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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編

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222/821

生存者

 馬を収納空間から出したは良いものの、どこか馬を繋いでおける場所はないかと三頭の馬の手綱を手にフィーナが適当な何かを探していると

「あれ? 馬なんかどうしたんだ?」

「うひゃあ!」

 突然ザックに話し掛けられたフィーナは腰を抜かさんばかりに絶叫してしまった。

 手綱を手にしていなかったら尻もちを付いていた位には大きなリアクションをしてしまった。

 そんな彼女の大声に他の人々も目を覚まし徐々に起き始めていた。そして、一体何事かとゾロゾロと集まりだしてきた。

 こっそり馬を繋いでおこうとしていただけなのに、予想外の事態になってしまった。

「なんだ、エルフのねーちゃんじゃねーか」

「馬なんか連れて何やってんだ?」

 盗賊の二人が怪訝そうな目でフィーナを見ている。

「あ、えーと……念の為に近くの地面を調べておこうと思っただけでして……」

 特にやましい事をしていた訳ではないのに、完全に挙動不審に見えてしまっている。

 しかも、馬に関しての何の答えにもなっていない。そんなフィーナを見ていた隊商の一人が

「ダニエル! リチャードにジェイコブまで! 無事だったのか!」

 岩場から降り三頭の馬に駆け寄った。隊商の男は涙を浮かべながら愛馬達との再会を喜んでいる。

「でも、馬なんてよく見つけられましたね。今まで影も形もなかったのに」

 イレーネが素直な感想を述べた。その発言に他意は無く思った事をそのままに口にしただけだった。

「あははは〜……」

 笑って誤魔化しているが、当のフィーナは冷や汗ダラダラ心臓バクバクだった。

 まかり間違っても自分の収納空間から馬を出しましたとは言えない。

「は、はは……たまたま見つけただけですよ」

 フィーナは笑って誤魔化す事しか出来なかった。

 隊商の男が馬達の無事を確認し終え岩の上に戻ったのを見てフィーナも岩の上に戻る事にした。

 安全を確認したとは言え、いつまでも地面の上に居るのはあまり気分の良いものでもない。

「よいしょっと……」

 ザックとガイに手を引いてもらい岩場の上に登ったフィーナを待っていたのは腰に手を当て仁王立ちで待っていたマリーだった。

「え、あの……マリーさん?」

 いつもと違う彼女の雰囲気にフィーナは怖々と尋ねる。

「フィーナさん! あなたは軽率過ぎます! 一人で地面に降りて敵に襲われたらどうするんですか!」

 マリーに怒鳴られフィーナは身体をビクッと大きく震わせた。

 岩の上に正座させられた彼女はシュンとしてしまい、下を向いて俯いてしまった。

 長い耳は垂れ下がってフィーナの感情を分かりやすく表現している。

「あ、それは……一応降りる前にノームさんに確認はして頂いたので……」

 フィーナは叱られた子供の様に小さな声で弁解するが

「今回に限った話じゃありません! ゴブリンの洞窟の時だって先行して危なかったじゃないですか!」

 以前のゴブリン退治の時の事まで持ち出されてしまってはフィーナにはごめんなさいする事しか出来無い。

「す、すみませんでした……」

 小さくなって頭を下げるフィーナにマリーは

「お願いですから危ない事は控えて下さい。もう眼の前で誰かが居なくなってしまうのは耐えられませんから……」

 フィーナの眼の前にしゃがみ両肩を揺さぶる様にして涙目で訴えかけてきた。

「気を付けます……」

 フィーナはションボリしながらも自戒の意味を込めてマリーの言葉に答えた。

 ガイが彼女のお説教を全力で回避していた理由が少し分かった気がする。

 そんな純粋に人の為を考えて叱られたら誰でも自分の不甲斐なさにいたたまれなくなってしまうだろう。

 現にフィーナは自分の力不足と思慮の足り無さに自己嫌悪気味になっていた。

 自分ではきちんと考えて行動しているつもりなのだが、傍目からはそうは見えていないらしい。

(…………)

 怒られた上にダメ出しまでされてしまったフィーナはすっかり落ち込んでしまった。

 だが、少し経てばケロッとしてしまうのが彼女の長所であり欠点でもある。皆が再び寝静まり、そろそろ日が登ろうとしている頃、突然

「ヒヒーン!」


ーパカラッパカラッパカラッ……ー


 馬の蹄の音が聞こえてきた。その音に飛び起きたのはフィーナだけでは無く隊商の馬の飼い主も同様だった。

「ジェイコブ!」

 隊商の男が馬に向かって叫んだ。しかし馬は誰かをのせて走り去ろうとしている。

 こんな暗い中でよく馬を見分けられるな……と、フィーナは感心していたが今はそれどころでは無い。

 騒ぎに気付いた他の人達も起き出しゾロゾロと集まってきた。

「馬が! ジェイコブが盗まれた!」

 飼い主である隊商の男が集まった人達に端的に説明する。それを聞いた盗賊達は仲間が一人欠けているのに気付き

「カシムの野郎! 一人で逃げやがった!」

 盗賊の首領が大声で怒鳴った時には

「いつまでもこんなトコにいられるかよ〜! 俺はアジトに帰るぜ〜!」

 してやったりといった感じで遠ざかるカシムから煽り文句が飛んできた。それを聞いた首領はすぐさま皆の前で膝を付き盛大な土下座を始めた。

「申し訳ない! あいつは俺が地の果てまででも追い掛け落とし前を付けさせる! 本当にすまないと思っている!」

 何度も額を岩に押し付ける首領の有り様は、問題ある部下に頭を悩ませる上司の悲哀を感じさせた。

「いや、アンタのせいでは無いだろ。部下の管理不行き届きっつっても限度があるからな」

 そんな首領が他人事に見えなくなったのか何か通ずるものを感じたのかザックがフォローに入った。そんな時


ードオオォン!ー


「ヒヒーン!」

「うわあっ!」

 爆発音の様な大きな音が辺りに響いた。同時に聞こえてきた馬とカシムの悲鳴に人々は何事かと様子を見守った。すると


ーパカラッパカラッパカラッー


 馬の蹄の音が岩場に近付いてくるのが分かった。岩場にやってきたのは馬だけでカシムの姿は無い。

「嫌だぁ! 助けてくれぇ!」

 代わりに聞こえてきたのは助けを求めるカシムの悲鳴だった。

 だが岩場からカシムの所までは距離があり過ぎた。敵の姿が見えないのでは出来る事は何も無い。

 一方、サンドワームがまだ近くに居る事を確信したフィーナ達はまず馬達を岩の上に避難させる事から始めた。

 幸いと言うかカシムを襲っている個体以外のサンドワームが居る雰囲気は無い。

「助けてくれぇー! 死にたくなーい!」

 カシムの悲鳴が消える頃にはフィーナ達は全ての馬を岩場の上に避難させたのだった。

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