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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第一章 アルフレッド編

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縦穴での遭遇

 

ーカンカンカンカンー


 縦穴の金属製のハシゴをひたすらに下りるフィーナとミレットの二人。

 ミレットが先でフィーナが後に続く。フィーナが先では早晩犠牲者が増えてしまうだけでしかない。

 ホーリーライトの光の玉を宙に浮かべて周囲を照らしながら降りている為、明るさ的には問題無い。

 また、触手に襲われるにしても下から来るはずなので、ミレットが敵を抑えている間にフィーナが攻撃する手筈にしてあるので対策は大丈夫……なはずだ。

 垂直のハシゴを降りている最中というのが不安要素の一つではあるが、こうしなければ降りられない以上仕方が無い。

(ふぅ……)

 垂直のハシゴを降りるのは中々に怖い。高さを感じさせるハシゴも怖いが、先が見えないのも怖いものだ。

 慣れないハシゴでの移動にフィーナは一歩一歩慎重に降りていく。一方のミレットはと言うとひょいひょいと軽やかにハシゴを降りていっている。

「先輩、大丈夫ですかぁ? 気をつけて下さいね?……ニャ」

 その上、気まで使わせてしまっている。そもそも自分はオーウェン家で先に働いていただけで先輩と呼ばれる程の人間では無い。

(はぁ……私ってまだまだですね)

 フィーナは自分の不甲斐なさを頭の中で責める。

 ミレットには慰めて貰ったりさっきみたいに助けて貰ったり……。

 ウェイトレスをしていてもお客の対応が上手だったり……ミレットの方が人間的に成熟している気がしてきた。

 自分は神の力が使えるだけの未熟者の様な気がしてならない。

「はぁ……」

 ハシゴを降りながらフィーナはひたすら自己嫌悪に包まれていた。その時


ーズルッ!ー


「わっ!」

 ハシゴに降ろしたフィーナの靴が滑り、腕だけで全体重を支える窮地に陥ってしまった。

「あわ、あわわわ……!」

 フィーナの足はジタバタと宙を動いているだけで身体を支えているのは二本の腕だけだ。

 なんとかハシゴにしがみつき足をハシゴに掛け直す事でようやく落ち着いた。

「はぁ……はぁ……」

 心の底から焦ったフィーナはハシゴにしがみついたまま動けなくなっていた。

「先輩、気をつけて下さいね。先輩が落ちてきたら私まで滑落しちゃいますから……ニャ」

 下からフィーナの様子を見ていたミレットが声を掛けてきた。

「せんぱ〜い?」

 最初は冗談交じりな口調だったが、ハシゴにしがみついて震えている彼女の変化に気付いたらしく

「先輩、大丈夫ですから一歩を踏み出して下さい。ハシゴと結婚するつもりですかぁ?……ニャ」

 フィーナを励ます方向にシフトしてきた。しかし、元々メンタルが弱っていたフィーナは中々次の一歩を踏み出せずにいた。

 そんな彼女の様子にミレットは頬をリスの様に膨らませると

「もぉ〜、仕方ないですねぇ。ちょっと後ろ失礼しますよ……ニャ」

 器用に階段を登るとフィーナの背後にピッタリと付いた。

 ミレットはハシゴの両端をしっかり握り、両足はフィーナの足を挟み込む様にハシゴに掛けている。

 彼女はフィーナの背後に付きながらも一応安定した体制を取ってはいる様だ。

「へ? あの……!」

 フィーナにとってもミレットの行動は予想外だった。まさか狭いハシゴの上でピッタリ後ろに付かれるとは思ってもいなかった。

「これなら何があっても落ちたりなんかしませんよ? 私が責任を持って支えてあげますから」

 フィーナの耳元でミレットは優しく励ましてくれる。

「試しに両手を離して寄りかかってみて下さい? 大丈夫ですから……ニャ」

 少し冗談交じりにミレットが話し終えると同時にフィーナが背中に感じる圧迫感が増した。

 どうやら、フィーナが本当に手を離した時の為に力を入れている様だ。

 既に今の時点でハシゴとミレットに挟まれ押し潰されているに等しいフィーナが落下するには、ミレットが居なくならなければ物理的に無理である。

「あの……わかりました。降りますから少し力を弱めて貰えませんか?」

 フィーナの言う通り今の状態ではミレットとハシゴに挟まれており身動き一つ出来そうに無い。

「それじゃ、一緒に降りましょうか。せーのでいきましょう……ニャ。せーの!……ニャ」

 二人はイチニ、イチニ、と同じタイミングで階段を降りていく。

 最初はぎごちなかった二人だったが段々と二人三脚の様にタイミングがピタリと合っていった。その時

「先輩! 敵が来たので離れます!」

 ミレットはそう言うとフィーナから離れ下に降り迎撃体制に移っていった。

 器用にも足をハシゴに絡ませ上半身を下側に向け両手は爪を立てて待ち構えている。


ーシュルシュルシュル…ー


 程なくして不気味な音を立てながら縦穴の底から触手が何本も這い上がってきた。

(ひっ!)

 うねうねと蠢く何本もの触手のあまりのおぞましさにフィーナは思わず顔を背けてしまう。

 本能に刻まれた得体の知れない未知のモノに対する恐怖というものがある。

 それは言葉では説明する事の出来ない本能に訴えかけてくるアンノウン的なモノに対する怖さだった。

「ほぉー!」

 ハシゴにしがみついて震えているフィーナとは対象的にミレットはノリノリだった。大きな声で呼吸を整えると

「ニャニャニャニャニャニャニャニャ!」


ーバシバシバシバシバシ!ー


 雄叫びと共に無数の猫パンチを繰り出し始めた。余りの猫パンチのスピードに腕が何本にも増えて見える程だ。

(……す、すごい!)

 フィーナが感心するほどミレットの動きにはキレがあった。まるで一子相伝の暗殺拳の使い手であるかの様な……。

 百裂拳というものが実在するのなら彼女の見事な手捌きを言うのだろう。

「フニャァッ!」


ーバシィッ!ー


 止めとばかりに最後の一撃を触手に叩き込んだミレットの顔はフィーナから見る事は出来なかったが、きっととんでもないドヤ顔をしていた事だろう。

 ミレットに撃退された触手はよれよれになって縦穴の奥へと下がっていく。

「お前は多分死んでいる!……ニャ」

 勝ち誇ったミレットは触手の去っていった方を指差し、よく分からない勝ち台詞で戦いを締めた。

「先輩、どーですか? 私の戦いぶり!……ニャ」

 ミレットはいつの間にかさっきまでと同様にフィーナの背後に移動してきていた。

「さぁ、急ぎましょう。連れ去られた女の子を早く助けなきゃですよ?……ニャ」

 この先に潜んでいる敵がどんな相手かは分からないが、無力な女の子が連れて行かれて無事で済む相手じゃないのは間違い無い。

(……早く、降りなくちゃ……!)


ーカンカンカンカンカンー


 自分を奮い立たせたフィーナはミレットと息を合わせてハシゴを降りていくのだった。

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