サンドワーム戦
ードオオォォ゙ン!ー
突然、進行方向に大きく土煙が舞い上がり地面から巨大な円柱形の薄黄色をした物体が立ちはだかった。
「キシャアアァァーッ!」
その姿は芋虫をそのまま大きくした様な巨体だった。薄黄色の体は表面には何も無く先端の頭部は大きな円形の口がある。
その口の中には牙が口の内側の円周に沿って生えているのが見え、その牙は奥に向かって何重にもなっていた。
頭部の周りには小さな黒い点の様なモノが全周に渡って等間隔に配置されていて多分目の様なモノだろう。
口からは長い舌が何本も出ており、口の周りにも細い触手の様なモノが生えイソギンチャクの様になっている。
(あれがサンドワーム……!)
ウネウネと動く触手のその様はフィーナを恐怖させるのに十分だった。
「ガイ! 行くぞ! 今なら叩ける!」
「おう!」
ザックはガイに声を掛けサンドワームに斬り掛かりに行こうとした。
ガイもようやく見せ場を作れると腕が鳴っている様だ。サンドワームは全長は分からないが地面から出ている部分だけでも七〜八メートルはある。
そんな体格差がある相手にどう戦うのかとフィーナは考えていたが、ザックとガイはサンドワームの根本をひたすら斬り付けるだけだった。しかし
「くぉらぁ! 脳筋共、んな事やっとる場合かぁ!」
岩場に駆けながらイレーネがサンドワームと戯れているザックとガイを怒鳴りつけた。
「なんだよ! お前も魔法で援護しろよ!」
「うおらあぁっ!」
イレーネに怒鳴りつけられ、たまらず反論し魔法の援護を要請するザックと、戦うのにノリノリなガイだったが
「あんた達、いつまでも地面が凍ってる訳ないんだからね! 早く逃げないとサンドワームのおやつよ!」
イレーネからの指摘にザックは改めて現状を再認識したらしく
「ガイ! 逃げるぞ!」
「なんだ、もう引き上げかよ」
不完全燃焼っぽいガイを伴ってフィーナ達の後を追い始めた。
フィーナは後ろの二人を気にしながら地面の状態に目を落としてみた。
さっき土砂降りに近い勢いで振らせた水で凍らせたはずの地面の氷はイレーネの言う通り既に溶け始めている。
(急がないと……!)
フィーナは念の為に光弾を一発右手に用意しつつ岩場に急ぐのだった。
岩場には他の馬車からも避難してきた人々が着いており、皆が大きい岩に登っていた。
しかし大岩に登るための足場になりそうな場所は一箇所しかないせいか大渋滞を起こしていた。
イレーネが再び冷気の魔法を使おうと魔法の詠唱を始めたその時
ードオオォン!ー
イレーネの背後に土煙と共にサンドワームが出現した。魔法の詠唱に入っていた彼女はその事に気付くのが一瞬遅れてしまった。
「シャアアアァァァーッ!」
サンドワームがイレーネを丸呑みにしようと頭部を彼女に近付けたその時
「イレーネさん! 危ない!」
マリーが横からイレーネに抱き着く様に彼女をサンドワームの攻撃から避けさせた。
「はあっ!」
マリーがイレーネを逃がしたその瞬間、フィーナも考えるより先に身体が動いていた。
ードジュッ!ー
女はあらかじめ用意していた光弾をサンドワームの口目掛けて放った。
ードオォン!ー
フィーナが光弾を起爆するとサンドワームの頭が大きく膨らみ爆発四散した。
頭を吹き飛ばされたサンドワームは力無く地面に崩れ落ちそのまま動かなくなった。
「イレーネさん!早く岩の上に!」
マリーは立ち上がるとイレーネを岩の上に登らせ始めた。この時にはザックとガイも到着しており女性陣が岩に登る手助けを始めていた。
「おい! あれを見ろ!」
隊商の一人が声を上げた。彼が指差した先は隊商の荷馬車が止められていた場所であり、サンドワーム達によって荷馬車が無惨にも壊されていく光景が展開されていた。
ードォン! ドォン!ー
馬車が壊されていると思ったら次は自分達が駆けてきた地面を地下から虱潰しに調べる様に、サンドワームがかなりの速さで岩場に近付いてきているのが分かった。
「おい! 早く上げてくれ!」
最後に残ったザックとガイを岩の上に引き上げる為に隊商のメンバーと盗賊の生き残り達が力を合わせてザック達に手を貸している。
イレーネは今からでも時間稼ぎになればと三度冷気魔法の詠唱を始めている。サンドワームの舌が地面から突き出てくるのを見ていたフィーナにレアが
「いい機会だから練習してみたら?」
一瞬何の事か分からなかったがすぐに例の光弾の事と理解したがフィーナは躊躇した。
人の目があるところで軽々に神力を使うのは……と、先程一回使ってしまったのはすっかり忘れている様だ。
「今なら大丈夫よ。皆、一生懸命でそこまで気が回ってないから」
レアの言う通り確かにザックやガイの救助に必死で誰もフィーナ達の事を気にしている者は居ない。
「わ、分かりました」
フィーナは光弾を生成し右手で近付いてくるサンドワームの舌の出ている地面の中……サンドワームが居るであろう予想地点に狙いを定める。そして
「はぁっ!」
ードジュッ!ー
落下速度と質量でしか運動エネルギーを稼ぐ事が出来ないフィーナは、速度を限界近くまで上げて光弾をサンドワームが居るであろう地面に向けて撃ち込んだ。
ードスッ!ー
光弾は見事地面に埋まる様に飛び込んだ。光弾が地面に埋まったのを確認すると同時にフィーナは光弾を起爆。
ードオォン!ー
僅かな地響きと爆発音が辺りに響いた。その瞬間、地面から出ていた舌が生気を失ったかの様に萎びて地面に倒れていった。
「やったか?」
レアの悪意しかないリアクションに対し、そんな彼女をフィーナの目はジト目で見ていた。その時
ードオオォン!ー
フィーナの光弾による攻撃を受けたサンドワームが地上に上がってきた。そのサンドワームは頭部……特に口の辺りを大きく損傷していたが致命傷には至っていない。
どうやらフィーナの狙いは少し外れていた様だ。しかし、舌を失ったのなら地中から一方的に襲われる心配は無くなるのだから無駄では無かったと思う事にした。また
「アブソリュートフリーズ!」
魔法の詠唱が終わったらしいイレーネが地上に半身を晒しているサンドワームに向けて冷気魔法を放った。
ービュオオォォォーッ!ー
空気が乾燥しやすい砂漠では自然の湿気による氷の生成は期待出来ないが、よく冷えた冷気はサンドワームによく効いた様だ。
「キシャアァァァ!」
サンドワームは悲鳴に似た叫びを上げ動きを止めてしまった。それを見たイレーネはすぐさまマジックミサイルを一発、動きを止めたサンドワームに撃ち込んだ。
ービシッ!ー
マジックミサイルを受けたサンドワームの身体にはヒビが入り、そのヒビは見る間に全身に広がっていった。
ーガラガラガラ!ー
ヒビの入ったサンドワームは自重も支える事が出来なくなり脆くも崩れ去ってしまい、残されたのは小さくないサンドワームだったモノの破片の山だった。




