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第7回小説家になろうラジオ大賞byごはん

彼氏とイチャイチャしたいのに、ゲーム内拠点の合い言葉が思い出せない。




 VRゲームの普及により、気軽な、おうちデートならぬ拠点きょてんデートを楽しむカップルが急増していた。





「──オムライス……ミケランジェロ……あぁ〜。もお!」


「あははははっ! 腹痛い、腹痛いっ、なんだよ唐突とうとつなミケランジェロって。投げやりすぎだろっ」



 玄関前へいつくばり、床をこぶしでバシバシと叩いて腹筋を崩壊させている彼氏に、私は涙目を向けた。


 こえ認証(にんしょう)の合い言葉にしたのが間違いだった。拠点に入れない。


 特にここ数ヶ月は仕事がめっちゃ忙しかった。

 

 ろくに使わないなら維持費もかかるし、私の方の拠点は一度解体しようと彼氏から提案をうけた。実質のゲーム内同棲(どうせい)だ。


 でも、解体するなら1回中に入って設定をイジる必要がある。



「せっっかく久しぶりに会えたのにー!」


「本当にな。はぁー……笑った。まさかガチで忘れるとは」


「ねぇ、わかってるなら教えてよ」



 合い言葉は日付けにしたと言う彼氏に、私は迷わず付き合った記念日の、今日の日付けを口にした。



「12月2日!」


「あのなぁ──まぁ、いいや。ちなみに俺の誕生日でもないからな」


「え?」


「はぁー……9月9日」



 ガチャッと難なく開錠かいじょうされ、そのまま開けてくれたドアの先。


 彼氏が壁にかざり付けた『ハッピーバースデー』の文字は9月からそのままらしい。



「え、ヤダ。ごめん、気づかなくて……」


「それはどうでもいい」


「よくない!」


「い〜や。いま大事なのはソコじゃねェ。お前、疲れてるよ」



 自分の誕生日も祝えないくらい、自分の事をおろそかにして、可哀想だと。彼氏のほうが。



「え?」


「『え?』じゃねェよ。やめろ首かしげんな、カワイイだろ。真面目な話してんだこっちは」


「あ、ハイ。ゴメンナサイ」



 合い言葉を覚えられないと言った私に、誕生日にすれば忘れないだろうとあきれた彼氏。


 私が忘れたら自分が覚えてるからいいって。


 その時は誕生日ごと忘れるなんて思ってなかった。お互いに。



「自分のこともっと大事にしろとか言葉で言っても、お前絶対しないじゃん」


「ぎくっ」


「お前を心配する事しか出来ない俺を可哀想だと思うなら、── たのむから、リアルでも同棲しよ。メシぐらいなら作ってやれるから」


「……うん」


「遅くなったけど、誕生日おめでとう」


「うん!」



 生まれてきてくれてありがとうと言った彼氏に、この人には一生頭が上がらないかもしれないとワカラセられ。


 拠点の合い言葉に彼氏の好きな食べ物を並べ立てる私に、どんだけ自分の事が大好きなんだとひそかにテレさせていた。


 


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あらあらあら〜^^
 き ょ て ん ご と ば く は つ す れ ば い い と お も い ま し た  ま る
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