勇者は魔王と組むことを決めました ー1ー
★
「エリスが死霊と戦闘に……倒すまで時間を稼ぐなんて真似出来るか!俺達がエリス達を助けるんだよ」
サイガが持つ剣の刃を漆黒の闇が飲み込み、柄だけが残った。それは魔術戦闘で使った漆黒の魔法刃を生み出すためではなく、サイガの腕から血管が浮か上がり、柄から血が溢れ出すと、それが刃と化していく。
「お得意の無属性の魔法の一種か。その一撃で魔力を吸収して、自分の力に変換するつもりなんだろうが、無駄な事だ。お前が吸収するのは俺様のではなく、魂に残った僅な魔力に過ぎない」
ガイエルはサイガの無属性の魔法が魔力を吸収するものだと知っており、これに関しては反射するのは不可能。ガイエルとっては攻撃というよりも回復魔法にあたるからだ。それ故に対策は講じてある。
魂をサイガに吸収させようというのだ。
「そして、その変換した力をそのまま返してやろう。それとも魂を削るためか?そうなると、お前も俺様達と同類だ。魂を昇天させるのではなく、消滅させるんだからな」
サイガはその言葉を無視し、ガイエルに向けて何度もその剣を振るうが、ガイエルは無傷のまま。
「何も起きないぞ。自身の血を媒体にした刃を使い、俺様の血を使わせようとしたのか?それも無駄だぞ。血を流すのはキースの体であり、俺様の魂には届かない……ぞ」
しかし、ガイエルは動きを止めただけでなく、体の穴が防がれていく。サイガの斬撃は魂を吸収するでもなく、消滅させたわけでもない。ガイエルの反射も発動されていない。
「何が起きた……お前が何かしたのか!」
ガイエルはアイシャを見た。サイガは『俺達』と言っていたのを思い出した。この場所にいるのはサイガを省けばアイシャだけとなる。
「……馬鹿か。サイガの力を全て把握しておらんようだな。お前は墓穴を掘ったんだよ」
ガイエルの体から無数の魔力が溢れ出したかと思えば、ガイエル自身の魔力が極端に低下していく。サイガの血の刃は魔力を吸収するためではなく、その逆。自らの魔力を注入するための刃。微弱な魂に宿った魔力を強める事によって意志を強める事によって、ガイエルの体を逆に縛っていく。
「……言ったはずだ。俺達が助ける……それはアイシャの事じゃない。死んでいった魂に……キースの魂がマキナ達を救うんだよ!」
サイガの一撃により、聖骸布がガイエルの体に巻き付いた。それはガイエルの体ではなくなり、人間界に続く柱の中心となっていたキースの魂が元の体に戻った事を意味し、アンデッド達は次々と消滅し出した。




