魔王復活にバイト中の勇者 ー10ー
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サイガが魔王城に戻ると、アイシャの姿はなかった。目覚めたばかりなのにトイレを移動装置だと騙されたり、エリスと契約させられたりと体を休ませる事が出来なかった。体だけでなく、心も休ませるためにもサイガは城から出て、少し歩いた場所にある木造の小屋に向かった。
その小屋は勇者エルナが魔王城に入る前に休んだ場所だとアニメで放送されたのだが、実際にはサイガが住んでいる場所だった。魔王城はアイシャに無理矢理造らされただけで、たまに行くぐらいなものだった。
サイガが小屋に入ってみると、何百年も経っているのに何も壊れておらず、誰かに荒らされた様子もなく、昔のままだった。違うところがあるとすれば、テーブルの上に一通の手紙と何か分からない物体が皿の上に置かれていた。
サイガは手紙を開けてみると、案の定アイシャからだった。サイガがここで休む事もアイシャは読んでいたのだ。
『人間界で住む場所は手配しておいたし、場所も書いておく。ラキアス学園の転入届けも出しておいた。二日後の四月二日、高等部二年として新学期から入るようになっている。来なければどうなるか分かっているな。それでは学園で会おう。追伸、晩飯は私の手作りだ。残すなよ』
皿にの上に置いてあった物体はアイシャの手作り料理らしい。サイガは渋々それを口にするが、スライムなような食感と、腹の中に入れても動いているような感覚に陥って、気持ち悪くて仕方がなかった。
手紙には紙がまだ三枚あり、パスポートとパートナー証明者、それに契約した時に装備された腕輪の説明書だった。
腕輪は契約した証拠だけでなく、様々な機能が備わっている。一つは別世界でもパートナーと連絡を取る事が出来るのと、同じ世界にいるのであれば、魔力を消費する事によって、相手をその場に召喚する事が可能となる。この二つが仮契約でも使える機能であり、本契約の機能については書かれていなかった。
その事を証明するかのように、サイガの腕輪が光を放ち、空中に文字が浮かび上がる。それはエリスから連絡が来た事を報せるもので、それに出るかYESorNoと表示された。
サイガはNoと選ぶと後々面倒な事になると思い、YESを選択した。




