魔王と勇者が交換留学生に選ばれた件 ー6ー
「はっ? 留学どうこうは別として、タイマンも出来ずに数で対抗しようとしてるそっちが恐れてとか言う意味が分からないんだけど。それに機人って状況把握がきちんと出来ないのね」
エリスはやれやれと両手を上げて、相手を馬鹿にするような態度をとった。
「ほぅ……その態度は戦闘開始と受け取ってもいいのだな」
機人の一人が右手を挙げると同時にロボット達が戦闘態勢に入った。それを降り下ろしたら戦闘開始の合図となるのだろう。それと同時に爆発音が連続で鳴り響いた。
「だから、状況把握が出来てないと言ったのよ。機界中心の大陸だから魔法に無知なわけ? それとも私だけ注意しとけばいいとでも思ったのかしら」
合図と同時に鳴った爆発音はロボット達の攻撃ではなく、ロボット自体が爆発した音。飛空艇から飛び出した時、すでにアイシャが魔法を付着させていたのだ。
「アンタ等の部隊は勇者ではなく、その他に負けるほど弱いんじゃな。おや、どうした? 先程までは強気な態度はだったじゃろ。三人だけでも戦おうと思わんのか」
アイシャは機人達を罵倒した。勇者の力を知るために放ったロボット達が、何も出来ないままに破壊された。数に恐れをなしたのかと言ったのが恥ずかしいぐらいだ。
「ひ、卑怯ではないか! 戦闘が開始される以前に仕掛けていたとは。勇者とは正々堂々と戦うのではないのか」
「勇者といっても勝手に決められただけだし。何にしても勝てばいいのよ。アンタ達も数で攻めようとした時点で卑怯だから。ほら、攻めて来なさいよ。手を出されたら、こっちも反撃させてもらうけど」
エリスは堂々と勝利のためなら何でもいいみたいな事を言った。こんな事を言えるなら、サイガではなくエリスが魔王を名乗ってもいいような気がする。
機人達はエリスの言葉に一歩後退した。人のように恐怖を感じたのかもしれない。その一歩が話の中心になっていた機人以外の体が爆発して、頭部だけが残った。店長のように頭部だけになっても、機人は死んだ事にはならない。
「エリスは手を出さなくとも、わしが攻撃しないとは言っておかんからな」
機人の体を爆発させたのはアイシャ。エリスが攻撃しなければ大丈夫だと思わせておきながら、すでにアイシャが魔法を放っていたのだ。エリスとアイシャが協力すれば、口だけでなく力でも鬼に金棒。サイガな存在がなくても、二人だけで世界征服を簡単に出来そうだ。
「おいおい……あっちが悪党みたいな感じだったのに、一瞬にして逆転してしまったじゃないか。今から留学しようとしてるのに、居心地が悪くなるのは嫌なんだけど」
あちらが力を示せて言ってきたものの、こちらの態度はあまりにも悪い。勇者だからって優遇される事はこれでなくなってしまっただろう。
「それなら力という恐怖で居心地を良くすればいいのよ。私達にはそれだけの力がある。アイシャもあんな力があるんだし、流石SS学の先生って事はあるわね」
魔王であるサイガが思わないと駄目な事を、勇者であるエリスが口にしてしまった。ゼフォード国に留学するはずが、征服するという目的に変わってしまう勢いになってきている。




