないわね。そこのところ二人はどう思う?」
エリスはいきなり変な事を言い出し、サイガとアズは返答に困った。エリスに男になりたい願望でもあるのか。
「あっ! 言っておくけど、私が男になりたいと思ってるわけじゃないから。私を憧れのように見てくる相手に、男になったらどうかとは別に考えたわけじゃないから」
「いや……その方がかえって女子にモテるだけだと思うぞ。男には敵視されて、状況に何も変わりがない気がする」
サイガはそれに触れなくてもいいのに、エリスの言葉に返答してしまった。
「な、何言ってるのよ。そんな事考えてないし……人の心でも読んだっていうの!」
後部座席に座るエリスはサイガの頭を叩き、それを助手席に座るアズはクスクスと笑った。
「何かお似合いのようで羨ましいです。僕もそういう関係に」
「誰がコイツとお似合いですって……っと、僕もそういう関係にって、相手は」
エリスはアズの言葉を否定しようとしたが、続きの言葉が恋愛関係だと予想し、そっちに食いついた。流れからするとアズが想っている相手はカテジナだとエリスだけでなく、サイガも分かった。
「学園内に着きましたよ。まずは寮に案内して荷物を置きましょう。それが終わったら学長室に行きます」
話をはぐらかすかのように、ゼータ学園に車が到着した。そこには一人の女生徒がエリス達を待っていた。




