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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第一章 アルフレッド編

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新生活

 フィーナ達が王都へやってきてから一週間と少し、手探りの状態ながら新しい生活が始まっていた。

 アルフレッドは制服が新調された後、すぐにリーシャと一緒に魔法学校に通い始めた。

 每日二人で元気に登校しており、後は何事も無く平穏な学校生活を送っていってもらう事を祈るばかりである。

 冒険者のミレットとプロージットの二人はあれから間も無く、大きな仕事を請けたとかで白銀の群狼の面々と一緒に王都の北へと旅立って行った。

 王都の北は人の手がそれほど入っている訳では無いので、どういう仕事を請けたのかは分からないが無事に帰ってきて欲しいものである。

 残るフィーナは物置の生活環境を整えた後で勤労を再開、ニワトリと躍る女神亭で働き始めた。

 しかし、仕事内容や労働環境に問題は無いのだが……やはり彼女のメイド服は非常に目立つ。

 常連のお客さんは微妙に慣れ始めたところなのだが、王都だけあって新規のお客さんは每日何人も居る。そのお客が酔っ払いだった場合は大抵

「おい、エルフの姉ちゃん! 踊ってくれや!」

 こういった無茶振りが飛んでくる。こういったやり取りが繰り返されるのがフィーナの目下の悩みの種である。

 しかも、珍しい格好の店員がいるという噂が付近に広がり、輪をかけてお店が大忙しになってしまった。

 もっとも、忙しいという事は給金のプラスにもつながる。実際のところオーウェン家で働いていた時より実入りは良い。

 この調子が続けはアルフレッドの将来も含めての生活の不安は無くなりそうだ。

 そんな事を考えながらフィーナが空いたテーブルを布巾で拭いていると


ーカランカランー


 お店のドアベルが鳴る。

「いらっしゃいませ〜!」

 入ってきたのは二人で下校しているアルフレッドとリーシャだった。お互い友達が出来たら別々に通う様になるのだろうが……

「おかえりなさい、アル。リーシャさん」

 フィーナが声を掛けるとアルフレッドはただいまを言い、店の裏口へと向かっていった。

 一方のリーシャは何か浮かない顔をしている。彼女もまた着替えるために家族用の生活スペースへと行ってしまった。

「リーシャさん、どうしたんでしょう?」

 彼女の表情が気になったフィーナは、近くで食器を下げている途中の栗色のお下げ髪の店員、リーシャの姉アンに声を掛けた。

 リーシャとは歳が離れている彼女にもリーシャの変化は気になったらしい。

「学校でなにかあったのかも。後で聞いときますよ」

 そう言うとアンは食器を両手に店の奥へと行ってしまった。店はそろそろ閑散とする時間でありフィーナの休憩の時間でもある。

 休憩中の女将さんが戻れば交代となりアルフレッドの様子も見に行ける。

「フィーナちゃん、お疲れ〜。休憩行っておいで。夜からまた頼むよ」

 女将さんが裏から出てきたのでここで交代となる。

「ありがとうございます。休憩入りまーす」

 一日中働き詰めではあるものの、貴族の屋敷よりは労働時間が短い分楽ではある。

 休憩時間となったフィーナはアルフレッドの様子を見に行く為に物置の階段を上がる。

 今の時間から夜の仕事始めまでが彼と一日の内で会話出来る時間帯である。

 もうほぼほぼ無いとは思っているがアルフレッドが高熱を発し前世の記憶を呼び覚まさないとも限らない。

 物置の階段を登り二階に上がると

「うわあっ!」

 アルフレッドの驚いた声。こうしてフィーナがやってくるのはいつもの事なのだが今日に限っては何故か予想外だった様だ。

 私服に着替えている途中だったから驚かせてしまったのかもしれないが、これまで同じ事はあってもここまで驚かれる事は無かった。

 彼も日々成長しているという事なのだろうか……と、考えるフィーナだったがどことなく違和感がある。何かを隠している様な……

「アル、おかえりなさい。学校はどうでした? 何もありませんでしたか?」

 フィーナが声を掛けるもアルフレッドの態度は素っ気ない。何かを隠そうとしているかの様な……。

 しかし、その仕草が自然なものでは無いため普段と違う違和感として浮き彫りになってしまっている。

 彼は本棚から一冊の本を手に取ると読書を始めた。

「今、お茶とお菓子をご用意致します。少々お待ち下さい。」

 フィーナも出来るだけいつも通りの振る舞いを心掛ける。一階の炊事場で紅茶とお菓子の準備を進めながらふと考えてみた。

(……やっぱり何か変ですね)

 アルフレッドの様子が変なのは分かるが、原因は彼から聞き出さない事には始まらない。

 紅茶とお菓子をのせたお盆を手にフィーナはアルフレッドの元へと戻る。

「お待たせしました」

 テーブルにお茶とお菓子の用意をしつつアルフレッドの様子を伺う。ありがとうと言い彼はカップを手にした。

(あ……!)

 アルフレッドがフィーナの用意したお茶を手にした時疑念は確信となった。

いつもなら右手だけで本を読みながら紅茶をすするところを、わざわざ取り辛い左手を使い右手を添える様にして紅茶を飲んでいる。

「アル、私に何か言いたくない事がおありですか?」

 フィーナは少し寂し気な表情で言ってみた。

「ち、ちがうよ! なんでもないから! なにもないから!」

 明らかに図星なアルフレッドの態度だが、やっぱり何かを隠そうとしているのは変わらず。仕方なくフィーナは実力行使に出た。


ーグイッー


 フィーナはアルフレッドの右手を握りシャツの裾をめくり上げる。動作があっと言う間だったのでアルフレッドには隠す間も無かった。

「アル。これはどうしたんですか?」

 フィーナが指摘するまでも無くアルフレッドの右腕には青アザが出来ていた。どう見ても誰かから受けた外傷にしか見えない。

「言いたくないのなら無理にはお聞きしませんが……以後お気をつけ下さい」


ーパアアァァァー


 彼にヒールを掛けつつフィーナはアルフレッドに苦言を呈する。出来れば素直に話して欲しかったが無理強いして頑なになられてもあまり良いものでは無い。

 おそらくだがリーシャが浮かない顔をしていたのもアルフレッドの怪我に関係しているのだろうから、アンが何かしらリーシャから話を聞いているかもしれない。

 後で彼女から話を聞いておくべきだろう。

(大事でなければいいんですが……)

 事と次第によっては魔法学校に乗り込んでモンスターペアレントと化す事も辞さない覚悟はある。

 何だか取り残されている様なモヤモヤした気持ちを抱えたままのフィーナであった。



 翌日、宿屋にて朝の混雑時間を乗り越えた食堂にフィーナとアン、女将さんの三人の姿があった。

 彼女らの話の内容は自分達にとって大事なアルフレッドやリーシャに関する事である。

 彼女らがアルフレッドやリーシャから聞いた話を総合すると二人が学校でイジメられているかもしれないという結論に至った。しかし、全ては状況証拠と推測でしかない。

 そこで店を空けても一番支障の無いフィーナが魔法学校に行き様子を見てくる事になったのだ。

 学校にこっそり潜入し現場を抑え確認する、それだけで任務は完了である。

 うっかり事件現場に出くわし詳細を視認する家政婦の様なモノである。

 メイドもある意味広義での家政婦とも言えなくはないからフィーナが現場確認役を務めるのは適任と言えよう。

「それじゃ行ってきます」

 フィーナは二人に挨拶すると魔法学校へと向かっていくのだった。

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