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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編

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旧市街地の地下

 マリー達を見送ったフィーナ達は当初の目標であった巨大ゴキブリが潜んでいたとされる地下下水道の入口を目指して旧市街地を歩き始めた。

 冒険者ギルド受付嬢の話によると、目抜き通りの一角に下水道管理の為のメンテナンストンネルに続く入口があるとの事。

 件の冒険者達が散り散りになって逃げたのなら、土地勘の無いビリー達であれば少しでも慣れているであろう下水道に逃げ込んだ可能性がある。

 少なくとも、旧市街地の街中よりは知っている場所のはずだ。フレデリカの話によると格闘家と魔法使いの仲間は二人共女の子であるそうだ。

「マジでか……」

 話を聞いたザックの顔が見る見る呆れの表情に変わっていったのが印象的であった。

 多勢に無勢で戦闘に特化した職業じゃないとは言えビリーは女の子を囮にして逃げてしまったのだ。フレデリカが率先して囮役を買って出たとは言え

「他にやりようがあるだろ……」

 ザックは頭を抱えてボヤいていた。そんな身内の不始末に頭を抱えているザックをよそにイレーネがフィーナに話し掛けてきた。

「フィーナさん? 後で私と一緒に道具屋に付き合ってもらえませんか? あのマジックポーションの瓶、フィーナさんが使った亊にすればすっごく高く引き取ってもらえると思うんですよね〜!」

 彼女はニッコニコで自分のプランを披露してきた。確かに品物に付加価値を加えて高値で販売するのも珍しい話ではない。

 だが、イレーネのプランは世間一般で言うところの詐欺と呼ばれる犯罪行為である。

 天界に属する女神としてはそういった不正は見過ごせないし見て見ぬ振りをしようものなら懲戒免職もありえない話では無い。

「駄目ですよ。そんな亊しては」

 フィーナは金銭欲丸出しのイレーネを窘めた。善悪を別にしても、正直そういったニッチな性癖に関する事にはあまり関わりたくないのが本音である。

 フィーナが人間だった頃に生きていた極東の島国を棚に上げて言える亊ではないかもしれないが

(ここの異世界大丈夫なんでしょうか……?)

 今の自分がいる異世界にフィーナは若干の不安を覚えていた。

 前回のアルフレッドの世界と言い、この異世界と言い成人男性にやや問題があるのは問題ではないのだろうか?

 これは異世界を預かる女神としてのレアの管理責任が問われる問題ではないのか?

 天界に神々のゴシップや不祥事を追求する組織が存在しないのは不幸中の幸いだったと言えなくも無い。

 フィーナが無言で考え込んでいるのが気になったのかイレーネが

「そんなに気にしないで下さいよぉ〜! フィーナさんにそんな亊させたらアルさんに怒られちゃうじゃないですかぁ〜?」

 明らかにわざとアルの名前を出してきた。ニヒヒと目を細めて悪戯っぽく笑っている。今のイレーネに悪魔羽と尻尾を付けたら紛れもなく立派な小悪魔に見える亊だろう。

「おい、イレーネ。フィーナをあんまりからかうんじゃない」

 前を歩くザックから、顔を赤くして言葉に詰まっているフィーナに助け舟が出された。

 ザックに注意されたイレーネはリスの様に頬を膨らませて不満を顕にしている。

「なによ〜! ムッツリ君の分際で〜!」

 イレーネはそう言うと唐突にフィーナの肩に手を回し、耳寄り情報みたいなノリでフィーナに耳打ちしてきた。

「あのねぇ、ムッツリ君ったら最初の頃は私の亊年上だと思ってたみたいなのよね〜。ガチガチに緊張しちゃってイレーネさんとか言っちゃって、あれは面白かったんだから〜♪」

 それはザックにとって本当にご愁傷様と言わざるを得ない。下手したら今後何十年もこのネタでおちょくられるのでは無いだろうか。

 そんな不憫なザックにフィーナは改めて哀悼の意を表した。

 なぜならこれはザックの社会的な死を意味する程に彼にとっては他人に知られたくない恥部のはずだ。

 前を行くザックを見たフィーナは彼が歩きながらワナワナと震えているのを見逃さなかった。

「お前、それは言わない約束だろう? それならお前の事だって話してやるからな!」

 ザックは振り返りイレーネに対し啖呵を切ってきたが当のイレーネには心当たりが全く無い様だ。

 ザックが放し始めたのはガイやマリーが加入するよりも随分昔の話の様だ。

「最初の頃ケンタウロスに襲われた亊あったよな? なんとか逃げ出した帰り道の馬車の中でお前俺にもたれ掛かってきてパパ……とか言ってきたんだぞ!」

 ザックの暴露はイレーネには予期せぬ出来事だった様だ。しっかりとした記憶は無くてもうっすらと心当たりがあるのだろう。

「ししし、知らないわよ! そんな昔の話! アンタ話盛ってるでしょ!」

 イレーネにしては珍しく顔を真赤にして狼狽している。

 一方のザックはしてやったりといった得意気な顔をしているが、フィーナから見ればただの痛み分けにしか見えない勝利者の存在しない虚しい争いでしか無かった。

「あ、あの……こんなやり取りが出来るお二人は信頼し合っているんですね。少し羨ましいです」

 場の雰囲気を察したフィーナが慌ててフォローになってないフォローで二人の間に割って入った。

「信頼? じょーだん! こんなムッツリ!」

「そうだな。こんな可愛げも無い奴選ぶほど物好きじゃねーわ」

 二人はすっかり喧嘩状態になってしまった。

(犬も食わないというアレでしょうか……?)

 火に油を注いだにも関わらずフィーナは二人の関係を全く心配していなかった。

 この程度の痴話喧嘩などは時間が解決するだろう……と。そんなお気楽な女神が自分の読みの甘さを後悔する事になるのはそう遠い未来の話では無かった。



 地下へ続く入口を見つけたフィーナ達は狭い通路を下層へと降りていった。索敵役という事もあり、フィーナを先頭に次がイレーネ、殿がザックという隊列だった。


ージワアァァ……ー


 通路を下層に進むに連れ段々と湿気が酷くなっていく。松明に照らされた通路には敵の姿は何も見えない。

 一本道の通路の最下層まで降りると鉄格子の門があり、その先には広大な下水道が広がっているのが見えた。


ーギギイィィィ…ー


 酷く軋む鉄格子の扉を開けて下水道に出ると、それなりに水の流れのある水路より一段上がった足場が縦横無尽に走っていた。

 足場を活用すれば水路に降りる事無く下水道内を捜索出来るだろう。

 しかし、地下だけあって松明以外に光源が無いのはやはり不安ではある。気を抜いたら足を踏み外して水路に落ちてしまいそうだ。

 ちなみに下水とは言っても長年の雨水で洗い流されたのか、それほどの悪臭も無く捜索するには何の問題も無かった。

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