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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編

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診療所

 オーガ達の夜襲を切り抜けた一行は、再び何かの襲撃を受けてはたまらないと帝都への強行軍を開始した。

 皆、度重なる戦闘に疲れていたが気力を振り絞り夜明け前に無事に帝都に辿り着く事が出来た。

 メンバー達はとりあえず冒険者ギルドに向かいそこで翌朝の宿屋の受付開始まで時間を潰す事となった。

 フィーナは担架ごと冒険者ギルドの隅に降ろされ、明日の教会行きを待つ予定である。

 席に着いたデビット達の話題は女神レアの事でもちきりだった。

 神の奇跡を見た、しかもキング戦の時の様な大人数相手の奇跡では無く、一冒険者パーティーでしかない自分達を助ける為に女神様が降臨された事の特別感により気持ちが高揚している様だった。

「あんな女神様が世界を見守ってて下さるんなら安心だよな」

「お綺麗な女神様だったよな〜」

「清楚で奥ゆかしくて慈愛に満ちた感じだったな、あれは」

「神の教えにあります。信じるものは救われます……と。神はいつも見守っておられるのです」

 デビット達は興奮冷めやらぬといった感じでレアを見た感想をそれぞれ語っていた。

(…………)

 そんな彼らをフィーナは冷ややかな目で眺めていた。

 実際のレアを知ったらどれだけ理想と現実の差に打ちひしがれるのだろう……と。

 しかし、外見がほとんど変わらないのに、ザック達までレアの降臨に感激している様なのが釈然としなかった。

(意外と気付かれないものなのでしょうか……?)

 誰か一人くらいは気付いても良さそうなものなのだが……。

 サラマンダーを撫でながらフィーナは日頃から自身が女神である事を隠すために気を使っている行為がただの徒労なのではないかと思い始めていた。

 意外と他人は人の事を気にして見ていない。今の異世界では無理だろうが次からの出張では女神の姿のまま降りてみるのはどうだろう?

 異世界に降りる時の格好について、特に転生課から何か言われている訳ではないし、変装は信仰心の業務上横領を恐れるフィーナ自身の配慮でしかない。

 だが、次の出張を考える前に今の仕事をなんとかしなければならない。ザック達の今回の仕事でも全滅する事は無かった。

 とは言うものの、往路でのゴブリンの待ち伏せやオーガの多数を仕留めるためにフィーナがでしゃばって解決に貢献してしまった事から考えると、彼らだけで大丈夫なのかと不安にもなってしまう。

「……痛っ!」

 人の事を心配している場合では無い。フィーナ自身もかなりの重傷なのだ。

 目下の彼女の課題はいち早く怪我を治してザック達と同行する事なのだが……自分でこっそり治してしまったらフィーナには良い感じで言い訳出来る自信が無い。

 やはり、教会の高位の聖職者の人に治してもらうのが自然なのだろう。

 幸いにも金銭的には余裕がありすぎるから、寄付を要求されたとしても難なく対応出来るはずである。もし足りなければ神力で密造してしまうのも已む無しだろう。

 ザック達はとりあえず朝に街が動き出したら一旦解散し各々がやりたい事をしに街へ繰り出し、今後の事については後から考えようという話になった様だった。

 フィーナの事は街に出る時についでに教会へ連れて行ってくれるのだそうだ。

 動けなくなる程の怪我を負ってしまった自分にションボリしつつフィーナは街が動き出すのを待つのだった。



 翌朝、ザックとガイ二人の手で担架で教会に運ばれたフィーナは教会内ではなく、とりあえず教会の裏手にある木造の傷病者用診療所に入る事になった。

 重症の者はここで高位の聖職者による治療を待つ事になるのだそうだ。

 教会に行けば待ち時間無しですぐに対応して貰えるRPGゲームの様な風にはならない様である。

 診療所の中は、かなりの数の治療待ちの人々でひしめいておりベッドは満杯に近い。

 あまり考えた事は無かったが……危険な冒険者家業が一般化している世界であるなら、現場での回復魔法では対応出来ない様な傷病者が沢山居たとしても何の不思議も無い。

 また、重症者をあっという間に治せる聖職者ならば、危険な冒険者家業にわざわざ身を窶す必要が無い。

 なぜなら、こうして街に拠点をかまえるだけでお客には困らないはずだからだ。魔法があるとは言え、異世界も色々と不便なところはある様だ。

 診療所に移されたフィーナはベッドの一つをあてがわれ、高位の聖職者の診察を待つ事となった。

「ここの偉い人はすごい方だと聞いています。だからすぐに良くなりますよ!」

 マリーはそう言ってくれたが、自分が今後どうなるのかさっぱり見当が付かない。

「フィーナさん、たまにお見舞いに来ますから頑張って下さいね〜!」

 イレーネはそう言うと、ニヒヒと言う笑顔を見せながら沢山の空き瓶が入った荷物箱を背負って街へと言ってしまった。

 フィーナを運んでくれたガイとザックの二人も

「ま、これまで大変だったんだからゆっくり休めよ?」

「定期的に観に来るから心配はするな。何かあったら伝えに来る」

 ガイとザックはそう言って診療所から出ていった。

 ビリーも皆と一緒には診療所に来た様だが、特に何も言わずに行ってしまった。

 フレデリカ達やデビット達のパーティーとは冒険者ギルドの入口で別れているので彼らは診療所には来ていない。

 一人診療所に残されたフィーナだが静かに物思いに耽るという様な環境では無かった。なぜなら……

「うお〜! いてぇ〜! いてぇよ〜!」

「アニキ〜! いてぇよ〜! アニキ〜、アニキィ〜!」

「し、し、し、死んじまう〜! 早くしてくれ〜!」

 血気盛んな冒険者家業の重症者が多いのだ。 うるさいのは当然と言えるだろう。

 ザック達が挨拶もそこそこに診療所から出て行ってしまったのは、この辺りの騒音事情も関係しているのだろう。

 けたたましく絶叫する彼らの癒しとなるのが白衣の天使……ではなく、マリーの様な白い法衣に身を包んだ駆け出しの聖職者達である。

 彼女達は苦しむ冒険者の男達に優しく接すると順番にヒールを掛けていく。

 そうすると一時は静かになるのだがすぐにまたうるさくなるのは仕様である。

 傷病者によっては静かにじっと痛みに耐えている者もいるのだがそういった者はごく少数であった。

 どうやらすぐに怪我を治してもらえるというものではない様でフィーナはしばらくこの診療所でお世話になるしかなさそうである。

 膝の上で丸まるサラマンダーを優しく撫でながらフィーナはけたたましい診療所での生活を覚悟するのだった。

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