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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第八章 貴族令嬢編

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夏休みのバカンス

ーヒュンヒュンヒュンヒュンー


 夏休みの初日、フィーナ達は船上の人となっていた。飛空艇によりパトリシアの実家に向かう運びとなった訳だが、高度数百メートルから見下ろす地上の景色は目を見張るものがあった。

「これすっごいね〜! 人があんなちっさく見えるんだ〜!」

 アリアは舷側から身を乗り出しながら危なっかしく地上を見下ろしている。

「おめ〜、怖いものしらずなんだな」

 同乗しているシュレイザ先輩はアリアに感心しながらも船体の中央から離れようとはしない。

「古代のロストテクノロジーか。こここ、こんな高度なものを一貴族が保有していたとはな」

 シュレイザと並んで飛空艇に感心してみせるのは青ざめた表情を隠そうともしないアルフレッド王子である。

「あらあら、デッちゃんったらそんなトコで縮こまっちゃって〜。ほらほら、こっちだと見晴らしが良いわよ〜♪」

 レアが青ざめるアルフレッド王子の手を引いて無理矢理舷側に連れて行こうとしている。

「お、お母様。お止め下さい! なりません! お止め下さい! ああ〜!」

「ちょちょちょ、俺まで巻き込むんじゃねーよ!」

 レアに手を引かれるアルフレッド王子はシュレイザに助けを求めるが、それは彼も巻き添えにするというだけの結果にしかならなかった。

「フィーナさん、今年も送ってもらってありがとう」

 舷側にて眼下の景色に目を奪われているフィーナにパトリシアがお礼の言葉を述べてきた。

「いえ、お礼を言われる程の事は私は何も……。家にこんな船があったなんて知りもしませんでしたし……」

 お礼を言われたところでフィーナは素直にその言葉を飲み込めないくらいには、飛空艇の保有に困惑はしていた。

 チラッとしか見ていないが飛空艇の運用に関わる人員はオートマタと呼ばれる機械人形が受け持っている様だ。ちなみに客人の接客業務はフィーナの屋敷のメイド達が受け持っている。

 パトリシアの実家までは数時間の空の旅だが、そんな短い時間の間でも客人に不快感は感じさせない様にというレアの配慮である。

「やれやれ、飛空艇なんてものを持ち出してくるなんてな。ただの夏休みの田舎での合宿だってのに」

 そう話すのは、いつも通り同学年の女の子達を周りに侍らせているエリオットだ。

(…………)

 フィーナから見た彼女達は髪色がバラバラなだけで個性が見出せない集団程度の認識でしか無かった。

 今回のパトリシアの実家への旅はフィーナ達だけでは無く、一年生のエリオット達も同行している。また、今上甲板には出てきていないがメアリー先生も同乗している。

 引率の先生が居るのだから流石のエリオットも遠足の時の様な無茶はしないだろう。

 お世辞にも治安が良いとは言えないパトリシアの領地では、エリオットを放置していたら辺り一帯をすぐに更地にしてしまいかねない。

「フィーナお姉様? 何かお考え事?」

 暫しぼーっとしていたフィーナの様子が気になったらしいシーディがエリオット達から離れて話し掛けてきた。

「いえ、そんな考え事と言う訳では……。そういえば、エリオットさんと一緒にいる皆さんはどういったご関係なんですか?」

 見た目百%ハーレムなエリオットの状況はフィーナから見ても異様だった。

「え〜と、皆大体一緒なんですけど……」

 シーディが、エリオットと取り巻きの女の子達との馴れ初めについて話し始めた。

 彼女の話によると皆が大体同じパターンで、何かしらの悩みやトラブルを抱えていたところでエリオットが登場。魔法でバーンと吹き飛ばして解決……という流れであった様だ。

「私の場合は元々気が弱くて……虐められそうになっていたところを彼に助けて貰ったんです」

 そう過去を語るシーディの言葉に嘘偽りは無いだろう。

 そもそものフィーナと彼女との出会いが、タチアナからの被害から彼女を救った事にある。

 苦しい出来事から救ってもらったら相手に信頼を寄せてしまうのも無理からぬ話だろう。

「エリオットさんって、私が初めてお会いした時と今と……大分変わられた気がするんですけど、シーディさんは何か気になっていたりはしませんか?」

 フィーナは舷側から眼下の景色を眺めながらシーディに尋ねてみた。

 フィーナのエリオットに対する第一印象は入学式の時の新入生代表の挨拶を語った時の生真面目な一年生というものだった。

 それがガラッと変わったのは春の遠足の時の移籍砦での一件である。

 クラスメイトへの影響も無視して破壊魔法を行使してしまった向こう見ずな面は、第一印象のエリオットとはかけ離れた人物像でしか無かった。

「大きな力には責任が付いて回るものです。今のエリオットさんには責任感が感じられ無くて……」

 フィーナは自身がどうしてエリオットを放置出来ないのかは分からずに居た。

 それは彼女の魂に刻まれている女神の時の使命感によるものかもしれない。

「今回の夏休みの休暇が彼にとっての成長の一助となれば良いのですが……」

 今のエリオットを見過ごせば、この世界の将来に禍根を残してしまうかもしれない。


ーヒュンヒュンヒュンヒュンー


 飛空艇の眼下には大平原が広がっており、その光景は平和そのものだった。

 将来の統治者となるアルフレッド王子の為にもこの世界は平和が永く続いていってもらいたい。

 こうしてフィーナの二年目の夏休みは波乱の芽を含んだまま幕を開けたのであった。

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