王都帰着
シルバーベア本来の仕事であった護衛の荷馬車に拾われた白銀の群狼一行。
数日前に王都で撃退された魔物の大量死体が残された南側の平原を越えて王都に辿り着いていた。
よくあるRPGゲームでは無い為、最終的には遺体を処分しなければならない。
その辺りは付近の住民だったり貴族が派遣した労働者達だったり依頼された冒険者だったりと様々である。
ここは王都に近いので死体は集めて魔術師による焼却処分となるのが、妥当なところだろう。
ーガラガラガラガラー
荷馬車は正門で止められる事無く王都に通された。数日前の魔物達による襲撃の跡が癒えてないのだから無理も無い。
「んじゃ、俺達はギルド行ってくらぁ」
白銀の群狼メンバーは魔物を倒した討伐報酬交渉の為に冒険者ギルドに行くらしい。
「シルバーベアさん、皆さんもありがとうございました。助かりました」
続いて、フィーナも荷馬車から降りお世話になった商人達とシルバーベアに頭を下げる。
「おう、俺も後で冒険者ギルド行ってみるわ。んじゃな」
ーガラガラガラガラー
荷馬車が去っていくのを見送りながら、かなり久しぶりとなる王都の様子をフィーナが見回してみると
「わぁ……」
魔物の襲撃から間も無いとは言え、記憶に残っていた王都と変わらない街の活気にフィーナは帰ってきた安堵感を覚えていた。
(は、早く帰りましょう……)
フィーナは足早に表通りから一本裏に在るニワトリと踊る女神亭に向かう。
(アル……)
記憶の場所には確かに目的の宿屋が建っている。自分がこの世界から去った時から何も変わっていない歴史にフィーナは安堵しながら
ーカランカランー
ドアベルが響く中、扉を開けて店内に入室する。
「あらぁ〜! フィーナちゃん! あんた、無事だったんだねぇ〜!」
店に入ってきたフィーナを見つけるなりおかみさんが笑顔で近付いてきた。
「すみません、ご心配おかけしました」
ーギュウッ!ー
「あ、あの……」
おばちゃんはフィーナを力一杯抱き締めてきた。
「もう! 心配掛けるんじゃないよ、この子ったら!」
おかみさんは抱きしめながら頬をすりすりさせてきている。
彼女が目に涙を滲ませているのを見ると、申し訳無さがフィーナの心に湧き上がってくる。
「あ、あの……アルとリーシャさんはどこに?」
ざっと見た感じ近くにはアルフレッドとリーシャが居ないのを確認したフィーナが女将さんに尋ねる。
「ああ、あの二人だったら城の聖騎士様がお城に招待してもらってねぇ」
女将さんの話によるとフィーナが居なくなって気落ちしているアルフレッドを見かねたグレースが城に連れて行ったらしい。
また、その付き添いとしてリーシャ、エルフィーネと青白い顔したイケメンも一緒に付いて行ったそうだ。
(…………)
グレースに招かれて城に向かったアルフレッドとリーシャに対しての不安は無い。おそらく、ここで待っていてもすぐに帰って来るに違いない。
しかし、同行しているエルフィーネと青白い顔のイケメン……恐らく魔王サタナイルなのだろうが、その二人の存在がどうにも引っ掛かる。
「わ、私お二人を迎えに行ってきます!」
なんとなくの不安を感じたフィーナは日も傾き始めた王都へと飛び出していくのであった。
王都の通りでは先日の王女プリシアによる歌声の美しさとその容姿による絶賛の声で賑わいを見せていた。
「はぁ……はぁ……」
王城に向かって駆けていたフィーナだったがさすがにひとっ走りで着けるほど、王城は近く無いしフィーナのスタミナが無尽蔵である訳でもない。
(…………)
アルフレッドに早く会いたい逸る気持ちを抑えながら、城への目抜き通りを急ぎで歩いていた。
「あ、フィーナさ〜ん!」
目抜き通りのメインの十字路で声を掛けられたフィーナが立ち止まって声の方を見てみると
「こんにちは、フィーナさん」
緑色の髪の神官が手を振りながら近付いて来るのが分かった。街の西地区の教会で働いているシンシアだ。
彼女は一人では無く、アルフレッド位の年齢のシンシアと同じ緑色の髪の少女を連れている。
(この子は……)
フィーナが少女の記憶を頭の片隅から手繰り寄せていると
「この子は私の妹でミントと言います。ほら、ご挨拶」
シンシアが少女にフィーナへの挨拶を促すが、少女は人見知りなのかフィーナへの挨拶を躊躇っている様だ。
「ミントさん……ですね? 私はフィーナ、シンシアさんのお友達です」
フィーナは自分の膝に手を置いて前屈みになって、視線を低くし少女に挨拶する。
「…………」
なるべくにこやかに接したつもりだったのだが、少女からの返事は無い。やはり人見知りをする子なのかもしれない。
「初めて会う人だから中々難しいのかもしれませんね。あなた、アルフレッドやリーシャさんのお友達ですよね?」
フィーナは少女の警戒心を解こうと、魔法学校に通うアルフレッドやリーシャの事を話題に出してみた。
「二人共学校でお友達が出来たと喜んでいましたよ。これからも仲良くしてあげて下さいね?」
フィーナはそう話を締めくくるとシンシアに頭を下げ
「それじゃシンシアさん。私は失礼します」
「はい。フィーナさんもお気を付けて。神のご加護があります様に……」
フィーナは彼女達に別れの挨拶をすると、二人と別れて王城へと向かうのだった。




