魔王と勇者が交換留学生に選ばれた件 ー5ー
飛空艇は空中で留まり、小型艇が排出されて、サイガ達がいる小島に着陸した。
「お前達が勇者御一行……貴様が勇者エリスだな」
その小型艇から出てきたのは機人の三人。服装は学生というよりも兵隊。何より偉そうな態度が目立つ。
「わし達よりも遅く来たくせに何様のつもりじゃ。それに勇者御一行というのも癇に障る。来る者達の情報ぐらい把握しろ」
「小娘は黙っていろ。我等が必要とするのは勇者のみ。お前達は単なるオマケに過ぎないのだから」
飛空艇の登場だけでなく、機人達の言葉にアイシャの瞳が金から赤へと変色した。これは確実に怒っている証拠。子供の姿をしているが、あちらにはアイシャの情報は届いているはず。自分の事が知られてない事も原因の一つかもしれない。
「落ち着くのだ。機人には人の、魔族の心を察する事が出来ないのだ」
「何でそれをお主が言うんじゃ!」
店長はアイシャの怒りを察して、言葉を掛けた。それは機人に心が分かるという証拠。アイシャは馬鹿さ加減に店長にツッコミを入れた事で、瞳の色が元に戻った。その代わりに店長の頭はどこかへ飛んで行き、離された体が追い掛けていくのがシュールにも見える。
「あの機人は一体何なのだ? 機人の面汚しだな」
店長は人間界と機界との関係を勇者エルナと修復した一人であるはずなのに、誰にも知られた様子がない。マキナやシリアもそうだった。店長はその事を隠しているのかもしれない。
「……アンタに店長を馬鹿にする筋合いはないんだけど」
エリスは小さな声ながらも呟いたのを、サイガは聞いてしまった。エリス自身やアイシャが店長を馬鹿にしたり、弄ぶのはいいが、別の誰かでは許せないのだろう。
「ああ~……アンタ達は俺達を迎えに来たんだろ? それなのに小さな飛空艇では無理だと思うんだけど」
機人達が乗ってきた小型艇は四人が乗るのが限界で、全員乗るのであれば何回か往復しなければならない。もしくはエリスだけを連れて行くつもりなのか。
「それは勇者の……御一行の力を試させてもらうためだ。故にこの場所を選び、飛空艇も空で待機させているのだ。勇者もそれで構わないな。この人形達は無人機だから安心しろ」
機人が指を鳴らすのを合図に飛空艇から無数のロボット達が島へ降りてきた。力を示さなければならないのは、ゼフォード国で何かが起きてるのは確かという事だ。
「それで構わないって……嫌に決まってるでしょ。面倒……じゃなくて、無闇に力を使うのは勇者としては駄目なのよ」
エリスは雰囲気を察してYESなんて言わず、NOと本心を相手に伝える事が出来る。嘘があるとすれば勇者の立場とか関係なく、面倒と本音を言いそうになってはいたのだが。
「この数に恐れをなしたか。我等を含めて二十。何も出来ないままに終わってしまう。あちらはただの留学させるために遣わせたわけだな」




