勇者は魔王と組むことを決めました ー8ー
「却下よ、却下!満場一致だろうと、私は認めないわ。サイガも何で反対しなかったのよ。私が嫌なのは知ってたわよね。一体誰がそんな提案なんかしたわけ。誰かが言わないと、そんな事にならないはず」
エリスは怒りをぶつけるようにサイガの首を絞めながら、シリアに答えを求めた。サイガは喋ろうにも息が出来ず、意識を失いそうになっている。
「それはアイシャ先生ですかね。優秀な人材を生徒会に入れるべきだと校長に言ってくれたみたいです。それに成立してしまったんで、辞める事は出来ませんよ。それをすると学園を辞めさせられます」
「またアイツなの……アンタの師匠は一体何様なのよ。私に恨みでもあるわけ! 」
サイガはエリスの肩をタップすると、地面に叩きつけた。
「ゴホッ……ゴホッ……そんなの俺が知るわけがないだろ。アイツは頭がおかしいんだ……痛っ」
サイガがアイシャを馬鹿にするような言葉を言うと、どこからかレンガがサイガの頭の上に落ちてきた。よく見ると、蝙蝠が離れていくのが見える。アイシャはサイガ達を蝙蝠で監視するのを続けているのだ。
「それでも魔……っと……いいわ。戻っても城には入れてもらえないだろうし、明日にでも文句を言ってやるわ。私のゼミを受け持つのはアイシャだったはずだから」
エリスは確実にアイシャを敵視するようになっているのは明らかだった。そうなると世界征服のためにエリスを仲間に入れるのは不可能になる。アイシャの命令を聞くわけがなく、下手をすればエリスが敵になり、魔王対勇者の戦いになってしまう。どちらが勝つかたなるとエリスに軍配が上がるだろう。
「……それはどうだったかな? 」
SS学のゼミの担当はアイシャで間違いない。それなのに、アイシャはサイガにとぼけるように言ってきたのだ。そんな事をしてもゼミに出席すれば分かる事なのだが、どうやら秘策があるらしいのだ。
「そうでした! ゼミで思い出したんですけど、SS学のゼミの先生が学園に来るように言ってくれと頼まれてたんですよ」
「はっ? だって、アイツは城にいたんだから、シリアに頼めるわけないじゃない。闇魔法で移動したにしても……時間が勿体ないし、行ってやるわよ。サイガ、アンタも来なさいよ。聞きたい事があるんだから」
闇の移動魔法を使えば、アイシャは学園にある部屋まで移動出来るだろう。だが、シリアはSS学のゼミの先生とだけ言い、アイシャの名前は出していなかった。




