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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第一章 アルフレッド編

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温泉宿での休息

 王都に帰る聖職者達に温泉宿で休息を取る機会が与えられた。もちろん早期帰宅を望む者は先に馬車で王都に送られる。

 フィーナはアルフレッドやリーシャ、シンシアにエルフィーネと共に温泉宿を楽しんでいく事にした。

「おかあさんもおねえちゃんもいっしょだったら良かったなぁ」

 リーシャにとっては生まれて初めての遠出の様でかなりウキウキしているのが見て取れる。

 いきなりソーマに拐われ連れてこられた彼女の心のケアにもリラックス出来る環境は良いはずだ。

 心の傷にはリラックス出来る環境が有効なのはフィーナ自身経験済みである。

 帰路の約三日の行程の為にも英気を養っておくのは重要である。

 温泉宿は混浴では無いのでアルフレッドは寂しいかもしれないがそこは仕方が無い。

 大人への通過儀礼たと思って我慢してもらうしかない。

「うわ〜、ひっろ〜い!」

 そう言うとエルフィーネは湯船に突撃を敢行し


ーザッバーン!ー


 はた迷惑な入浴方法を実行していた。フィーナはシンシアと一緒にリーシャの身体を洗ったり頭を洗ったりと入浴の準備を進めていた。

 自分達の身体もきっちり洗ったところでようやく温泉に入る事が出来た。

「気持ちいいですー」

 リーシャは初めての温泉を満喫出来ている様だ。

「でも、お母さんやお姉さん、きっと心配してますよね。帰ったら元気な姿を見せてあげましょうね」

 フィーナはリーシャ自身も気にしているであろう家族の事を話しかけた。

 電話でもあればリーシャの両親を安心させてあげられるのだが発展途上な異世界のもどかしい所である。

 しかし、死霊術師ソーマに拐われてきたとは言え、リーシャの事をどう説明すれば良いのだろうか……。

 ある意味誘拐の嫌疑の矛先がフィーナに向いてしまっても何もおかしくは無いのだ。

(うーん……)

 顎まで温泉に浸かりながら妙案が無いがフィーナは思案を巡らせる。

 せめて第一報を入れておけば印象は変わったのだろうが……そこまで考えてここが異世界である事を改めて思い出す。

(電話も何も無いじゃないですか……)

 となると、女将さんに怒られる役目はフィーナが負うしか無い様だ。

 全ての責任はソーマにあったとしても、泥を被る人身御供は必要である。

「どうかされたんですか? 難しい顔をされてますけど」

 ずっとフィーナの様子を見ていたらしいシンシアが声を掛けてきた。

「この子は隙あらば思い詰めちゃうのよ〜。今だって愛しの彼の事ばかり考えちゃってさ〜?」

 一人が寂しくなったのかエルフィーネも近くにやってきた。彼女の話している事は全く見当違いな内容ではある。

 あからさまにフィーナをからかいに来ただけの様であり傍迷惑な話である。

「あ、いえ。リーシャさんのご家族が心配されてるかなと思いまして……」

 この温泉宿から王都まで馬車でも三日は掛かってしまう距離がある。

 どうしようも無い事とは言え、リーシャの家族に気苦労を強いてしまうのは心苦しいものがある。

「それにしてもアンタが聖女とはねぇ。人は見かけによらないもんね〜」

 話の矛先が自分に向けられ驚くフィーナ。そういえば半ば強引に聖女襲名させられてしまったが、聖女とは何をするのだろう?

 全く知らないフィーナには聖女の役目などまるで見当がついていなかった。

(レアさん、聞こえますか?フィーナです)

 今回の一件の張本人であるレアに聞いた方が確実だろうと、天界のレアに連絡を試みる。

 地上から帰ってすぐだから流石に気付くはずだ。

(はいは〜い! 全知全能豊穣の女神レアで〜す!)

 すぐにテンションMAXの返事が返ってきた。よほど人々からの信心深い崇拝の眼差しが心地良かったのだろう。自分には縁遠い感覚だが……

(すみません。聖女って何するんですか?)

 フィーナは単刀直入に疑問をぶつけてみた。何らかの使命を帯びたものなのか、これまで通りの生活を送っていても問題は無いのか、何よりフィーナ自身の仕事に影響はあるのかどうかが関心事であった。

(そうね〜、聖女って、地上からの要望に対処するために私が降りてた時の姿の事だと思うんだけど……)

 レアの話によると、彼女の元には地上から祈りとともに何らかの要請が届くらしい。

 天界から直接手を下して対処出来る案件以外の、直接地上に降りて対処しなければならない案件の場合はレアが直接降りて案件の解決に当たっていたのだそう。その姿を見た人々の間で

「あの女性は聖女だ!」

 と話が広がってしまったというのだ。何十年かに一回くらいの案件に対処するためのものなので、フィーナには重大な案件が発生するまでは普段通り過ごしておいてもらって構わないそうだ。

 要はレアの仕事の一部を押し付けられかねない状況になってしまったという事である。

(それ……私に何のメリットも無いですよね?)

 フィーナは素朴な疑問を心の中で口にする。レアの話を総合すると重大案件の対処を押し付けられるばかりか、聖女という称号まで付けられ人々からの注目度が増してしまった……だけである。

 フィーナからしてみれば厄介事が増えてまっただけの様なものだ。

(そんな事ないわよ〜。聖女なんだから少し神力使ったって聖女だからで済ませられるし、今まで以上に仕事がしやすくなるんじゃない?)

 なんだか言いくるめられてる気がしなくもない。しかし、神力の行使による気苦労が無くなるのならそれはそれで良いのかもしれない。

(それで神力使って私に信仰心が集まっちゃってもお咎めは無しだったりします?)

(ダメに決まってるでしょ。そこはうまくやっちゃって〜)

 即答で返されてしまった。結局フィーナの負担が増しただけでしかない様だ。

(……わかりました。それじゃ失礼します)

 フィーナは力なく交信を終了した。

「どうしたんですか? なんかずっと考え事をされていたみたいですけど」

 隣りのシンシアが心配そうに尋ねてきた。温泉で長い事身動きせずにいたのが相当不自然に見えていたらしい。温泉でゆっくりするといっても普通、多少は表情が変わったり身体を伸ばしたりするものだ。さっきのフィーナみたい真顔のまま微動だにせずは、相当不自然だったに違いない。

「あ、いやいや、何でもないんです。ちょっと疲れていたみたいで……」

 フィーナは慌てて笑って誤魔化すが、横にいるリーシャもシンシアと一緒に不思議そうにフィーナを見ている。

「それじゃ、そろそろ上がりましょ。あったかいお風呂の後はほかほかご飯でしょ」

 十分に温泉を満喫したらしいエルフィーネの関心事はすでに今日のご飯に移っている様だ。

 しっかり温泉で疲れを癒やしたフィーナ達はその後、温泉宿での食事を堪能し床に着いたのだった。

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