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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第一章 アルフレッド編

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南の森への旅路

 フィーナがエルフィーネに魔法学校に呼び出される一件があってから二週間が過ぎた。

 エルフィーネには軽々にハンドベルを鳴らす事を戒めて以来、無闇に鳴らす事は無くなった。

 また、本日に至るまで死霊術師の影は全くと言っていいほど無かったそうだ。

「それでは行ってきます。ご迷惑お掛けします」

 帝都の南門の外に馬車隊が集まっているという事で、フィーナは女将さんやリーシャ達に頭を下げ、アルフレッドを連れ南門へと向かう。

 エルフィーネには一応契約終了という事で銀貨二十枚の入った小袋を渡し別れてきた。

 フィーナの服装はいつものメイド服に茶色いフード付きのマントで全身を覆っている。一方のアルフレッドはいつものシャツにサスペンダー付きの膝下の半ズボンだ。

 本来必要は無いのだが世間体的に手荷物として鞄を持ってきている。

 フィーナ達が南門の外の広場にやってくると何台かの馬車が駐車していた。濃いブラウン色の馬車には馬が六頭繋がれており、馬車そのものも二十人位が乗れそうな大きな物だった。

 馬車の近くには聖職者達が列を作っている。フィーナはアルフレッドを連れて列の最後尾に付いた。

 列の先頭では護衛の兵士が名簿と本人を照らし合わせて馬車に乗り込ませていった。列が進んでいくとフィーナ達の後ろにも聖職者達が列を成していた。

 改めて見ると流石に王都だけあって聖職者の数は桁違いだった。

 冒険者ギルドで聖職者をあまり見掛けない事を考えると王都での聖職者の就職先は結構豊富なのかもしれない。

 列は進み続けようやくフィーナ達の番になった。受付の兵士に名前を告げるとすんなり馬車内へと案内された。

 馬車は先頭に乗り降り口があり、中は左二列右側一列の三列が配置されており見た感じマイクロバスといった感じの装いだった。

 フィーナは左二列の席に着くと、鞄を席の上の荷物置きに載せフィーナが窓際の席にアルフレッドが通路側の席に座る事にした。

 本当はアルフレッドを窓際に座らせたかったのだが死霊術師の襲撃の可能性も考えるとフィーナが窓際に座らざるを得なかった。

 座席に座ってみると車高の高さもあってかそこそこ見通しも良い。窓も結構可動範囲が広いのでいざという時に神力で対処するのも問題は無さそうだ。

 フィーナが馬車の確認をしているとあっと言う間に座席が埋まっていってしまっていた。


ーガラガラガラガラー


 座席が埋まると馬車はゆっくりと動き始めた。発車時の揺れは中々大きいものだった。


ードンッ!ー


 不意に天井から何かの物音が聞こえた気がしたのは気のせいだろうか……?

 フィーナは隣に座るアルフレッドに目を移す。三日間という長丁場な旅路となるが馬車の乗り心地は悪いものでは無い。

 日頃からアルフレッドと話をする時間を取るようにはしていたものの、あまりゆっくりと話す事は出来ていなかった気がする。

「アル、学校の方はどうですか?」

 フィーナは当たり障りの無い話から聞いてみる事にした。学業において躓いている部分は無いかとかではあるが、聞いてみたところ苦手な科目等は今のところは無い様だ。

 だが、火水風土に代表される攻撃魔法や対象者の能力を上げ下げしたりする支援魔法などよりは、神聖魔法の様な神に祈りを捧げ行使する魔法の方が手応えが感じられるのだそうだ。

「僕は……困っている人たちの力になれるようになりたいです。フィーナさんみたいに……」

 そう言うとアルフレッドは顔を赤くしてフィーナから視線を逸らしてしまった。

 彼はフィーナが知っている八年後の彼とは明確に違う人生を歩んでいる。それがアルフレッドにとって幸せな事なのかはまだ分からないが……こればかりは歴史が答えを出すまで分かりようも無い。

「私がお手本として正しいかどうかは分かりませんが……夢が叶うと良いですね」

 フィーナはそう言うとアルフレッドの頭を撫でた。馬車の座席はあまり広いものでは無かったので体勢的に無理があったが、小さい子を褒める方法はフィーナにはこれ以外思い付かなかった。

