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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第一章 アルフレッド編

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軍議

 グレースに促されるままテントに入ったフィーナは、これまた言われるままに長机の正面に座っているプリシアの反対側の入口近くの席に座らされた。

「君はこちらに腰を掛けてくれ」

 案内してくれた騎士がアルフレッド用に小さめの椅子を持ってきてくれた。

「あ、ありがとうございます」

「ありがとうございます!」

 フィーナとアルフレッドが軽く会釈すると騎士も同じ様に会釈して退出していった。

「ところでグレース殿、これから敵の襲撃を受けると言うのは本当なのですかな?」

 グレースの左側に座っている年配の神官が口を開く。身なりからして最も位が高いのだろう。白い髭をたくわえており落ち着きも感じさせる。

「はい、第一波で死霊が押し寄せると。護衛の兵士では死霊に勝つ事は出来ませんので皆様のお力をお貸し頂けると助かります」

「しかし、王女様を矢面に立たせるなど……王女様だけでも王都にお帰り頂くべきでは?」

 グレースの言葉に神官の一人が声を荒げる。確かに普通に考えれば王女様が最前線と言うのはどうかと思われる。

「今から王都へ急がれても一日は掛かります。その行程で賊に襲われないとも限りません」

 確かに王女様をそのまま王都へ向かわせるとしても現状では十分な護衛を付けられない。

 護衛の少ない王女様の馬車が襲われるのはある意味様式美なので誰にもその可能性の否定は出来ない。それとは別にグレースは話を続ける。

「襲撃の話はこれまでは仮定の話でした。何事も無ければ良いと……」

 そう話すグレースの表情は一段と真剣味を増した。

「しかし、先日の山賊達の話を鑑みると敵襲は真実味を帯びてきたのです。ここで対策を取らなければ全滅もありえない話では無いのです」

 どうやら昨日の山賊達が何者かの襲撃を受けたという事実がグレースにこの場所で陣地を作らせる判断の決定打となった様だ。

 山賊達の行動はフィーナの動きとはおそらく何のリンクもしていないはずである。

 しかし、彼らの動きがきっかけとなって歴史が違う方向に進みつつある。

 願わくばより良い歴史を歩んでいってもらいたいものであるが、女神視点でそんな事をしみじみ考えていたものだから会議の内容など完全に右から左であった。

 専門家相手に余計な口出しは良くないだろうと口を慎んでいたのが悪い方に出るのである。

「フィーナ殿はどの様にお考えか?」

 左側に座っている神官の一人に唐突に話を振られたフィーナは

「ひゃい? え? ……えーと」

 思わず噛んでしまうくらいには油断しきっていた。この窮地を乗り切る方法は神力をどれだけ浪費しようと思い付かない。

 発言を求められている以上一同からの視線は自然向けられてしまう。第三者から見たらフィーナの目は泳ぎまくって見えていたであろう。

(聖職者の人達、避難させた方が良いのかどうか……だって)

 隣で大人しく座っていたアルフレッドが冷や汗ダラダラのフィーナにこっそり耳打ちしてくれた。会議の内容さえ分かればこっちのものである。

「聖職者の皆さんも護衛の手配が出来ていないのであれば避難は難しいと思われます」

 周りの反応を気にしながらフィーナは言葉を続ける。

「それに王都までの徒歩での旅支度が皆さん出来ているとは思えませんし……」

 フィーナは聖職者達と同じ立場としての意見を述べる。フィーナの答えを聞いた神官達も部隊長達も皆一様に考え込んでしまっている。

 フィーナは会議の前半部を聞いていなかったのであまり分かっていないのだが、会議の流れはここで敵を迎え撃とあれば非戦闘員である聖職者達は陣地から遠ざけておくべきかどうかが議題である。

 多数の非戦闘員と作戦行動するのは少なからず負担となる……そういった点から当事者であるフィーナに意見を求めたという流れだったのだが。

 避難する際の安全が担保されていないのであれば避難という名の厄介払いと受け取られてしまっても無理は無い。

「今更聖職者の皆さんだけを放り出す訳にはいかないだろう」

 行軍の責任者であるグレースの判断は下された。結局はフィーナの意見が後押しとなり慰霊の儀の参加者は呉越同舟……一蓮托生となったのである。

 それならば……と各々の能力による役割分担の決定は早かった。

 最重要となるのはホーリーウォールかターンアンデッドを使える比較的能力の高い神官だった。

 彼らには適宜いずれかの魔法を使えるだけ使ってもらう事になった。

 彼らのへ指揮はこの会議に出席している神官達が指示を出す事で決定となった。

 また、ヒールやキュア位しか使えない聖職者達は兵士達の援護に回ってもらい、彼らの継戦能力の延長に尽力して貰う事で話が纏まった。

 死霊に対して兵士達は無力ではあるが、第二波として想定される飛行型の魔物に対してはクロスボウやバリスタによる対空戦闘で地上に落下させ地上での白兵戦により仕留めていく流れだ。

 王女に関しては魔を打ち払う絶大な力があるというだけで、これまで力を行使した実例は無い。

 そのため、作戦行動に組み込む訳にはいかないが、その働きには大いに期待されているといったところである。

 フィーナとしては自分がフリーな状態で人々に注目さえされていなければ飛行型の魔物の集団など瞬殺出来る気でいる。

 女神が地上の魔物に遅れを取る方が恥ずかしいのであって、現在の神力の残量から考えても力の行使に関して問題は全く無い。

 会議は当然ながらフィーナが発言する事無く淡々と進んでいく。

「それでは、会議は以上となります。皆様、お疲れ様でした」

 一通り、各々の役割分担の確認が終わったのだろう。神官達も部隊長達も同僚達と会話をしながらテントから退出していった。

 入り口の近くで席に付いていたフィーナは出て行く人出て行く人に会釈を繰り返しており、グレースに声を掛けられる頃にはすっかり疲れ果ててしまっていた。

「フィーナ殿、突然お呼びだてして申し訳ありませんでした」

 グレースは軽く頭を下げつつフィーナに声を掛けてきた。

 彼女が言うにはフィーナは今回の敵の襲撃を予見した功労者であるから、今後の成り行きをある程度知っておいて欲しいという事で今回出席してもらったと言うのだ。

「ごきげんよう、フィーナ様」

 フィーナとグレースが話しているところにプリシア王女が話し掛けてきた。

 式典への出席の為の移動のはずが戦闘に巻き込まれる形になってしまい、相当疲れているはずなのだがそんな事を感じさせない位朗らかな表情をしている。

「お互い頑張りましょう。それでは失礼致します」

 そう言うとプリシア王女は付き人を引き連れて退出していった。

 これから戦闘に巻き込まれるかもしれないというのに動じた様子が全く感じられないのは、人の上に立つ者としての心構えの現れだろうか……?

(まだ、お若いのに流石ですね……)

 彼女の後ろ姿を見てフィーナは感心しきりであった。個人的には常に落ち着き払える余裕を持てるというのは見習うべきところが多い。

 すぐにテンパっていては女神としての威厳などどこにあるのか分からなくなってしまう。

(私も頑張らないと……)

 年端もいかない少女から一人で勝手に敗北感を感じるフィーナであった。

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