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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編

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泡沫の夢

(ん……?)

 フィーナが目覚めた時、彼女は見覚えの全く無い空間に漂っていた。

 水の中に居る様な不思議な感覚と、時間と共に身体が底に沈んでいく……が、特に息が苦しかったりとかは無い。

 だが、自分の意志とは裏腹に身体は沈んでいく。上下の感覚すらあやふやだが沈んでいく先は何も見えない暗闇だ。

 眼の前の離れた場所には木漏れ日が差す様に明るく暖かそうな空間が見えた。

 フィーナはたまらなくその暖かそうな場所に行きたくなったが……

(くぅ……、と……届かない……!)

 沈んでいく身体をなんとか浮き上がらせようと両手で水を掻く様に何度も動かすがそれは全く無駄な行動だった。

 身体に浮力が全く無く、何をしてもただただゆっくり沈んでいくだけ。

 自らが進む先の暗闇に言いしれぬ恐怖を感じたフィーナは

(嫌っ! 嫌ぁっ! 助けて……誰か助けて!)

 眼の前の明るい空間に向けて必死に手を伸ばす。だが、伸ばした手は何も掴めないまま、空を切るばかり。

 それでも諦めずに水を掻き続け手を伸ばしていると


ーギュッー


(あ……!)

 何者かに手を握られた感触が伝わってきた。フィーナの手をしっかりと握ってくる小さい両手の感覚……伸ばした自分の手を見てみてもそこには何も無い。

 しかし自分の身体が沈まない様に一生懸命掴んでくれている小さな手の感触には覚えがあった。

(アル……!)

 彼の小さな両手はフィーナを暗闇から引っ張り出してくれる様に力強くフィーナを持ち上げてくれた。

 彼女の眼の前に木漏れ日の様な優しく暖かな光景が近付いてきた。

 それと共にフィーナの視界は白くぼやけた様になっていく。

 それでも、フィーナには不安に感じる様な事は何一つ無かった。



「フィ……さ……! しっ……」

 何か人の声がフィーナの耳に聞こえてきた。声が遠いのかあまりはっきりとは聞き取れない。

 何度も聞こえてくる声に、フィーナは耳を澄ませて聞き取ろうと努める。

「フィーナさん! 大丈夫ですか!」

 色々な人の声が聞こえた気がしたが、はっきりと耳に響いてきたのはイレーネの声だった。

 その声でフィーナはようやく自分が何をしていたのか、何があったのかを思い出してきた。

 サハギンに襲われ溺れかけていて意識が途切れてしまったのだった。

(はっ……!)

 フィーナが目を開けると自身が床の上に寝かされているのが分かった。

 そして、自分を介抱していてくれたであろうマリーと、フィーナの無事を確認する為に覗き込んでいるイレーネとサラマンダーも居るのが分かった。

 その後ろにはレイチェルとアリッサの姿もある。ザックとガイの姿は見えないが……

「覚悟しろよ! この魚野郎!」

「ぬうううぅぅぅん!」


ーズバッ! グシャッ!ー


 どこからか彼らのはしゃぎ声と斬撃音が聞こえてきている。

「あの、サハギンの集団は……?」

 フィーナが上体を起こし辺りを見回すと自分の居る場所が少し広めの通路の一角である事が分かった。

 フィーナがサハギンと戦った場所からそう離れていない。フィーナは全く覚えていないが溺れかけたところですぐに助けてもらえたらしい。

「サハギンは私があらかた倒しちゃいましたから安心して下さい。残りは脳筋ズが片付けてますから」

 意識が戻ったばかりでややぼーっとしているフィーナにイレーネが話しかけてきた。

「サラマンダーさんが水に潜って引っ張り上げようとしてたから私達もすぐに見つける事が出来たんですよ? 気を付けて下さいね?」

 今度はマリーに苦言混じりに注意されてしまった。

「あぎゃ!」

 サラマンダーが特等席と言わんばかりにフィーナの肩にのってきた。夢で感じた両手の感覚はサラマンダーのものだったのだろうか……?

 フィーナが試しにサラマンダーの眼の前に手を出してみるとサラマンダーが反射的にフィーナの手を掴んできた。

(…………)

 夢の中で感じた感触とは違う様に感じたフィーナだったが、サラマンダーが命の恩人である事に変わりは無い。

 フィーナがサラマンダーの頭を撫でるとサラマンダーは気持ちよさそうに目を細めている。

「お、フィーナ。気が付いたか」

 サハギンの掃討が終わったらしいザックがフィーナのところにやってきた。

「ビリーのやつは居なさそうだぞ。ヤツの遺留品みたいなモンも無いしな」

 続いてサハギンの掃討がてらビリーの痕跡も探していたらしいガイも戻って来た。

 これだけ探しても居ないならビリーは下水道では無く他の場所に逃げたのだろうと結論付けた。

 他のメンバーが全員見つかった事で行方不明者の捜索は一旦打ち切る事として、フィーナ達は下水道を後にするのだった。



 下水道から出たフィーナ達はとりあえず旧市街地をぐるりと一回りしてから帝都に戻る事にした。

 ビリーがその辺に隠れているのではないかと期待したのだが、彼の姿はどこにも無かった。

「クシュン!」

 程度への帰り道フィーナはくしゃみを何度かしていた。それを見たマリーが

「大丈夫ですか? 身体が冷えてしまったんでしょう」

 フィーナの身体を気遣ってくれた。

「それなら帰りにお風呂行きましょ? あなた達も疲れたでしょ?」

 今度はイレーネが名案とばかりに浴場行きを提案してきた。新人冒険者の二人も巻き込んでの提案である。

「お、お姉様と御一緒して良いんですかぁ〜! ありがとうございますぅ〜♪」

 意外な反応をしてきたのは新人冒険者の魔法使いアリッサだった。

 服装だけならイレーネと同門の先輩後輩に見えなくもない。フィーナが意識を失っている間に何かあったのだろうか……?



 冒険者ギルドへの帰り道、フィーナ達はザックとガイの二人と分かれて公衆浴場へと向かった。

 公衆浴場に着いた一行は手続きを済ませゾロゾロと脱衣場へと入っていく。

 ここの公衆浴場は帝都にあるだけあって冒険者向けのサービスも充実しており装備品や衣類のクリーニングサービスがある。

 フィーナも神力を使えばあっと言う間に綺麗には出来るのだが、今回は折角なのでクリーニングサービスを使用する事にした。

 下水道に落ちてしまったので衣類のほぼ全てをお願いする事にするのだった。

 フィーナが衣類や装備品を纏めて脱衣場に併設されているクリーニングサービスの受付に持っていくと

「フィーナさん、これどーすれば良いんですかニャ?」

 ロッカーの前でオロオロしているレイチェルが話し掛けてきた。

 彼女はロッカーを前に何をどうしたら良いのかがさっぱり分からないらしい。

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