勇者は魔王と組むことを決めました ー5ー
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四月二十一日 無
「ふぁ……よく寝た。どういうわけか急激にお腹が空いてるわね。そうだ……久し振りに魔法を使ったから」
エリスは五日間眠りについていたのに気付かず、自分の部屋を出た。
「やっと目を覚ましたようですね。大量の魔力を消費したからといっても、もう二十一日です。寝るにもほどがありますよ」
マキナはエリスが起きてきた事に気付き、声を掛けた。今はサイガとマキナが朝食を食べており、サイガはエリスが起きてきた事で、エリスの分の準備を始めた。
「そんなに日にちが経ってたの!バイトの時間をどれだけ無駄に……って、報酬が貰えるんだったら、それぐらいは大目にみるか」
エリスは上座にある、いつもの場所に座り、サイガがご飯と味噌汁、目玉焼きを置くと何も不思議には思わずに食べ始めた。
「って、サイガがいる!無事だったわけね。何も言ってこないから、逆にびっくりしたわよ。という事は残虐を倒したって事よね」
そして、エリスはご飯を食べた事でようやくサイガがいる事に気付いた。
「それなら、何でマキナがまだ家に残ってるのよ。死霊と残虐を倒したのなら、事件は終わったのよね」
マキナがサイガの家に滞在する期間は事件が解決するまで。死霊と残虐を倒した現在、マキナがサイガの家にいる理由はない。
「貴女が目覚めるまではとサイガにはお父様やサイガには許可を取っています。それに城まで連れていく役目もありますから」
「それだったら仕方ないわね。早めに報酬を手にしないと……だからって、サイガの家から出ていく事はしないから」
「ああ……そう言う事になるとは思っているからな」
エリスは報酬を受け取る事が出来る事にテンションが高くなっていくのに対して、サイガとマキナはそうではなかった。死闘を制した事に喜びもせず、朝食を食べながらの会話もマキナは注意する事もしなかった。二人はエリスに申し訳なさそうな顔を向けるだけであり、それぞれに違った理由があった。
それは城に行き、ミクス王の言葉によって、マキナが申し訳ない顔をした理由が分かるのだった。
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「勇者エリス、この度の事件を解決に導いた事に対して、誠にご苦労様であった。我が娘マキナ、アイシャリウスの弟子サイガも同様に礼を言う」
以前と同様にエリスとサイガは王座の間に立っていた。違いがあるとすれば、ミクス王の隣にアイシャが立っているだけでなく、マキナも立っている事。それだけでなく、歓迎されている感がある事だろう。
「そんな言葉よりも、物を早く見せてよ。宝箱とか用意されてるように見えないんだけど、出し惜しみしてるわけ?それとも土地を用意してるとか」
事件を解決した事に報酬が出るはずなのだが、宝箱が用意されていないだけでなく、豪勢な料理などが準備されている様子もない。
「その事だが……報酬はすでに支払われている」
ミクス王の言葉に、サイガが受け取ったのではないかとエリスは睨み付けるが、弱々しく首を振って、サイガは否定した。
「一体どういう事よ!サイガも貰ってないのなら一体誰に渡したってのよ。私にある借金を無くしてくれたわけ」
それを確認するために聖剣を呼び出してみるも、何も起きないのは借金が返済されていない事を意味する。
「……そのようなものだな。お前は事件を解決はしたが、二人は一度死霊と残虐を逃がし、あの事態までに発展させた。その事で街全体に被害があり、その大元は勇者が操った機体だという話だ。その被害額をを払ったまでだ」
エリスは街を救ったはいいが、家や店を壊された者達にとっては勇者も加害者に過ぎず、支払いを要求してきたらしい。街の平和のための犠牲だとは思わないのだ。