 目的地に着くまでまだまだ時間はたっぷりある。フィーナは窓の外を警戒しつつ馬車に揺られるまま南の森へと進んでいくのだった。



 馬車での旅と言っても四六時中乗っている訳でも無く、定期的に小休憩や大休憩が取られるものである。

 馬にも休憩は必要であり護衛の兵士達も鍛えられているとは言え、休みなく歩くというのは無理がある。

 また、馬車の乗員達にも身体を伸ばしたりなどの休憩は必要だ。エコノミー症候群と言う概念がこの世界にあるのかどうかは分からないが、ずっと同じ姿勢と言うのは思いの外辛いものなのだ。

 休憩場所としては水源地が近くにある事が望ましい。事前に調査はしているのだろうが大休憩の場所で飲水に困る事は無かった。

 気候も温暖で長時間の馬車旅も苦痛を感じるものでは無い。この世界ではフィーナが元居た現代世界の様な四季がくっきりと別れている様な世界とは違い、季節によって多少の寒暖の差はあるものの、フィーナ達の住む王国では一年中過ごしやすい気候が続くのだ。

 もちろん大陸の位置によって年中暑かったり吹雪いていたりという地域はある。

 フィーナが行く機会は無いだろうが、異世界の世界各地の食事情など暇があったら見てみたいものではある。

 小休憩は五分程度の休憩なので無理に馬車から降りたりはしないが大休憩は一時間位はゆっくり休めるので、乗客も護衛の兵士達も思い思いの時間を過ごしている。

 兵士達は水分補給したり足のケアをしたりと、次の移動行程の準備に余念が無い。

 また、今回は聖職者達が大勢いるので兵士や馬車馬の疲労回復の為にキュアを掛けているのが散見された。

 フィーナはと言えばアルフレッドと剣の稽古をし長旅で凝り固まった身体をほぐしていた。


ーカーンカーンー


 木と木がぶつかり合う乾いた音が辺りに響き渡る。

 元々防戦一方だったアルフレッドだが、最近は防御にも無駄が無くなりフィーナの攻撃を防いだ後でも余裕が生まれ始めていた。

「アル、遠慮せずに打ち込んできて下さい」

 フィーナは上段からの打ち下ろしを難なく捌いたアルフレッドが自分への攻撃を躊躇しているのを見て彼に攻撃してくる様に促す。

「……でも、もし当たっちゃったら」

 アルフレッドはまだフィーナへの攻撃を躊躇している。いい加減このままでは先に進まないと考えたフィーナは


ードン!ー


「うわっ!」

 横薙ぎの攻撃を防いだアルフレッドに対し、空いた左手で彼の胸部に掌底を当てた。

 充分手加減はしたはずだが、体格差もありアルフレッドは後方に吹き飛ばされた。

「くっ……」

 アルフレッドは取り落とした木剣を拾い上げ、木剣を構えすぐさま立ち上がる。

「アル、やられっばなしで悔しくはないんですか? 守ってばかりでは勝てませんよ?」

 フィーナはやや、挑発的にアルフレッドに発破をかける。その言葉にようやく負けん気を刺激されたのかアルフレッドは攻撃を繰り出してきた。

 彼の低い背丈から繰り出される突きは二度三度とフィーナの腹部を狙ってきていた。

(……普段の稽古は実を結んでいるみたいですね)

 アルフレッドの突きを受け流しつつフィーナは右手に伝わる木剣からの圧力を感じ取っていた。

 そろそろ稽古終了の頃合いと判断したフィーナは続けて上段に木剣を振りかぶってきたアルフレッドに対し


ーカーン!ー


 横からの薙払いでアルフレッドの木剣を手から落とさせたところで稽古は終了となった。

 息を大きく切らせ膝を付いているアルフレッドに、弾き飛ばした木剣を手にフィーナは近付いていく。

「アル、頑張りましたね。日々の稽古は力になっていますよ」


ーボウ……ー


 しゃがんでいるアルフレッドの手を取り彼を立ち上がらせつつフィーナはこっそり彼にヒールを掛けておく。また、神力で衣服の汚れ等も落とし、綺麗にしていく。

「それでは馬車に戻りましょう」

 フィーナはアルフレッドを馬車に促しその場を後にした。それから程なくしてフィーナ達の所属する馬車隊は南の森への旅路に戻っていくのであった。

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