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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第一章 アルフレッド編

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不審者

 一日の業務を終えたフィーナはアルフレッドを寝かしつけた後、王都の東側の地区にあるシュネーヴァイス教会に来ていた。

 一般的な教会の形をしているが全般的に白いのが特徴だ。明かりの少ない深夜にそう感じるのだから昼間に見たら相当白く感じるはずであろう。

 教会の入り口までやってきたフィーナは


ーコンコンコンー


 シンシアとの事前の取り決め通り、扉を三回ノックした。これで反応はあるはずなのだが……

(……あれ?)

 何も反応が無い。深夜という事もあってノックの音を控え過ぎてしまったのか……?

 単に間が悪かったのか……フィーナは一人悩むが、色々考えた後、少し待ってみるという結論に至った。

(深夜だしうるさくするのもなぁ……)

 フィーナが再度ノックするのを躊躇っていると

「うわあぁーっ! 来るなぁ!」

 どこからか、男性の叫び声が聞こえてきた。あまりに切迫感漂う叫びにフィーナは一人で声のした方向に駆け出していた。


ータッタッタッタッー


 何が起きているのか分からない。敵の素性も目的も……街を駆けながらフィーナは考えを巡らす。

(今の自分ならある程度は対処出来るはず……)

 比較的背の高い建物の連なる路地を抜け、街を流れる水路に面した通りに出た時には叫びの聞こえた方向には大分近付いてきていた。


ースッ……パアアァァ!ー


 収納空間から木剣を取り出し念のため聖属性を付与しておく。これなら懐中電灯代わりにもなるし、どんな敵相手にも攻撃力の上乗せになる。

「くそっ、なんなんだ! てめぇ! なんで死なねぇんだ!」

 声の主はすぐ近くに居る様だ。フィーナが改めて声のする方を見ると、水路を挟んだ向こうに人影が二つ見えた。

 遠くまで届く明かりが無いので、ここからではそれ以上分からない。フィーナが向こう側に渡る通路を探していると

「ぎゃああああああーっ!」

 断末魔にも似た男の叫び声が聞こえてきた。もう時間的な猶予は無い。


ーパアアァァー


フィーナは目視による短距離転移を行い人影の元に駆け付けた。

 現場には地面に倒れた男が一人、暗いのでよく分からないが革鎧を着た中年の冒険者風の男性だ。

 もう一人はその男の側で無言で佇んでいる。黒いフード付きのマントを来た背の高い何者かだ。手には長い棒みたいな物を持っている。

(何者……?)

 フィーナは行動を決めあぐねていた。背後を取っているので攻撃するなら今が絶好の機会だ。

 しかし人影から発せられる雰囲気が彼女に攻撃を躊躇させていた。明らかに只者では無い。もしかしたら死霊術師の仲間かも……そんな考えも自然に浮かんでくる。

 そんな中、人影がゆっくりとフィーナの方に振り返る。

 ボロボロのフード付きの黒マントを身に纏った人影の顔がフィーナの木剣の光によって顕になってゆく……。

 白い肌に剥き出しの歯茎に痩けた頬、黒っぽい鼻に底の見えない目……

(ん……?)

 人間らしからぬ風貌に気付いた時、フィーナは

「わあぁぁぁぁっ!」

 思わず叫び声を上げてしまっていた。その声にビックリしたのか人影の方も

「うわわわわーっ!」

 と叫び声を上げていた。お互い叫んだ事で少し落ち着いたのかフィーナは尻もちを付いて座ったまま、人影の方は振り返った時の体制そのまま、お互い無言の時間が少し流れた。

「あの〜……、もしかして天界の方ですか?」

 人影は恐る恐るといった感じでフィーナに尋ねてきた。人影の風貌は骸骨そのものであり、黒いボロボロのマントも相まって死神の一般的なイメージそのままである。

 天界の事を知っているという事は魔界の人かもしれない。それならば広義では敵ではないし、お互いの仕事のために情報交換は必要だろう。

 フィーナは改めて周囲に誰も居ない事を確認してから

「……はい。天界の転生課に所属している女神フィーナです」

 私はこういう者ですが……と、名刺交換でもしたいところだが、天界と魔界の間にそういった慣習は無い。

 黒い人影はフィーナの自己紹介を聞くと畏まった感じになり

「わ、私は魔界で死神をさせて頂いている者です! 名前は……ないです。新人に名前は贅沢だとか言われてまして……」

 自らを死神と名乗った男に対し、フィーナは詳しく話を聞いてみる事にするのだった。



 適当なベンチに腰を降ろした二人はお互いの仕事の話から始めていく。

 フィーナからは自身が転生者の補助の為に世界に降りている事、自分の仕事の障害にならなければ魔族領や魔界に関わるつもりは無い事も伝えた。

 こんな深夜に街を出歩いているのも不審者の報告があったから見回りをしようとした矢先だったという事も……

「……そうですか。私この世界に配属されてまだ間もなくて……」

 死神はこの世界に来た経緯を話し始めた。以前はこことは別の異世界で死神業をしていたらしい。

 闇の門やら闇の城とかそういった所で働かされていて、その世界では勇者がよく死ぬせいで相当ブラックな環境だったのだそうだ。

 あまりに過酷な労働条件に嫌気が差し異動願いを出していたところ、別の異世界へと異動し住宅街で自転車の前に飛び出す仕事をさせられてまた異動願い……。

 流れ流れてこの異世界にやってきたのだそうだ。

「久しぶりの死神らしい業務に戻れたんですが……」

 そう語る死神の表情は浮かない。この世界では悪人の魂を魔界へ連れて行く仕事をしているそうで、魔界に連れて行く魂については天界から許可を得ているのだそう。

 試しに許可証を見せて貰ったが、確かに転生課のサインもされている正式なものだった。

「……死神さんのお仕事は解りましたけど、一般の方が怖がってますので……なんとかして頂けませんか?」

 黒いマントに骸骨顔長い鎌という死神丸出しの風貌では、深夜とは言え都会では目立ち過ぎである。

 なんとかしてもらわないと騒ぎが収まる事はない。死神にも仕事上の都合はあるのだろうからフィーナから無理にどうこう言う事は出来無いのだが……。

「……わかりました。ちょっと上司にも相談してみます」


ーブウウウウンー


 そう言うと死神はフィーナにお辞儀しつつ何処かへと転移していった。

 死神が消えるとともに地面に転がっていた男の身体も消えてしまった。

(ふぅ……)

 ベンチに座ったフィーナが今回の事をどう説明したものかと頭を捻っていると

「フィーナさーん!」

 遠くからシンシアが駆けて来るのが見えた。男性の叫びを聞いて彼女も付近を探していたのだろう。

「フィーナさん! 不審者居ましたか? もしかしてやっつけちゃいました?」

 フィーナのところにやってきたシンシアは深夜なのに不思議と元気だった。

 人から頼られている、人々の役に立ちたいという気持ちの現れなのだろう。

「やっつけては居ないですけど……普通に暮らしている善良な人には無害な人でした。これから先、もし見かけてもそっとしておいてあげて下さい」

 死神の目的が悪人の魂の回収なら普通の人には危害は無いだろう。

 しかも、ある程度問題ある魂でも何とか転生させる天界が匙を投げる魂相手とは相当である。

 天界が魔界送り相当と判断する魂なら普通の人々から見ても潜在的な脅威であるから、それらを刈り取る死神を恐れる必要は無い。

(いろんなお仕事があるんですね……)

 フィーナにとっては世界の新たな一面が見えた一夜となった。

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