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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編

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鉱山

 砂漠の街を発って一日経過した頃、ようやく鉱山のある山脈の入口に辿り着く事が出来た。

 山脈の山頂付近には雪が積もっており雪解け水に不足は無さそうに思える。

 また、坑道の入口には小屋がいくつかあるが人気が全く無い。

 「皆、一応気をつけておけよ。何があったのかもわからないんだからな」

 ザックが剣を抜きメンバーに注意を促す。ガイは新しい戦斧を手にパーティーの先頭に立ち小屋の間を奥へと進んでいく。

 鉱山の入口付近は山脈が太陽の陰となっているので多少は過ごしやすい。 


ーボウッー


 フィーナはウンディーネの代わりにサラマンダーを呼び出した。

 久しぶりに呼び出したサラマンダーはフィーナの肩にのると彼女の顔にスリスリと顔を擦り付けてきた。仕草が完全にネコである。

「サラマンダーさん、近くの警戒をお願いします」

 フィーナの指示にサラマンダーは小屋の陰へと消えていった。

 坑道への入口近くまでパーティーは何事も無く進んでいった。

 何かに襲撃をされた様な形跡も無く、本当に人だけが忽然と姿を消してしまっていた様だった。

 坑道の入口近くには鉱石を積んだままのトロッコが何台か放置されており、ツルハシなども地面に無造作に置かれていた。

 坑道内には線路が敷設されており中々に大規模な坑道施設の様だ。

 外には何の異常もない事を確認したザック達一行はいよいよ坑道の中に入る事となった。

(…………)

 ザックとガイが先頭に立ち坑道に入っていく中、フィーナはレアの背中に隠れる様に立ち坑道に入るのに怯えている様だった。

「フィーナさん、大丈夫ですよ。私が付いてますから。どんな敵も魔法でお茶の子祭々です」

 親指を立ててニッコリと笑うイレーネは安心感を与えてくれる。

 彼女に任せれば本当にどんな相手が来ようとも蹴散らしてくれそうな気さえする。

 実力的にはどう考えてもフィーナがその立ち位置に居ておかしくは無いのだが、メンタル豆腐な今のフィーナには荷が重い話であった。

「フィーナさん、皆さん居ますから心配しないで下さい。何が合っても見捨てたりしませんから」

 最後尾を歩くマリーがフィーナを元気付けようと話掛けてきた。皆に気を使ってもらってフィーナが申し訳なく思っていると

「フィーナちゃんったらいつまで経っても怖がりなんだから。ママも困っちゃうわ〜」

 フィーナの前を行くレアが煽り気味に声を掛けてきた。いつもなら直ちに反論するなりどつくなりして否定の意思を示すのだが

(…………)

 フィーナは小さくなったまま無言で皆の後を付いていくだけだった。

 以前に暗がりでタイラントスパイダーに襲われた一件が相当なトラウマになっている様で、簡単に克服出来る様な出来事では無い。

 身動きが取れない体制でタイラントスパイダーに背後から覆い被せられたのだからトラウマになっても仕方のない話ではある。

 フィーナも女神とは言っても精神的には並の人間と大差は無い。


ーギュッー


 フィーナは前を歩くレアのマントを強く握って不安に抗おうとしている。

 坑道内の本道らしい太めの通路をパーティーは皆で注意しながら進んでいた。

 枝葉の通路はサラマンダーが往復で確認してその度にパーティーの最後尾に戻ってきていた。今のところは何の異常も無いらしい。

 坑道本道には線路が敷設されそれが奥まで続いており逃げる時には目印になりそうだ。

 反面暗闇では躓く原因になりそうな気はするが。フィーナ達の近くにサラマンダーが居る間は自動で照らしてもらえるのが松明要らずでありがたい。

 もっとも枝葉の通路があればそっちの調査に向かってもらう為、松明を付けている事に変わりは無い。

 坑道内は外の砂漠と違い湿気が酷い事になっていた。砂漠を歩いてきて汗だくになっていたフィーナ達にとってこの湿気は最悪だった。

 嫌でも汗と湿気で服がまとわりつく。ベタついて不快指数はMAXを振り切れていた。

「なんなのよ、この蒸し暑さー! 乙女に対する配慮がなってないわよー!」

 特に黒のローブを着ているイレーネは過ごしにくそうだった。袖の辺りが特にベタついて気持ち悪いらしく腕をブンブンと動かして気を紛らわせている。

「おい、静かにしろ! 俺だって気持ち悪いんだ!」

 先頭を歩くザックからも愚痴に似た注意が飛んできた。プレートメイルを着込んでいる彼の不快さは想像に難くない。

 暑苦しいガイが隣に居るのだから暑苦しさは五割増だろう。



 坑道の本道は途中から緩やかな下り坂になっており、奥へ進むに連れ空気が籠もり始めてきた。

 かなり奥へと進んできたはずだが未だに人の気配は無い。

「皆で集まって抗議集会でもしてんのか?」

 あまりに何も出てこない状況に焦れてきたのかガイが冗談を口にし始めた。

 鉱夫でも敵でも良いから変化が欲しい様だ。このまま最奥まで進んで何も無しだったら仕事は失敗。

 完全なタダ働きになってしまう。原因も分からず鉱夫達の行方も知れずでは報告のしようも無いし報酬など出るはずも無い。

「そんな訳あるはずがないですよ。わざわざ奥で集まる理由がないじゃないですか」

 マリーがツッコミを入れる。確かにこんな蒸し暑いところに好き好んで下りていく者は居ないだろう。

 しかも、奥へ進めば涼しくなるかと思ったが、徐々に室温が上がってきている気がしなくも無い。

「なんだか妙じゃないか? なんでこんな熱くなってきてるんだ?」

 ザックが明らかにイレーネに向けて質問を飛ばしてきた。そんな事をいきなり聞かれたところでそんな事彼女にも分かるはずも無い。

「そんなの分かる訳ないじゃない。とっとと先に行きなさいよー!」

 イレーネは面倒くさそうにパーティーリーダーの質問に答えた。彼女が知らないという事は他に何か知っていそうなのはレアだけとなる。

(レアさんは何か知りませんか? 歴史的に何かがあったとかこんなトラブルがあったとか……)

 フィーナはこの異世界の責任者に尋ねてみる事にした。これだけの鉱山の鉱夫が行方不明になるのではそれなりに大きな事件のはずだが……

(フィーナちゃんは私が何か知っていると思う?)

「質問に質問で返さないで下さい! 真面目な話してるんですから!」

 レアの受け答えにイラッときたフィーナは思わず大声で口に出してしまった。

 しまったと思った時には既に後の祭り、レアを除く全員の視線がフィーナに向けられる事となった。

 アワアワと言い訳を考えているフィーナに

「ごめんなさいね〜。うちの娘ったらたまに変な事口走っちゃうのよ〜、なんだか変な声が聞こえてるみたいな?」

 レアがフィーナの肩をバンバン叩きながらフォローを入れてきた。全ての元凶であるのにこの言い草である。

 しかし、母親の言っている事ならと妙に納得されてしまい当のフィーナは変な人扱いで終わってしまった。

「フィーナさん? あの……辛い事とかあったらいつでも相談にのりますからね?」

 イレーネに優しげな顔で慰められてしまう始末であった。

「親愛なる至高神よ。この者の魂に安らぎと平穏を……」

 マリーからも気を使われて、神に慈悲をお願いしますと祈られてしまうくらい心配されてしまっていた。

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