勇者は魔王と組むことを決めました ー7ー
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「ああ~ムカつく! 私が言い負かされるなんて。次からは絶対にミクス王の頼みなんて聞かないんだから。それにアイシャって名前の魔族よ。アンタの師匠か何か知らないけど、頭にくるわ。弱味とか知らないわけ?」
サイガとエリスは用が済んだという事で、城から追い出されてしまった。変に長居させるとエリスが暴走するのではないかとミクス王が懸念したからだ。
「はぁ……それは俺が知りたいぐらいだ。そうすれば、アイツの思惑通りに扱われずに済むわけだからな」
「使えない奴ね……タダ働きもいいところじゃないのよ。またバイトに明け暮れるしかないわね。生徒会選挙も中止になったわけだし、今度は推薦なんてしないでよ!」
サイガとエリスは溜め息を吐きながらも帰路につき、その中にマキナの姿はなかった。エリスが目を覚ますまではサイガの済むマンションにいたが、暴走化事件は解決したという事で城に戻る形となってしまったのだ。
「……その事なんだが……」
サイガは言い淀むように続きの言葉を述べようとすると、前方からシリアがこちらに手を振りながら、帽子に乗って近付いてきた。
「エリス様、目を覚ましたんですね。サイガさんも教えてくださいよ。マンションを訪ねたら、城に行くのを見た人がいたから、ここまで来れたんですよ」
エリスの事を一番心配していたのはシリアかもしれない。伊達にファンクラブ設立者というわけではないのだ。同等なのは店長ぐらいかもしれない。
「それで……城まで追いかけてきたわけだけど、私に何か用があるわけ?心配してくれたのは嬉しいんだけど、優しい言葉をかけてあげるほど、気持ちに余裕がないのよ」
シリアはエリスの姿を見て笑顔になっているのだが、エリスはアイシャのやり取りによって、苛立ちを隠せないでいた。
「何かあったんですか? それでも、そんな気持ちを吹き飛ばす事が出来る物を持ってきたんですよ。勿論、サイガさんの分もありますよ」
「ちょっと待て……俺の分もあるという事は」
シリアは乗っていた帽子の中をゴソゴソと漁り、サイガとエリスに服を渡してきた。
「……何よ……これって」
エリスはシリアから手渡された服を広げてみると、硬直してしまった。
「勿論、生徒会専用の制服ですよ」
「……生徒会選挙は中止になったのよね。それに結果は月末なんじゃなかったの」
「あれ? サイガさんから何も聞いてないんですか。私達の活躍はラキアス学園全体にも知られて、四人全員が生徒会役員になるのが、満場一致で決まったんです。マキナ様も会長に変更したので、エリス様と会計で争う事もなくなりましたから。これから忙しくなりますよ」
シリアの言葉に、エリスはサイガを睨み付けた。サイガが言い淀み、申し訳ないような顔をしたのは、エリスが生徒会に選ばれた事を知っていたから。報酬を貰えないだけでなく、生徒会に選ばれたとなると、バイトも簡単に出来なくなってしまうからだ。




